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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十四節 ルベリオン王国の攻略

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第37話 遺伝的特徴

第八位階下位

 



 メンテナンスから帰還した皆を宿へ迎えに行き、ついでに宿を引き払った。


 その後、焼き鳥でエネルギーを十分に補給した僕等は迷宮へとって返す。

 浅層だと冒険者が頻繁に彷徨いている為、力を確かめるには不向きと言う事で、大事をとって中層だ。


 まぁ、浅層だの中層だの言っているが、その実それらは1層と2層の事で、この迷宮は規模ばっかり大きいので実は10層まである。

 1層だけで十分中規模迷宮程であり、その広さが3層続けば大規模迷宮レベル。


 一般的にはその様に認識されており、そしてこの迷宮の踏破記録は3層まで。

 3層が最深部であると誤解するのも仕方ないのだろう。


 長い歴史の中で誰も3層より下に辿り着いた者がいないとは思わないが、一般の認識として3層までしかないと思わせる事が出来る物が3層及び4層にはある。


 今、それは目前にいた。



「出たわね徘徊する巨人リビング・ジャイアント……!」



 推定レベル50少々。


 事前の調査で判明している最深部のボスの取り巻きと同じゴーレムだ。



「ブラン、こいつを倒して見せて! 危なくなったら助けるから、貴女の本気を見せて欲しいの!」

「分かった」

「……言っておくけどアレは結構強いのよ? 気を付けてね?」

「任せろ」



 心配性だな。掴みは上々と言った所か。


 背負っていた弓を構え、その間に狙いを決める。


 コアを貫けば一撃だが、それじゃあ最大の効果を得られない。

 少し苦戦するくらいが丁度良いだろう。



「火と風を」



 ちょぼっとだけね。


 そんな指示を出すと、狐君と兎君が魔法を放つ。

 風で程よく増幅された炎は、着弾後弾ける様に広がり、ゴーレムの魔力感知を妨げる。


 どうやらこのゴーレム、視覚機能を持つ魔力結晶も搭載されている様なので、先ずはそこに一撃。



「光を」



 明るめに。


 そう念話すると、犬君が閃光弾よろしく光を爆発させた。

 それとほぼ同時に放たれた氷宿す矢が、ゴーレムの視覚機能がある胸部に着弾した。


 破裂する様に氷が生え、その視界を塞ぐ。



「気を乱して」



 軽めにね。


 するとそよ風程度の風が吹き荒び、3体の狐火が自由自在に動き回り、5つの光の球がぐるぐると回り始めた。

 これでゴーレムの魔力感知を大きく乱す事が出来る。


 全ての視界を塞がれたゴーレムは、ばたばたと暴れ回ってはその大きな手を振るい、地面や壁を打ち付けては隙を晒している。


 差し当たり足へ矢を放ち、氷漬けにして動きを止める。

 1発や2発では止まらないので、立て続けに数本ずつ放ち、確実に足止めした。


 しかし敵はゴーレム。動かぬ足を捨てて攻撃を再開した。


 狐火が火を吹いてゴーレムを撹乱する中、僕は移動しながらその足を射抜き、少しずつ体を削って行く。

 設定に似合わぬ猛攻だが、矢が特別性なのだと言い訳出来るので問題はない。


 ゴーレムは順当に足を失い、どうやら機動力を取った様で腕や胴体の土を足に回す。

 攻撃を続けて行く内に僕も矢が尽きたが、魔力の矢でそれを補い攻撃を続けた。


 そうして土の巨人は人になり、小人になり——



「これで終わり」



 その宣言と共に天使の翼と光輪を出して全力のふりをして、氷弩の一矢を放った。


 矢は狙い違わずゴーレムの中心を捉え、今までの10倍はある氷がゴーレムを包む。

 攻勢意思を宿す氷属性はゴーレムの体を蝕み、その機能を完全に停止させた。


 クルーエルに視線を向けると、彼女は目元を擦っていた。



「終わったけど?」

「……うーん……いや、私が守れば良いのねっ、合格だわ!」



 そりゃどうも、近接も出来るけどね。


 ドロップ品である視覚機能付きの魔力結晶と矢を回収し、取り敢えずその場を離れる事とした。





 地上へ戻る道中、クルーエルは黙り込み、色々と整理している様子だった。


 適当に雑魚を撃ち減らしながら進んでいると、少ししてクルーエルは口を開く。



「……天界は毎年どれ程の死者を出していると思う?」

「……さぁ」



 分母が分からないと何とも言えないね。



「公表はされてないけど、数人や数十人じゃ無いわ」



 年3桁程度の死者か……病死や事故死は無いとして、天界の総人口は……ざっと100万から200万と言った所かな?

 一見して死者数は少ないが、そもそも死から遠い精霊の近似種である天使が死ぬ事自体稀な筈。


 寿命や出生率が分からないから何とも言えないが……気にする程の数なのだろう。



「死者の大半は下級天使や天使で、皆天使総軍に配属されて直ぐに魔界へ送られているの。悪魔ですらない魔界の獣と戦わされて……それに何の意味があるって言うのよ……!! ……ほんと……馬鹿らしいわよね」



 拳は強く握られ、クルーエルは迷宮の天井を仰ぎ見た。

 その瞳は、石塊の壁を超え、更に高い天を見上げている。


 迸る怒りは義憤だろう。だが漏れ出る感情に混じるのは……寂寥と恨み。


 クルーエルは吐き捨てる様に呟いた。



「……ほんと、馬鹿よ……死ぬと分かってて送り出す奴も……死ぬと分かっててっ……——」



 その先の言葉は、消え入る様だった。



「——……絶対に帰ってくるなんて、約束する奴等も……」



 天を睨め上げる瞳は潤み、しかし雫は溢れない。


 もう、彼女は十分泣いたのだろう。


 悲しみは枯れず、それでも立ち上がる覚悟を決めたのだろう。



 きっとクルーエルは、天使ならばこうあるべきと言う強い理想像がある。

 だから天使を信じるし、天使を冒涜出来る。


 彼女は大半の天使は正しく、ほんの一部が間違っているのだと信じている。


 それを正す為に、高みへ昇ろうとしている。



 キッと見下ろしたその瞳が僕を捉えた。


 その鋭い視線は、僕の覚悟を問うている。



「……ブラン、お願い……貴女の力を私に貸して……! 私は必ずドミニオンになる。必ず貴女を幸せにするわ!!」



 クルーエルは僕へ手を伸ばした。


 自信のある顔だ。きっと僕がその手を取るだろうと。


 覚悟のある顔だ。例え取らなくとも、自力でドミニオンへ至ってやると言う。



 僕は微笑み、その手を払った(・・・)



「っ」



 悲哀に歪む顔と潤む瞳に、ゾクゾクと背筋を何かが駆け抜けた。


 クルーエルが言葉を紡ぐ前に、僕は両手を広げる。



「……力は貸し借りする物じゃなくて合わせる物。幸せは誰かに与えられる物じゃなくて掴み取る物だ」

「っ……」



 上げたり落としたりされたせいか、臆病になって動かない彼女に歩み寄り、抱き締める。


 さぁ、甘い言葉を囁こう。


 蕩ける様に甘く、逃げ出せない程に強く絡み付く、祝福(のろい)の言葉を。



「僕と、家族になろう」

「ッッ!!?」



 驚愕に見開かれた瞳、震える体、高鳴る魂の鼓動。


 欲しかったんでしょう? あげる。



「一緒に強くなろう? 一緒に幸せになろう? これからはずっと、一緒だよ」



 愛が欲しかったんでしょう? あげる。


 温もりが欲しかったんでしょう? あげる。


 力も、知恵も、勇気さえも、君の欲しい物は全部あげる。



 だからクルーエル。君の全て(・・)を、僕に頂戴?



 そっと背中にまわされた腕。小さな胸元に沈む顔。


 愛と言う名の首輪を嵌めて、絆と言う名のリードを手繰る。



 堰き止められたダムが決壊し、胸元は静かに湿って行った。



 周辺の魔物共には、暫く空気を読んで貰った。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
― 新着の感想 ―
[良い点] ブランって誰だっけー…?って思いながら読んでましたが、もしかして吹雪?(簡易配下録見て) 吹雪ってこんなキャラでしたっけ?何話辺りで出てきたっけ… ア,アァ…記憶力が足りないっっ [気に…
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