第27話 壊滅の上位迷宮
第八位階下位
獣人達には今暫くの休息を与え、次なるタスクの処理に向かう。
目下の急務は3つ。進化した配下達のチューニングと支配したエリアの平定。既に平定済みエリアの観察もとい統治者の観察である。
◇
さぁ、一晩経って、ルベリオン王国の管理者達も少しは落ち着いた頃だろう。
そんな予測は儚くも裏切られた。
そこは然ながら屍のダンスホール。
広い大会議室は机と大量の書類に埋まり、目の下に隈を作ったアルトとイスタル、その他文官達がそれはもう嬉々として仕事を推し進めていた。
そのギラつく瞳の先にあるのは、書類と掌サイズになって分裂した黒霧。
黒霧が頷けば判子が押され、黒霧が首を横に振れば改善案を話し合い、また一方では資材について聞き取りが行われ、また一方では王都周辺の現状と改善案を書類に纏め……後でまた来よう。
まぁ、彼等はなんだかんだ言って愛国心が強いので、どんどん良くなるから止まらなくなってしまったんだろう。
僕は彼等に疲労回復の魔法を掛け、その場からそっと立ち去った。
……良い感じに判断能力低下しててもはや黒霧の人形。
次に向かったのは上位迷宮。
その道中で、北部及び南部の支配状況を確認した。
南部は監視を基本とし、それとなく外敵の駆除及び誘導と病人の管理を行なっている。
十分な時間を掛けて公都の侵略を行おう。
北部は、一定以上の脅威が存在しない為、迷宮による土地の支配を第一に進め、黒霧が病人の調査、ヴァルハラが雑用。そして万が一の為の戦力として研究者組を配置し、彼等が開発した戦力を水増し兵士として利用する。
研究者達はその付近に常駐するので、研究室と資材を詰め込んだ船を手配した。
最低限のステルスと幾らかの空間拡張を行なった飛行船で、武装は少なく戦闘性能が低い。
搭乗者が強いので防衛に関しては問題なく、専ら小規模の研究が出来るだけの船だ。
黒霧に制作を任せたが、欲しい性能の基準値は満たしている辺り流石黒霧と言った所である。
黒霧にアクセスしてその他、支配状況だったりプレイヤー側の様子だったりを確認し、あれこれやってる内に、鍛錬島に到着した。
早速、各員の細かいチューニングを開始する。
◇
ウルルが走った。
多少の粗はあるが、十分な魔力操作で。
星隆の屈強な魔物達はエリアボスや巨人に至るまで瞬く間に血煙と消え、メイズボスであるボス巨人を一方的に切り裂き砕いて殺害せしめた。
魔力吸収もやっていたし、力の制御も出来ていたので、地力は十分だ。
また、神権や装備に関しても、ボス巨人との戦いで力を少し解放、星の神性を付与し生成した天狼とキャッチボールをやっていた。
神性を宿した天狼は、一種の使徒生成だと言える。ボス巨人は泣いていい。
この力量であれば、機神とも十分渡り合えるだろう。
メロットは、何も言う事は無い。
命泉の戦士達を悉く武技で粉砕。風神雷神に限っては体術と神気及び真気操作による脚撃で易々と撃破した。
その魔力操作技術はウルルを越えており、総合スペックから見れば紛う事なき最強の一角。
ウルルと戦ったらメロットが勝つだろうが……それはメロットに与えられた装備が多い為でもあるので、地の戦闘力はほぼ互角である。
クリカはいつも通り原海に赴き、そのとんでもなく膨大なエネルギーを丁寧に使って敵を殲滅、ボスの巨人を捻り潰した。
移動要塞クリカは、単純に個人の保有する戦力と言う点で見ると、ちょっと他と比較出来ない。
それはイェガに然り、武装とエネルギーを貯め込んでいるエヴァに然りだ。
神気操作や真気錬成もちゃんと出来ているので、文句なしの出来栄えである。
更に続けてモルド。
実は捕食吸収能力も優れている彼は、冥宮の骨と腐肉と虫肉のビュッフェをたいらげ、主に骨で形成されるメインディッシュを髄までしゃぶり尽くした。
先の3名よりも疲労が大きく、地力が劣っているが、これだけの力量があれば十分だろう。
次、アルネウム。
彼女は深淵にて、糸を操り一歩も動かず雑魚を殲滅、高レベルなエリアボスを丁寧に締め、メイズボスである多腕巨人を絡め取って縛り上げて解体した。
神気を宿した糸は易々と切れる事は無く、ヘカトンケイルは然ながら罠に掛かった蛾や蝶の如く縛り上げられ、甚振る様に腕を捥いで剥いで毒漬けにしたが、それは一撃で仕留め切る必殺の術を開発出来ていないが故だ。
尚、剥ぎ取られた腕はスタッフのモルドが美味しくむしゃりましたとさ。
続けてレイエル。
彼女は獄峰を海に変え、水流を操って雑魚を殲滅。エリアボスや巨人も容易く捻じ切って、ボス巨人は水球でボコボコにして弱らせた後大量の水で圧殺した。
モルド同様疲労はしているが、それは一気にやった弊害であり、実戦闘力はウルルやメロットに次ぐ。
熱心に教導した甲斐があったと言う物だ。
次に、ネロは神木に送った。
神木が焼けて焼き鳥が出来た。
そこに至るまでは、流石に金炎を操る焼き鳥も相応の抵抗力を見せたが、食べ易いサイズに切られてじっくり炙られて美味しくなっただけだった。
生憎と鶏肉はドロップしない仕様だが、どうやらそれらは美味しいらしく、肉がドロップしないだけにつまみ食いが散見された。
ワンワン軍団の方は塵渦に送り出した。
流石に規模が規模で結局蹂躙なのは相変わらず。7匹の王達はボス巨人を連打、抵抗の隙すら無くボスは荼毘と消えた。
氷天に送り出したのは、三巨像さん達。
聖なる神霊金属セルケディアの威光を放つ彼等は、氷天の極限環境を聖別し、ただの神聖な雪山に変えつつ進軍、全てを滅ぼし尽くしてボスを斬り伏せた。
聖なる神気を纏う真気の斬撃を前にしては、如何な巨人の再生力と言えど治癒は間に合わず、ボスは応戦虚しくズタズタに切り裂かれて死亡した。
三巨像さん達は実質演算補助装置を持っているので、当たり前の様に強いのだ。
次に、天穹に行ったミルちゃん。
撲殺竜である所のミルちゃんは、鋼の肉体と翼による高機動力で天穹に蔓延る飛行魔物を一掃、ボス巨人も神性を宿す打属性を足から頭部へ掛けて殴り込まれ、対処し切れずに爆死した。
ミルちゃんのパンチは物理攻撃と言うよりも打属性の注入、即ち打属性魔法と言うべき代物で、処理し切れないと内部から爆ぜる。
これはパンチ自体は軽くて良く、また触れるだけで注入出来るので受け流しが困難である為、非常に合理的な攻撃だ。
即時の無力化には繋がらない為手痛い反撃を受ける事もあるだろうし、物理攻撃強化に使っても一定の攻勢魔力注入は起きる。それに器を破壊した方が結果的に効率的に消耗させる事が出来る場合もあるので……そこら辺大事なのは使い分けだ。
最後の虹海は、アッセリアとルーレンのタッグ。
それぞれの武器の元となった相手と戦い、それを軽く打倒した。
最初から十分勝ち得る相手だが、それぞれの得意分野を正面から叩き潰す様に勝利出来たので戦果は上々だ。
死には死を、勝利には不屈を持って挑み、アッセリアは死んでも死なずそれなりに巧みな剣技を見せる小人を10度切り捨て、ルーレンは巨人の魔眼から押し寄せる死を押し潰した。
残す所は城のみだが、そこは僕の方の蓄財を消費する事になるので見送る。
そうこうしてる内に、次のイベントの時間だ。




