第39話 学園に潜入
第八位階下位
るんたったと警備をすり抜け正門を越え、お揃いのマントを纏う生徒達が下校したり研究活動や自主訓練する声の横を通り、本校舎に入った。
この学園は、冒険者ギルドや公爵家と提携しており、卒業後は冒険者になるのであればE級から、その後実力十分であると認められれば直ぐD級に上がれる。兵士や騎士を志すのであれば、直ぐに一兵士として認められ、先ずは迷宮討伐軍に配属。付近の小型迷宮や都市の迷宮浅層での魔物駆除等を主に任される。
学科は一般向けの戦士科、学費が高くまた才能と言う面でも人を選ぶ魔法科、南部貴族向けの学費と施設がイコールな騎士科。
その3つを基本としつつ、冒険者志望向けの各依頼や迷宮探索のイロハを教える講義。兵士及び騎士志望向けの礼儀作法や家紋等を学べる講義。薬草や毒草の見分け方、使い方。獣を捕らえる罠の作り方等を学ぶ事が出来る。
取り分け魔術分野は種類が多く、様々な細分類された魔術を学ぶ事が出来る様だ。
そんな学園の綺麗に掃除された廊下を進み、適当な職員に声を掛けた。
事務担当と思わしき女性だ。
「こんにちは」
「こんにちは、どうかしたの?」
学園生と思ってか親しげに話す彼女に、微笑みながら問う。
「学園長に会いたいんだけど」
別に直ぐ、秘密裏に向かっても良いが、今日はもう特にツキを動かす予定は無い為、のんびり行く。
果たして、女性は困った様に微笑んだ。
「うーん、学園長は多忙でいらっしゃるから……どう言った御用なのかな?」
「迷宮に関して色々」
「あー、成る程……一応ジョディさんにお伺いしましょうか。応接室に案内するね」
そんなこんなで花瓶の飾られた応接室へ案内され、暫く後、会うけど暫く待つ様にとの事で、更に暫し待つ事となった。
この間に南部の支配を推し進める。
◇◆◇
地下室で作業していると、ジョディがやって来た。
なんかまた貴族のガキが迷宮に入りたいとか言ってるらしい。
「はぁー!? ジョディ〜そんなのほっといてこっち進めないとだよ〜!!」
「ルシア、落ち着いてください。相手は貴族の令嬢ですよ? 無下に扱えばより面倒でしょう」
そぉんな事言っちゃってっ、さっきはジョディも慌ててたじゃんよー!
「思い返してみれば、仮称天使が2体に増えた所で大した差はありません。警戒対象は増えますが、今の所浅い層を彷徨いているのみ。地上でも怪しい動きは無いと報告が上がっています」
「そりゃそうだけどさぁ……ゴーレムぶっ壊されたし……」
「それは諦めて補充しましょう。幸いゴーレムコアはドロップしていないのですから、魔眼核の補充と生成費用だけですよ」
「そうだけどさぁ……」
ゴーレムは作るのは費用が掛かって大変なんだぞ!
「虫も突然行方不明になったし……」
「対策として魔物の警戒網を広げていますし、万が一となったら貯蓄を解放すれば何とかなるでしょう」
「うぅ……ジョディ、万が一の時は一緒に逃げようね」
「死ぬ時は一緒ですよ、ルシア」
急に居なくなるとか、生きた心地がしないんだよ。
ジョディが淹れてくれた紅茶を飲み、一息付く。
「はぁ……拡張しないと」
「生徒が待っていますよ」
「良いんだよ待たせておけば。大体何処の子な訳?」
「鈴の様な家紋との事でしたが、高位や中位、またはそれらの派閥に入っている者であれば分かる筈なので、低位の貴族でしょう。髪は青く瞳は白味がかっている少女だそうです」
「はぁーん……?」
……そんな目立つ子いたっけ? 学園の事任せっきりだから私には分かんないな。
「まぁどのみち、最低限警戒の指示を出さないといけないし、暫く待って貰おう」
「ではその様に伝えます」
中の警戒網も大事だけど、外に出た可能性がある虫を探さないと。
アレに敵対の兆候は無いけど、万が一と言う事がある。
白の災厄以来急にいなくなった鼠共もまた寄ってきてるかもしれないし、あちこちに目を配置しないと!
◇◆◇
各地の迷宮孔から迷宮主の配下である小型生物が現れ、四方八方に散らばっているらしい。
物理的に見張るのは結構だが……やっぱり単体を特化させた方が良いんじゃないかなと思ってしまう。
少なくともレベル300前後までは確実に成長するので、そこまで上げておいた方が各方面での利便性は高い。
まぁ、それをしない理由も何となく想像は付く。
万が一それが失われた際のリスクやコストが尋常ではないからだろう。
だから無くなっても良い様に広く浅く利用している。
ルーシェレア・キルシアは、いっそ臆病なまでに慎重、もしくは臆病なのだ。
差し当たりそれら小型生物に何かアクションを起こす必要はない。
フブキとフユキにはいつも通り、迷宮を誤魔化す様に認識阻害を掛けて活動して貰っている。
成果は上々で、この1時間の内に南部の完全な解放と土地の支配、フィールド制限の再設置等が終わった。
南部で現状判明している問題は……吸血鬼が多数潜んでいる事。
一つの町に一人は配置されており、多い場所だと数十人が潜んでいる。
問題が起きていないのは、偏に陽光耐性のある装備が少ないからと見て間違いない。
潜んでいる連中も大半が地下におり、日中活動しているのはごく僅かだ。
もし十分な量の陽光耐性があったら、今頃ルベリオン王国南部は吸血鬼の国になっていた事だろう。
幸い日没までまだ時間があるので、丁寧に捕獲して回らせよう。
確保した吸血鬼達はセバスチャンに預ければ間違いないだろうが……いや、やがてはサンディアが筆頭として吸血鬼達を従える事になるだろうし、セバスチャンに教育させるに留めよう。
後は、南部の西側におそらくザイエが暮らしている山と思わしき切り立った山脈があるのと、獣人との友好の証として用意された獣人が治める領がある事か。
前者に関しては、ザイエの土地は僕の土地と言う事でやがて支配する。
問題の後者は……成り立ちや獣人の国との関係もあるが要は属国の様な物で、獣人の国とは切っても切れないが一つの国として統治されている。
まぁ属国とも言ったが、実際の所は辺境伯領の形に近い。
つまり支配しても良い。そして僕は最初から侵略者なので悩む必要は最初から無い。
よって獣人の国もやがて支配する。
差し当たりそこも、解放、支配、管理の三連コンボを入れる準備を進めておく。
これで、南部の支配準備は大雑把にだが整った。
後は公都の迷宮の支配を残すのみ。それが終われば、世界は半刻もしない内に、その姿をガラリと変えるだろう。
僕は椅子に腰掛け微笑みながら、その時を待った。




