表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十四節 ルベリオン王国の攻略

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1173/1539

掌話 燃え盛るは火神の残影 四

 



 辺りを見回す。


 広い戦場に、沢山の凡夫達。


 プレイヤーの殆どは、授業で習う程度のお試し武術を噛んでいるだけの素人。

 対するNPCは、中にはとんでもない達人級が幾らか混じっている。


 これは多分、護鈴の人を模して作られているんだろう。


 そんな中で、あの人の影を探す。



「ヨウ? また探してるの?」

「……別に」



 探してない。


 ……ただもし、あの人があの方なら……私は……。



「第二波、来ます!」



 ハルキの報告に戦場へ視線を向けると、さっきと同じ様に無数の炎が森から現れる所だった。



「……気張って行くわよ」



 4人の応じる声を背に、押し寄せる炎の波を見据えた。





 あれに突っ込んで行った連中はほんとに馬鹿よね。

 山火事にバケツで挑む様な物だわ。


 流石に2回目となると、1回目の失敗から学んで大剣士の見様見真似で協力してるけど、それにしたって付け焼き刃……ま、精々壁になると良いわ。


 ノロノロと歩み寄って来た木に近づき、尖った枝の一振りを避ける。

 練気を拳に込めて軽く薙ぐ。


 木片が飛び散る中、軽い蹴りで残りを粉砕した。


 周りではマイトとアサヒが防御主体で多数の敵を引き付け、ハルキとツムギは魔力や矢を温存する為1匹ずつ引き受けている。

 そこから離れずに雑魚を処理して行けば良い。


 鼠に蟹に木に、時折人形。


 踏み潰し、蹴り飛ばし、殴って避けて逸らして壊して——



「——ヨウ!」

「っ」

「疲れたから一旦下がろう」



 マイトの声で我に返る。


 どうやら、少し奥まで入っていたみたい。簡単に倒せるから全く気にならなかったけど、敵の密度が増している。

 魔力も、操気法や練気法が効率的とは言え、半分以下まで減っていた。



「……しょうがないわね。下がるわ」

「応! それじゃあマナポーション」



 投げ渡された小瓶を即座に呷る。ふわっと爽やかでフルーティーなりんごジュースを飲み下すと、魔力がぐぐっと回復した。

 ……これ、ちょっとラグがあるのよね。しかもポーションと違って飲まないと殆ど回復しないし。


 疎らに襲い掛かって来る雑魚を倒しながら、一番後ろの壁際まで撤退した。



「ふぅ、疲れたっ」

「流石にあんなに連続で襲い掛かられると疲れるね」

「兄妹揃って座り込んで、シャキッとしなさい! 此処だって100%安全じゃないのよ」

「まぁまぁ、ツムギも休んでおきなぁー。直ぐに取って返すから」

「そ、そう? それじゃあ」



 いつものパターンだ。


 アサヒとハルキがへたって、それをツムギが注意する。

 ただ今回はツムギも疲れてるらしい。マイトに言われて2人の横に座った。


 軟弱……いえ、それ程の数って事よね。


 敵が小さいってのも疲れる要因かしら?



「ヨウ、何時出る?」

「……」



 ざっと戦場を見渡す。


 ふと、遠い森から、ぬっと大きな影が出て来た。

 マイトもそれに気付いたみたい。



「直ぐ行く?」

「……もう少し待つ」



 大きな影はボスだろう。

 その周りには沢山の人形がいて、ゆっくりと進軍して来ている。


 ただ、雑魚の数もまだ多いし、指揮官気取ってる大剣士が出る様な事もまだ無いだろう。

 飛び込んで行った馬鹿もいるし、多分大剣士の一団に接敵するのは……3分後くらい?


 流石に軍団に接敵したら大剣士も出るだろうし、それまでに取りたい。



「2分後に走るか1分後に歩く」

「うーん……行くなら早い方が良いかな。1分後に走ろう」

「そう」



 活動再開を早める為の呼吸を整え、目を瞑っている皆の変わりに、マイトはそう答えた。

 マイトがそう言うなら、それで良いんだろう。


 そうと決まれば待つのみ。


 同じ様に呼吸を整え直し、戦場を見据える。



 敵は赤い石の巨人だ。


 ゴーレムと言う奴ね。まるで動く鎧の様にも見えるし、像みたいな大型生物の皮膚みたいにゴツゴツしている所もある。

 手や頭に胴体なんかは嫌に人工的なのに、下半身だったりが自然な岩肌をしている。


 動きは遅く、のそりのそりと戦場を進み、その周りを木の棒みたいな物で武装した人形が歩いている。


 ゴーレムが拳を振り上げた。


 多分進み過ぎた馬鹿が挑みに行ったのね。


 そうと思った次の瞬間には、ゴーレムの拳が振るわれ、数人の人影が宙で青い粒子になって弾けた。



「一撃で数人もって事は誘導されたかな? 周囲の人形が誘い込んだって所だね」

「そうね」



 そうかもしれないわね。


 あちこちで赤い粒子が立ち昇り、時折青い粒子が舞う。

 人や獣の叫びが響き、仄かに吹く風が鉄臭さを森へ押しやっている。


 生まれてこの方見た事もない、ゲームでなければ阿鼻叫喚の地獄絵図。


 一度戦場へ飛び込めば、何の躊躇いも感傷も無く敵を屠るのみ。

 だけど、ただ漫然と見下ろす戦場は、仄かな恐怖と確かな狂気を漂わせ、どこか遠い所の出来事の様な逃避的思考が鎌首をもたげる。


 ……慣れていないだけよ。怖くて動けない程私は惰弱ではないもの。

 ただ、どうしようも無く現実感が無い。


 ゲームだからと言えばそれまでだけど、殺す感触はどうしようも無くリアルで、肉が潰れ、骨が折れ、飛び散る血が温かい。

 響く悲鳴や憎しみの視線、殺意のこもった一挙手一投足全てが、この世界にリアルを感じさせ——



「——ぅ……ヨウ……ヨウ?」

「っ」

「ヨウ、準備出来てるよ」



 振り返ると、全員が武器を持って待っていた。



「……行くわよ」



 応じる声を背に、戦場へ駆け出す。





 悲鳴。怒号。咆哮。


 あちこちで獣と人が争う中、飛び散る粒子と血飛沫を掻い潜り、突き進む。


 魔力を温存しながら駆けると、まもなく巨人を囲う人形の集団と接敵した。



「ハルキ!」

「はい!」



 ハルキは練気法で杖に魔力を込め、魔法を唱えた。



「大地よ、隆起して壁となれ! ロックウォール!」



 唱えるや、巨人を囲む様に2メートルくらいの壁が現れる。

 即座に壁内へ飛び込んだ。



「風よ、見えざる壁となれ! ウィンドウォールッ!」



 唯一の出入り口を、ツムギが作った風の壁が塞ぐ。



「殲滅」

「応!」

「任せろ!」



 壁内の雑魚を他に任せて、巨人へ突貫する。


 突き出された木の棒を避け、一撃で人形の胸部を粉砕。

 振り下ろされた木の棒を避け、すれ違い様に人形を粉砕。

 横なぎに振るわれた木の棒を跳んで避け、回し蹴りで人形の頭を粉砕。


 あちこちから来る攻撃を避け、時に逸らし、邪魔な人形を破壊して——



 ——振り下ろされた拳の一撃を避けた。



 さぁ、此処からよ!


 拳に飛び乗ると、直ぐにその上を駆け、練り上げた闘気を拳に宿した。

 勢いそのまま巨人の頭部をぶん殴る。



「はぁぁッ!!」



 鈍い音が鳴り響き、巨人の頭にひび割れが走る。

 腕は装備と闘気に守られているのに、少しの痛みが走った。


 それに構わず、魔力を闘気に練り上げながら、拳を振り上げる。



「まだまだぁッ!!」



 一撃。ひびが広がる。


 二撃。亀裂が太くなる。


 三撃。石屑が舞う。



「ぅぁぁあああッッ!!」



 叫びで深層筋を使い、闘気を宿す拳を乱打する。


 より壊れやすい様狙って拳を叩き付ける事で、次々と石屑が飛び散り、ひび割れが大きく広がっていく。


 あと少し…… 最後っ!


 なけなしの闘気を込めて振るった拳が、頭部の中心を捉え——爆散。



「……ふ……はぁー……勝っ——」

「——危ない!」



 マイトの悲鳴とも聞こえる声で、反射的に頭を庇う。


 刹那、左右から凄まじい重圧が襲い掛かって来た。



「うっぐぅぅッ!!?」



 万力で挟まれる様な圧力と視界の端に映る赤色から、ゴーレムが掴んで来ているのだと分かる。


 頭は壊した筈ッ!?


 襲い来る重圧に対し、血の一滴まで絞り出すつもりで魔力を引き出す。

 それでも、無い袖は触れない。



「ヨウ! ヨウ……! チエ!!」

「くそっ! 邪魔だ!」

「ぇ、嘘……? 駄目……駄目っ!」

「チエを離せ! このっ!」



 皆の声が遠くに聞こえる。


 魔力ゲージは既にゼロ。抵抗とすら呼べないそれは直ぐに限界を迎え——



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ