掌話 ミナモに映る世界 二
にぃ達と合流しパーティーを組んだ後、一度教会に行ってうみにぃのお金でお布施して、バッジを貰った。
エイシャさんはいなかったけど、何とか祭司の人からバッジを貰う事が出来た。
その後、私達は一番近い初心者向けの迷宮に向かった。
◇
「……此処が初心者向けの迷宮……?」
「ミナモ場所間違えたかぁー?」
「いや此処だよ。資料見ながらメモしたもん」
此処で間違いない筈。
そんな事を思いながら、目の前の祠を見る。
小さな扉が付いた小さな祠だ。
「……失礼しますよって」
「え゛?」
「お?」
どうした物かと悩んでいると、唐突になるにぃが祠の扉に手を掛けた。
なんて暴挙をっ!?
そんな事を思いつつも、好奇心には負けて中を覗き込む。
そこに有ったのは、例の女神像とお供え物を置くらしき金属のプレート。
「あれぇ、何かあると思ったんだけどな……」
「もう……なるにぃ、罰当たり!」
「……仕方ない。アニキが見なかったら俺も調べてたさ」
それにしたって祠は神様がお休みなされる所なんだから、みだりに覗いたら行けないんだからね!
……まぁ、にぃ達も知ってるだろうしゲームだけどさ……。
「まぁ、隠しパラメーターでカルマ値とかあるかもしれないし、デバフとかに備えてお供えだけでもしとこうか」
「した方が良い」
ゲームとは言えモラルは必要だよ。
うみにぃがポーチから青い石を取り出し、プレートに置いた。
次の瞬間、気付いたら知らない場所だった。
「……え?」
「……は?」
「……ああ、プレートに触れると入れる仕様だったか」
「ええ……」
「なぁるほどなぁ〜」
うーん……まぁ、そう言う事なら……。
◇
後ろには同じ様な祠があり、引き返す事は出来たみたいだけど、元から迷宮に入って見るつもりだったからそのまま進んだ。
人工的に整えられ、装飾は無い岩の道を通っていると、胎内くぐりをしている様な不思議な気分になる。
一点気になるのは……灯りも無いのにやけに明るい所。どう見ても岩肌なのに細部まで見通せるのが、えも言われぬ不可思議で何処か神聖な雰囲気を醸し出している。
何というか……気持ちがすっと軽くなる様な……これはお清めの泉に入った時に近いかな? 魂が洗われる様な感覚だ。
敵が出るかもしれないと言うのに、暫くその雰囲気を堪能、もとい呑まれていると、唐突にうみにぃの嫌そうな声が聞こえた。
「げっ、まじか……」
その視線の先、洞窟の奥を見ると、そこには十字路がある。
分かれ道か……分かれるのかな。
「んんー? 何か……いるね」
なるにぃの言葉に目を凝らして見ると、十字路の真ん中の空中に、水の玉が浮いてるのが見えた。
なにあれ……無重力?
「……エレメント系だ。どっかに小豆みたいな核があって、それを壊すか魔法で攻撃しないと倒せない。まぁ、川で魚突くくらいの気持ちで行けるんだが……」
「問題はその魚が攻撃してくる事、か」
「そゆこと」
ふーん……アレが生き物なんだ……確かに、よく見ると青い小さな石が真ん中らへんで動いてる。
「因みに攻撃は水を飛ばして来るのと、隙あらば水の玉で頭を包んで来る」
「どうって事無いなぁ……よし、ここはミナモ、行ってきなー」
「……もう。分かった」
初戦闘で一対一だからって、別に譲らなくても良いのに……。
そう思いはするが、やっぱり初戦闘だし、心配な事があるのも事実なので、ありがたく挑ませて貰う。
背負っていた槍を持ち、エレメントとやらに近づく。
少し進むと、エレメントの球体が崩れ、此方へふわふわと寄って来た。
いつでも避けられる様警戒しながら歩み、ふと球体の中で何かが動いたと思った時には、水が飛んで来ていた。
「っ! ……」
分かった様な気がしても避け切れず、肩にびしゃりと水がかかる。
視界の上の方にある緑のゲージがほんの僅かに減る。
水がやけに冷たい。
「水のエレメントの攻撃を受け過ぎると、凍えって言う状態異常になる。単にやたらと寒いだけだからどうってこたぁないがな」
「オーケー」
確かに、この程度の冷たさならどうと言う事でも無い。
ただ、この服着心地悪いし動きにくいし、濡れて不快感が倍。それに……可愛くないし。
取り敢えず走り、槍を横凪に振るった。
それとほぼ同時に飛び出た水の玉は、腕や足を濡らして体温を奪う。
構わず2度目の槍を振るい、小さな青い石を弾いた。
次の瞬間、浮いていた水が全てばしゃりと地面に落ちる。
……これで倒したって事?
「来るぞー」
「っ」
うみにぃの言葉で後ろに跳ぶと、それと同時に地面に散らばっていた水から小さな玉が複数浮かび、雨の様に飛んで来た。
「一撃でやれないんかなぁ?」
「いや、端に当たったな。勢いも足りなかった。大体核に当てられれば一撃だから、あと少しでもダメージ与えたら倒せる筈だ」
後ろで言ってる事を聞きつつ、雨を受け続ける。
ほんの少しずつ、じわりじわりと緑のゲージが減って行く。
核はどこ? ちょっと寒くなって来たんだけど……!
保護色になっている地面を見回していると、地面より少し上で、水が集まり始めたのに気付いた。
「そこッ!」
今度は叩き付ける様に槍を振る。
パキッと小さな音が鳴った。
「……」
警戒しながらそこを見下ろしていると、じわりと青い粒子が溶け消え、残った真っ二つの青い石を拾う。
今度こそちゃんと勝ち、かな?
「初勝利おめでとう」
「ナイスファイトー。良い戦いだったゼ!」
「……次なるにぃだからね」
「うっす。任せなぁ」
取り敢えず、初戦闘だったけど……いつも通りやってればまぁまぁ行けそう、かな?
◇
うみにぃの地図スキルのおかげで、枝分かれする迷宮を迷う事なく進めた。
敵は水のエレメントだけで、曲がり角には必ず1体。後は1体で通路を徘徊しているくらいで、一度の戦闘で2体に遭遇する事は無かった。
特に苦戦する様な事もなく、なるにぃと交互にエレメントを倒して進み、十数分程度経った頃、水流を模したと思われる装飾がされた扉の前に着いた。
「ボスだな。一応回復しておこう」
「例のくそ不味いって奴な」
「覚悟しとくよ」
革の鞄から取り出した、緑の液体が入った小瓶を見下ろす。
蓋を開けるや、直ぐにそれを傾けた。
「ごくっ」
「……ごくっ」
……。
「……吐きそう」
「……まずっ!?」
「高い薬は普通にジュースみたいだぞ」
高い薬買える様に頑張ろう。そう決めた。
視界の上では緑のゲージが急速に回復し、半分程度だったそれは満タンになった。
視界の端にあるパーティーメンバーの所も、なるにぃの緑ゲージが回復したのが見える。
「よし、それじゃあ行くか」
うみにぃが扉に触れると、それは自動的に開き始め——




