掌話 ミナモに映る世界 三
「はッ!」
「らッ!」
飛来する水玉に構わず突撃を仕掛け、殴り飛ばす様に槍を振るう。
パキッと音を立てて核が割れ、水が弾ける。
なるにぃの方も1体仕留めた様だ。
直ぐ様槍を構え、次の標的に打ち込む。
2体仕留めた所で、最後の1体が私へ水玉を放った。
腕を交錯してそれを受け……ようとしたところで、なるにぃが飛び込んだ。
「ぅらッ!」
水玉がかかるのも構わず槍を振るい、最後の1体を始末する。
水が弾け飛び、エレメントが沈黙した。
《《【迷宮クエスト】【教会クエスト】『青の祠に挑む者』を『匿名』のパーティーがクリアしました》》
「おお、お疲れー。びっしょびしょだなぁ」
「お疲れ……ありがと」
「んんー? 何のことやら」
……まぁ、大した事じゃないけどね。
取り敢えず、落ちて来たポーションと指輪を拾う。
アイテム名は、水玉の指輪。小さな青い石が埋め込まれたシルバーリングだ。
「お疲れ様」
「おう、カイも見守りお疲れー」
「うん、お疲れ様」
「指輪は……ミナモが持ってれば?」
「……嫌だよ、手元狂うし」
……ネックレスと腕輪あるし。
「じゃあ、アニキ?」
「OK、貰っとくわ」
なるにぃに指輪を渡した。
「……これ、どうするんかな」
「どうだろ……名前的にウォーターボールとかかね? 武具屋で鑑定して貰えるから後で行こう」
私も後でやって貰お。
「さて……それじゃあ次、行くか」
開かれたその先の扉と、見覚えのある祠。
帰り方も同じって事だよね。
◇
その後、初心者向けとして情報開示されていた7つの迷宮とそれより少し上とされていた4つの迷宮をクリアした。
レベルは10まで上がり、新しく回復魔法と槍術の武技を取得。
それに加えて、水玉の指輪を合計で7つ。水気の指輪を4つ手に入れた。
うみにぃのポーションのおかげで休まず進む事が出来たし、地図スキルのおかげで迷わず進む事が出来た。
うみにぃ的には今日つまんなかったかもしれないけど、その分を返せる様に頑張ろうと思う。
幸い、お祭りが終わって今は休養期間中だし、時間はまだまだあるからね。
色々と済ませた所で、街中にあった適当な休憩場所に入る。
椅子が6個あって大きな丸机があって、柱と屋根もあって水飲み場みたいなのもある、やたらと高そうな休憩場所だ。
「今までで稼いだ合計金額は、22万弱になった。これは序盤にしては結構良い稼ぎだ」
「使い道に関してはカイに任せるよ」
「うみにぃが差配するのが妥当だし」
戦いは兎も角それ以外は何すれば良いのかよく分かってないからね。
「任せろ。先ずは、5000MCくらいで空腹ゲージを回復させるだろ。そんで次に、2人のMC貯めておけるアイテムを買う。取り敢えず100万MC貯められる奴で良い。2人分で6万MCだな。そんで、今日の宿を取っといた方が良いから……」
カプセルホテルみたいな狭い所で素泊まりだと、一部屋一日1000MC。
ちゃんとした部屋付きだと、素泊まりで3000MC。食事付きだと4000MC。
豪華な宿だと、部屋が広くて何か色々付いてて、3食分と1日だけの中級ポーションも付いて1万MC。
何処が良いかと言うと、高い方が良いらしい。
何でも、効果時間が1日だけとは言え、中級ポーションは最低でも1000。苦くない奴は3000はするし、効能が強い奴は5000にもなる様で、当の中級ポーションは3000MC相当。
食費が3食分で3000を越えるくらいだから、実質3000少々の部屋代で良い宿に泊まれると言う事らしい。
結構交渉とかも受け付けてるらしくって、上手く行けば2万以内で3人分の宿が取れるかもしれないんだとか。
……うみにぃもなるにぃも割とコミュ強なんだよね。
「差し当たり最悪3万としておいて、大体残り12万。ここから更に、装備の鑑定費用が幾らか……まぁ、序盤の装備だし、4種で2万って所だろうな。掛かっても5万以内だろう。残りで装備の修繕と強化をする」
「修繕かぁ……確かに、もう既に少し歪んでるし、切れ味落ちてるし、先端もちょっと潰れてるな」
「ふーん」
通りで……何時間も探索してたから疲れてるのかと思ったら、武器自体も悪くなってたんだ……。
「そうと決まればさっさと行こうか」
そろそろ夕御飯の準備しないといけないしね。
◇
教会加入で貰った装備アイテム、生命の雫は、一度発動すると十分程度の自動治癒に加え、凡ゆる行動に水属性が追加されるらしい。
後半に関してはよく分からなかったが、何か副次的に水中での動きが良くなるんだとか。
ギルド加入で貰った守りの腕輪は、発動すると薄い魔力の壁が前方に出て来るらしい。
これはあまり硬くないとかで、精々薄いベニヤ板程度の障害物としてつか使えないんだとか。
水玉の指輪はウォーターボールの魔法が使える魔法の指輪。水気の指輪は10分程度武器に水属性を付与できる魔法の指輪らしい。
このどれもが、特殊な強化をしない限りはお店での魔力チャージが必要なアイテムで、連続使用は出来ない。
黒霧さんと言う方の勧めで、水玉の指輪と水気の指輪を槍の強化素材に使い、残りは全部私が預かる事になった。
残りのお金でチェーンを買って、全ての指輪を腰に付ける。指に付けなくても効果は発動出来るらしい。
夕御飯を食べて直ぐ寝れる様に色々済ませ、早速にぃ達とログインする。
目標は、更に少しランクが上の迷宮のクリア。
と言う訳で、資料室から得られた位置情報通りに町を移動すると……そこには社があった。
「……これを開けるのは流石の俺も躊躇われるなぁ」
「ミナモはコレ系の仕事やってなかったか?」
「まぁ、定期的に回って掃除したりするけど……」
でもコレは宗派どころかそもそも異教で、一応信徒と言う事になってはいるけど巫女では無いし……。
「……でもそう言う事気にしないらしいから……良いんじゃない……?」
「まぁ……ギルドの資料室に迷宮として表記されてんなら良いよなぁ?」
「……それに気にすんのって関係者とか縁が深い人ばっかで、都会じゃ気にしない連中のが多いって聞くしな。良いか」
扉を押し開くと、有ったのは楕円形の祭壇と幾らかの装飾に、女神と思わしき小さな像。
普通ならここには鈴があるんだけど……一応女神像には触れない方が良いだろう。
うみにぃは軽く礼をした後、祭壇に触れる。
「さて……ん?」
「……飛ばされないね」
「……?」
「……あぁ、成る程」
うみにぃはこくこくと頷くと、ポーチから青い石を出した。
「5個くらいで足り——たな」
石を3個程置いた所で、何処かに飛ばされた。
……ランクが上がると捧げ物が必要になるんだ。
辺りを見回すと、初心者向け迷宮では胎内くぐりみたいな岩壁だったのが、ここは整えられ柱や装飾が見られる。
噴水の様な物もあって……水の神殿みたいな感じだ。
「下位とは訳が違うって感じだな」
「気張って行こうなぁ」
「うん、行こ」
なるにぃを先頭に、薄明るい迷宮の奥へと足を踏み入れる。
急にガクンと難易度が上がる訳じゃないだろうし、大丈夫でしょ……多分。




