第32話 あっさり災禍
第八位階下位
竜人に変化出来たり雷を操れたりするシンプルな子等や、何故か貝殻に限定して様々な操作を可能とする子、十分な素材もとい固有属性魔力を獲得する事でデフォルメされた謎生物を生み出す事が出来る子等々のヴァルハラメンバーを見て周った。
戦果は上々。
皆各町や村の色んな仕事を卒なく熟し、迷宮産の攻撃的な魔物を駆逐、外資材と外貨をもりもり集めている。
まぁ、実際の所外貨は微々たる物で、素材等に関しても質、量共に然したる物ではない。
これらの幾らかは北部侵略部隊の共有資産として黒霧に運用させる。
件の黒霧の方は、迷宮を除いた全域の支配が完了。重傷病人の救護を終え、各町の領主や代官に王命の通達を完了。整備や清掃、炊き出し等の喫緊の救援と仕事を用意させた他、不正腐敗を摘発しお話し合いを終えた。
頭が良くなった領主や代官、その他職員、兵士は国の為王の為にバリバリ仕事を行なっている。
また、各町にあるギルドや村にある支部もギルドマスター権限で仕事を回し、一部職員の不正や一部冒険者の不良を更生、戦力が真っ当に動ける様に整えた。
それに加え、潜んでいる帝国兵も随時捕獲後一人一人丁寧に教育して情報を引き出し、昼を過ぎた今全ての教導を終えた。
これで現在支配済みの北部領域にある問題は残す所一つ。
迷宮の支配のみである。
急速なエネルギー補給からの突然の外敵の出現。間も無く本格的なスタンピードが始まる。
用意した戦力は、主にヴァルハラメンバーを筆頭とした、元帝国兵、騎士及び兵士、冒険者、その他の北部連合軍。
予備戦力は竜装兵団。一線を画す強敵が出現した際の防衛戦力は研究者達。最悪の場合は黒霧が出る。
これで万全。やる事なし!
……と言う訳では無く、未だあるフィールド制限の先にもルベリオン王国の領土はあって、スタンピードが誘発される可能性は十分ある。と言うか誘発されるので、急ぎフィールド制限を解除して追加の戦力を北部に投入する必要がある。
一気に北部の全てを視界に収め、竜装兵と追いヴァルハラメンバーを派遣、外敵を駆除しつつスタンピードの裏で暗躍する。
さぁ、大収穫祭と行こうじゃないか。
◇
それは然ながら百鬼夜行の地獄絵図。
各地の洞窟から異形が次々と溢れ出し、近隣の村や町へ群がる。
それに対するは、事前の教育により一歩も引かない元帝国兵、一部冒険者、兵士達。
それらの中でも取り分け目立つ働きをしているのが、英霊の集いの勇士達。
村や町で熾烈な防衛戦が繰り広げられている一方で、人知れず平原や森で魔物の群れと戦っているのが、ヴァルハラトップメンバーであるユウイチ君達。
ユウイチ君達は小隊に分かれ、黒霧の指示で数が多かったり質が高かったりする外敵の駆逐を行なっている。
蠢く戦場を見下ろし、僕は微笑みながら頷いた。
続けて北へと視線を向ける。
そこでは、王国の御旗を掲げる竜装兵団が暴れ回っていた。
それは然ながら楽団の如く、時に分かれ、時に並び、時に集って魔物の群れを蹴散らして行く。
既に北部領土全体のフィールド制限は解除されており、この有り様と王国軍の御旗を掲げる怪物の群れを報告するべく馬を走らせた帝国軍は無事捕獲済み。
流石に国境を隔てた先にいる監視をどうこうする事はしないので、幾らかの情報は漏れるだろう……勿論、帝国領内でも一定のスタンピードは起きているだろうから、情報が正確に伝達されるにはそれなりに時間が掛かるだろうがね。
それと同時に裏では黒霧が重傷病人の調査を行いつつ生産核を確保してエリアの支配を進め、帝国兵をホイホイしたり徐々にヴァルハラメンバーを北上させたりギルドや領主に働き掛けたりしている。
ざっと見た所、この程度の処理ならやはり黒霧がいればどうとでもなる様だ。
という訳で、ツキは1番美味しい所を見に行く事にする。
◇
「はッ!」
気合い一閃。
振るわれた神器、狂飆の眼と銘打たれた剣は、名の通り凄まじい突風と共にカマイタチを飛ばし、無数の雑魚を吹き散らす。
刹那、メナーニャは加護を宿す魔眼を行使し、疾風の眼と名付けられた足輪を使って最高速で接近、ボスの腹部に蹴りを入れた。
ボスはメナの蹴りをまともにくらい、宙を舞った。
しかし、敵は健在だ。
オルグリガン LV107
大型の恐竜。
背中に大きな骨板を持つこの魔物は、レベル50前後の取り巻きを連れ、更にレベル20前後の雑魚を引き連れた、本日のスタンピード最強の魔物だ。
体内に竜玉を持つこの魔物は、メナの一撃で血を吐くも直ぐに再生。牽制の水魔法を連射しながらメナへ接近する。
メナはスピードに物を言わせて全ての水刃や水流を避け、再度ボスへ接近するや、今度は神器を振るった。
「はぁぁッ!!」
収束された風の斬撃はボスの出した水壁を切り裂き、ボスの胴体へ深々と突き刺さる。
悲鳴が響き、血飛沫が舞った。
追撃の為に剣を持ち上げたメナはしかし、大きく後方へ離脱する。
同時に響いた破壊音は、オルグリガンが闘気を込めた斬撃を振るった音。
メナが一瞬前にいた場所は、地面が爆発した様に捲れ上がっており、万が一当たっていたらメナは血溜まりに沈む事になっていただろう事は間違いない。
後ろへ跳んだメナ目掛け放たれた水刃を、メナは風の盾と剣で迎撃。仕切り直しとなった。
向かい合った今の時点で、オルグリガンは再生を行使、傷はみるみる癒えて行く。
一方メナも、魔力には未だ余裕があり、切り札も残している。
此方は放っておいても大丈夫だろう。
他方、風の守巫女の面々を見てみる。
指揮を執るのは、メナーニャの親友ウィリレッテ。
それなりに長い期間を寄り添った彼女等は、鍛えられた今や巧みな連携を見せ、大型恐竜の群れを次また次と薙ぎ倒して行く。
ただし、ヴァルハラの様にユニークスキルは持たない為、実質武器と少しの加護と規格を揃えたトレーニングによる平均的実力のみ。
単純な個人の戦力は、精々レベル50〜60程度と言って良い。
その為、レベル50且つ亜竜晶を持つ取り巻き相手ではそれなりに消耗もあり、大型は勿論の事小型の幼体も多い為、一見して優勢だが総合力では互角の接戦だ。
そんな戦場の端っこで、僕は周囲とお揃いの緑の装備に身を包み、ちまちま雑魚を切り捨てて回っている。
ツキの貧弱な体には強過ぎる敵だが、魔力操作と効率的運用の訓練になるのでありがたく御命頂戴した。
そうこうしてる内に、ボス同士の激しい戦闘は激化。
切り札たる加護とユニークスキルを全力で行使したメナと、竜属性を全身に纏いメキメキと音を立てて肉体を変質させるオルグリガンの激戦は、大地を割り木々を草の如く薙ぎ払った末に決着した。
その後は、風の魔人となったメナが魔力の続く限り暴れ回り、ここぞと風の守巫女の戦士達が押し込んで、群れの討伐と相なった。
僕は軽く皆に挨拶して、その場を離れる。
さてさて、魂の分別と行こうじゃないか。
◇
国規模クエスト『万魔強行』をクリアして、幾らかのまぁまぁな魔道具を入手した。
また、エクストラ選択報酬により、板骨亜竜の宝箱を入手。何処かで見た事のある様な骨板を使った盾の強化版と、竜属性宿す水の牙を射出する腕輪とちょっとのお宝が入っていた。
選択肢には母蜚蠊の宝箱や土巨人の宝箱等もあった様な気がしない事もないが…………世界に拒まれ1番上の項目以外が見えなかったので1番上を選んだ次第。
黒い大きな虫がいた様な気もしたが気の所為だろう。
ツキは性能が低いからね。勘違いもシカタナイヨ。
そんなどうでも良い事は置いておいて、今回何よりの報酬である、魂の運用について整理する。
先ず、亜竜系は全てモルドの配下として登用する。
これはフォートレストータスやオルグリガン、それらの配下等を含む。
竜寝殿からも一定数支配下に起き、モルドの直属として働いて貰う予定だ。
立場は人を育てる。モルドも成長するだろうし、戦力が増えるし、信仰も得られるに違いない。
正に一石三鳥である。
それに伴い、生き残りことハミリオン君。シャルロッテの聖宝を飲み込んだ亀。金色英雄のグァグァーゴ等もそこに配属。
他のメンバーに合わせて戦力を調整する。
その他の魂は、エネルギー吸収してリリースだ。
早速細かい調節を始めよう。




