掌話 ミナモに映る世界 五
途中にお昼休憩や補給を挟みつつ、あちこちの初心者向けやそれから少し上のランクの迷宮を巡り、スキルポイントとお金を貯めて行った。
どの迷宮も、町の迷宮で対処法を知っている敵ばかりだったので特に苦戦する事は無かった。
スキルポイントは身体能力強化系を取得するのに使い、レベルも20まで上がったおかげで理想以上の動きが出来る様になって来た。
そうなると更なる理想が出る訳で、凄いとは思いつつもまだまだ行けるとも思ってしまうんだけどね。
稼いだ金額は40万MC。これと、うみにぃが3時間ちょっとでさらっと稼いだらしい40万、それからデイリーボーナスとかなんかを使い、装備の更新をした。
やったのは武器の更新。
私のは、水霊銛と言う武器になった。
元の水玉と水気の指輪で強化していた槍に、水の属性石10個と水気2つ、水玉4つ、水流2つを使って更なる強化。
サモン・ブルージェムと言う魔法が使えて、何処かエレメントにも似た親指大の宝石みたいな味方を生成出来るらしい。
他にも、死に戻りしてドロップしてしまっても戻って来るアポート機能が付けられている。
なるにぃのは、瀑流銛。
属性石10に水玉1、水流4、それからうみにぃが持ってた大きな鮫の素材で強化された銛で、カスケード・ストライクと言う武技が使える。通常武技のストライクと同時に4個の水の槍が射出されるらしい。
アポートも付いてて死に戻りしても無くならない。
コレで攻撃力はうみにぃに近づいたから、後は防具を揃えるだけ。
今日中に稼げると良いんだけど……。
◇
水中系の場所は人が少ないらしい。
と言うのも、冠成人は昔から泳ぎこそ義務教育だから出来るけど、素潜り漁が出来るの少数。
装備は無いし、何より積極的に攻撃してくる生物が沢山いる事で、既に何百人単位で死者が出ているんだとか。
地上と水中と言う動きやすさの違いもあるんだろうけど、地上の敵が弱い所は既に取り合いになっているのに対して、水中は敬遠されているから敵の数が多い。
自然と1人が受け持つ負荷が多くなり、対処し切れなくなって更に敬遠されると言う悪循環に陥っている様だ。
「だから殆ど人がいない訳ね」
浮遊島にある海の海岸を見ると、砂浜や岩場にこそ幾らかプレイヤーと思わしき人達が見えるが、海側には殆ど全く人がいない。
「それじゃあ予定通り」
「おう、行ってらっしゃい」
「うみにぃ、気を付けてね?」
「そっちこそ、油断しない様にな」
そんな会話を交わし、うみにぃと分かれた。
効率的にお金を稼ぐ為、装備の整ったらうみにぃは1人で海で狩り。私達は近場の迷宮を周る。
同じパーティーだとクエストもクリアされるらしいので、これが最善策だ。
さっさと海に入って行ったうみにぃを見送り、早速岩場の方へ向かう。
ここにあるのは初心者向けから少し上の迷宮、適正レベル毎に分けると、下から3番目のランクの迷宮だ。
うみにぃが言うに、ポーションに合わせて初級、下級、中級と呼ぶのが良いだろうとか。
「……ここら辺……の筈なんだけど……」
「人は全然いないなぁ」
メモと辺りを見回してみるが、それっぽい物は見えない。
海側はより上位のエリアだから出てくる魔物も少し強めで、その上海だからか人影は極端に少ない。
初級や下級の迷宮はその直ぐ近くで準備したりしてる人達がいたから分かりやすかったけど、ここにはそれが無いから、何処にあるのかわからない。
「うーむ……祠っぽいのもないなぁ」
「……うーん」
大きな岩や小さな岩で視界が悪く、水溜りや滑る岩のせいで足場も悪い。
時折ひょこっと襲い掛かって来る蟹や鳥を倒して探すも、見当たらない。
「むぅ……」
「ふーむ……こう言う時はー……」
言うや、なるにぃは大きな岩に登ったり、大きめな水溜りに顔を突っ込んだりとあちこち探し始めた。
隠されてるなんて事……いや、ゲームならあり得るか……。
私も隠せそうな所を探し、岬の様になっている所の大岩に登ってみる。
「うーん……」
海が良く見えるけど、特に何もない。いや、遠くに島が幾つか見える。
振り返って岩場を見下ろすも、特に人工物は見えない。
また海を見て、波に打たれて削れた尖った岩場を見下ろし——
「——ぁ」
「ミナモッ!?」
滑った。
珍しい。なるにぃが叫ぶなんて。
そんな現実逃避している自分がいる中、必死に頭を庇う。
「う、ぐッ!? ぅぁ……ッぐ!」
滑り落ち、転がり落ち、岩に何度か叩きつけられ、尖った岩に何度か衝突した末、海に落ちた。
またやっちゃったよ……コレでうみにぃに怪我させたばっかりなのに。
水中で姿勢を整え、視界の端の体力ゲージが3割程度減ってるのを見てから、水上に顔を出す。
「み、ミナモー? 大丈夫かー!?」
「大丈夫ー!」
岩を隔てた遠くから聞こえるなるにぃの声に返事する。
死ぬかとも思ったけど、レベルが上がった恩恵だろう。結構痛いだけで済んだ。
そう思った直後、足に衝撃が来た。
「大丈夫じゃなーい!!」
「うぉぉい!? 今行く!!」
敵だ!
慌てて水中に潜って、ギョッとした。
足にウツボが噛み付いている。
「ぶくぶく! 《アポート!》」
手放してどっかに飛んでいった銛を呼び出し、攻撃する。
「ぶくぶくぶく! 《ストライク!》」
銛が光り、狙い通りウツボの頭に突き刺さる。
ウツボは暫くビクビクと体を揺らし、動かなくなった。
遅れてザボンッと音が響き、なるにぃが泳いで来る。
なるにぃは銛に刺さったウツボを見ると、親指を立ててニカッと笑った。
水上に出る。
「ぷはっ……ミナモ、良くやったなぁ」
「……また落ちちゃったし」
「気ぃにすんなって。誰でも失敗する事はあるさー」
「今月に入って2回目……」
「たまたま巡り合わせが悪かったんだろ。ミナモがそんな失敗ばっかりする訳無いんだから」
「うぅ……」
自分自身が不甲斐ないよ。
「それより、お手柄だぞーミナモ」
「ぅん?」
なるにぃが指差す方を見ると、そこには……大きな岩の壁や棘に隠れて、朽ちた祭壇と薄暗い洞穴があった。
「見た感じ、干潮時且つ最初から波打ち際に沿って来ないと行けない所だったみたいだねぇ」
「複雑」
色んな意味で複雑。
取り敢えず泳いで上陸し、仕方ないので濡れたまま迷宮へ突入した。
◇
中級からなのか、はたまた海沿いだからなのか、そこに出て来る魔物は様相が大きく異なっていた。
エレメントや蟹は見覚えがあるが、浅い水辺を渡る場所には、魚は勿論の事貝やタコ、果ては海藻等の複数種の魔物が待ち受けていた。それが幾つもあるのだから大変だ。
地図スキルを取得しておいて良かった。かなり複雑だから無かったら何時間も掛かってたかもしれない……。
敵は残念ながら倒すとドロップ品になって体積がぐんと減ってしまう為、うみにぃから預かっていたマジックバックは半分も埋まらなかった。
魚は切り身になるしタコは足3本くらいしか貰えないし、昆布は伸びる癖して貰えるのはその十分の一。とても悲しい……。
武器を更新したおかげで苦戦する事は無かったが、広さと多様性のせいで多少時間が掛かった。
だが、時間が掛かっただけで、最深部までは特に問題なく辿り着いた。
精緻な細工の施された門に属性石をはめると、門は一人でに動き出し——




