第33話 南へ行こう
第八位階下位
モルドの配下の調整を行い、イベント会場で経験を積ませ、北方支配に関する諸々の整理を終えた。
北方であった大きな問題と言えば、幾つかの村が完全に帝国軍に乗っ取られていた事。
そもそも、北方の王国民は優先的に国外避難が行われており、生きている村の数が少なかった。
そんな中で、ある村は替えの効かない子供と顔役だけを残して後は座敷牢に監禁。またある村は似た様な形だが住民は監禁ではなく拉致、おそらく奴隷として使い潰されている。
王国は長きに渡って不可侵であった為か、その領土の分配は開拓による物が殆どで、王都から遠い国境沿い等はより低位の貴族や代官が治めている。
国外に通じる主要な街道こそより高位の貴族が治めており防衛力も高いが、その他の場所は悲惨だ。
実の所、王国民が誘拐されようが殺されようが慰み物にされようが、それは僕の知った事ではない。
だが、帝国は僕に歯向かった敵であり、その道の途中で泣く子供の涙を拭うくらいの事はしても良いだろう。
まぁ、先ずは王国支配を進めなければならないので、一両日中に何かをする訳では無いがね。
差し当たりザルな国境には御旗を立てた竜装兵を配置。冒険者として各地にヴァルハラメンバーを送ってあれこれ処理をさせつつ、ギルド自体も抜本的な改革を推し進めて活性化を計る。
各地の領主代官は政に関わる為優先的に教育及び補助を行い、騎士や兵士の再教育やその他区画整理に街道整備に教育にと多岐に渡って整理して行く。
帝国兵は、その性格を重視した厳正な分類を行い教育の段階を管理、何名かには行いの責任を取らせ、被害者の前で激しい拷問の末何度か処刑。
死骸は晒し物とし、魂の方は再教育した上で別の器を用意、文字通り生まれ変わらせた。
全ての支配が終わった暁には、元帝国兵は旧時代の元帝国兵同様に黒鎧騎兵団として使う予定だ。
迷宮の方は一気に侵食せずにヴァルハラメンバー等に狩らせて経験を積ませる予定。生産核は黒霧による土地の支配が終わった段階で僕の支配下に下る為、取り敢えず現状の生産スピードを維持、パーティーで減少した原生生物の補充を行う。
これにて北方でのお仕事は無事完了。
次は南方だ。
◇
ルステリア公爵領を抜けた更に南の地。
此方は、インヴェルノこと冬鬼と犬と兎とその他のチームで侵略を進めていた。
黒霧がサーチしたボスっぽいのをすぱーんと仕留め、黒霧が支配をゴリゴリ進め、黒霧が生産核を端末に変化させ、黒霧が既存の迷宮の暴走を抑え込み、黒霧が緊急性の高い人命救助をそれとなくやり、黒霧が少数潜んでいた帝国兵をやり……とまぁ、南部は完全に黒霧頼りだ。
北でも南でもあれこれやって、王都周辺では通常業務、鍛錬島やスノーでも同様で…………スノーとは名ばかりのブラックスノーだが、支配が終われば業務も減るからそれまで頑張って貰おう。
南方は今の所、公都を除いてこれと言った問題は無い。精々気に掛ける程度の事だけである。
例えば、僕の因子影響を受けて変質してしまった哀れな少女2名は、公都から西にある村に滞在しており、ハミリオン系が生息する森とまた違った植生である西の森の迷宮討伐隊に参加している様だ。
現在彼女等は隷属状態にあるが、特に用途は無いので放置しておく。
後は、あちこちに公都の迷宮の配下と見られる魔物がいる事と、ちょっとだけ強い個体が散見されるくらいだ。
南部の支配は順調に進むだろう。
と言う訳で、保留していたブランこと吹雪の報告を整理する事とする。
報告内容は多岐に渡るが、差し当たり簡単な事から。
先ず、公都に居を構える幾らかの腐敗貴族。
少しの私兵もおり、多少の権力を持ち、しがらみ故に扱い辛い連中であるが、どうやら順調に証拠を集められて摘発の準備が進んでいる様である。
かつて王国から爵位を与えられ、今はルステリア公爵に付いていると言う者もままいるだろうが、そこら辺はルステリア公爵家とルベリオン王家がずぶずぶなので問題ないだろう。
続けて、公都の冒険者ギルド。
此方は、公爵の兵や学園の生徒達が優秀であり影響が強い為、他では迷宮産業の中心である筈の冒険者ギルドはしかし、比較的高い権力を持たない様である。
多少精強であり、多少権力を持ち、なんやかんやで住民からは感謝され、素行もそんなに悪くない。毒にも薬にもならない組織であった。
次、極めて重要な幾つかの問題。
先ず、迷宮都市である公都の迷宮の主についてだが……これは学園の創設者であるルーシェレア・キルシアであると判明している。
その戦闘力はおおよそレベル300に届かない程度だが、周辺ではほぼ敵なしと言って良い実力を持つ。
そんなルーシェレア・キルシアは、エリザ公爵とずぶずぶである。
つまり、潜在的に敵では無い。
一点気になるのは、ルーシェレア・キルシアの年齢だ。
おそらく、100や200ではきかない。下手をしたら1,000年は生きている可能性すらある。
そんな奴が、何も隠し持っていないとは到底思えないのだ。
どんな愚か者でも、100年あれば一定以上の脅威に対する何かを持っている筈。
それを調べるのが、フブキの仕事だ。
現在までに上がっている情報は、3つ。
1つ目は、迷宮の規模とその最深部の情報。
規模に関しては、おおよそ浮遊都市まるまる3つ分。迷宮としては観測史上最大規模で、しかしその最深部を守るメイズボスはレベル200を越えるゴーレム1体と50を越えるゴーレムの群れ。
規模に対してレベルがあまりに低いと言う事が分かった。
……規模ばかり広げて、魔物の層を厚くする為に数を揃えていると言った所か。
唯一脅威であるレベル200オーバーのゴーレムは、最深部から動かない事が予測されるので放置で良い。
2つ目は、迷宮浅層を彷徨いている強者の存在。
おそらく虫系から進化した甲殻人と見られるその個体は、レベルがおおよそ100に届かない程度であると予測される。
その一方で、技量と秘めたる魂の輝きはレベル200のゴーレムを遥かに凌ぐ。
端的に言って、今の僕と同じだ。
レベルに見合わずとんでもない技量を持ち、絶大な精神力によって錬成した高位の気を操る。
彼の個体ならば、消耗こそすれゴーレム兵団にも十分勝ち得るだろう。
この事から……多分だけどルーシェレア・キルシアはこの甲殻人を制御出来ていない物と考えられる。
件の甲殻人は、浅層を彷徨いては危機に陥った人々を助け、一見して重鎧の戦士にしか見えないから普通に感謝されて普通に立ち去っている。
いずれコンタクトを取る必要があるだろう。
最後に、最も重要と言わざるを得ない情報。
どうやらこの公都には、上級天使が1匹潜んでいる様だ。




