第24話 手塩に掛けて
第八位階下位
お楽しみの進化タイムの次は、クリアしたクエストの処理。
先ずは南部。
遂に本気を出した冬鬼の突撃により、一晩でフィールド制限が5つ解除された。
迷宮都市ルステリアの南西部、ギリギリパフィニョン地獄の範囲外だった、湖のある森。
迷宮都市ルステリアの南部、森の街道を少し進んだ場所。
そこから更に南の、大きな町が見える平原。
平原の西にある森。
平原の町の南、広大な穀倉地帯。
これでルステリア公爵領の全てを解放した形となった。
領内には塩の生産地であり王都との流通も担う港町や、森を拓く開拓村。元開拓村だった物が発展した林業の村や畜産業の村等が散見される。
そこら辺を一頻り調査した後、迷宮都市ルステリアの本格的な侵食を始める予定だ。
尚、多数存在した魔物を生成している生産核を20個回収、黒霧処理が施され、コレを持って領内全域をカバーしている。
詳しい調査はお昼までに上がるだろう。
残念ながら唯一公都だけは、大規模迷宮の縄張りがある為、刺激しない様に調査は後回しにされている。
続けて北部。
動物組が捕まった森の奥が解放され、そこにあった森内の城塞都市近傍に潜んでいたフィールドボスを倒し、北部の大平野が解放された。
また、帝国の兵……じゃなくて旅人さん達を保護した北西の山を解放。
山と森の北部を占める大平野のフィールド制限を解除、そこから北は、ちょっとした森がある程度の開拓されきったほぼ平野であり、ルベリオン王国北部はそう時間を掛ける事なく支配下に下るだろう。
西はそれらと一線を画し、ほぼ未開拓の森が広がっていた。
比較的新しい放棄された開拓村が散見され、その奥には森に飲まれた開拓村跡もあるが、その先はほぼ人跡未踏と言って良いだろう。
即ち、西部は対象外である。
北部もまた20の黒霧を配置、調査体制を整えている。
ここで、ある一つの問題が生じる。
北部や南部のフィールド制限解除を急ぐ理由は、プレイヤーを人同士の争いに巻き込まない為。もっと言えばプレイヤーに人を殺させない為だ。
それが故にフィールド制限を解除して周り、先回りして問題を解決、平定するのが目的である。
ところがだ、僕は広範囲をカバーする必要がある為、周辺多数の制限を解除、手を回して平定しないと行けない。がしかし、プレイヤーは真っ直ぐ突っ切って行ける為、最悪の場合僕よりも先の方に進んでしまう人が出る可能性があるのだ。
では、どうすれば良いのか?
プレイヤーが入って来次第虐殺する? それもアリだ。経験値入るからね。
だが、それをすると却って人を呼んでしまったり、逆に遠ざけ過ぎてしまう可能性が考えられる。
では、どうするのか?
……配置した黒霧の処理能力を使い、僕独自のフィールド制限を設置する事にした。
最初の10,000人と新規の90,000人の人相、性質は……一部何らかの理由でログインしていない極小数を除いて把握済みだ。
よって、これらがフィールド制限跡地の付近に到達し次第、強靭な認証性結界を張って追い返す。
その先の平定が終わり次第、フィールドボスを配置してプレイヤーを襲わせ、討伐されたら通常の手順でクエストクリアとし制限を解除する。
これが出来るのはひとえに、神の施したフィールド制限のボス撃破によるクリアメッセージの仕様のおかげだ。
それと言うのも、フィールド制限解除メッセージはおそらく、フィールド制限を認識している対象とそのパーティーメンバーにしか届かないのだ。
即ち、新たにフィールド制限を課してもバレないと言う訳である。
管理や報酬に多少のコストは掛かるが、それくらいは必要経費だ。
尚、獲得したスキルポイントは45P。ロジックポイントは90P。その他大した事のないアイテム類は、黒霧の裁量に任せた。
次に、プレイヤーに関連した報告。
プレイヤーは現状、イベントにあまり参加出来ていない。
一応奉仕的に無地のチケットの欠片を2時間毎に1,000枚程度使ってプレイヤーの幾らかをイベントに参加させているが……それ以外が奮わないのだ。
それと言うのも簡単な話、新規プレイヤーは未だにレベル一桁が多く、チケットのドロップ率が低い雑魚しか倒せないからだ。
クエストをクリアすればチケットを貰えるが、低位のクエストでは確率が渋いらしく、しかし上位のクエストはクリア出来ない。
新規のプレイヤー達はチケット難民と化し、より上位のイベントには全く参加出来ない状況が続いている。
その要因は、チケットのドロップ率が低い事だけではない。
チケットで登録出来るのはパーティーとレギオンのいずれかだが、レギオンを編成するには特別なスキルが必要になる為、新規どころか初期のプレイヤー達までも、最大人数6名でチケット1枚を消費しなくてはならなくなっている。
その後のオートマッチングで複数パーティーが統合されるため、イベント自体はクリア出来ているのが救いだ。
チケットの絶対数が少ないのに、1人頭の必要数が多いと言う訳である。
更に、錬金術スキルを持つ者が少ない事や、イベント一回辺りの苦労が大きいのもイベントが奮わない原因と言えるだろう。
……後者に限っては、精神消耗を大きく回復させる仕様が秘密裏に搭載されている為、今のプレイヤー達にとってはむしろ疲労度ゼロを通り越して-100%で完全回復出来るレベルな訳だが。
その回復期間を知覚出来ていない為、合理的判断で疲労が大きいと誤認している様だ。
だがしかし、実際にやって見るとむしろ元気になる状況で……一種のパラドックス化が起き、それらの疲労度に言及する声自体は少ないらしい。
少ないは少ないが、そう言ったプレイヤー達は本気でこの世界を攻略しようとしてる人々で、発言に一定の信頼と突き詰めた説得力がある為、影響は声の数に比して大きい。
現状で問題が起きている訳ではないが、誤認の疲労感を覚えている者もちらほら見られる。
まぁ、そこら辺は規制してどうこうと言う話ではないので、机上の空論よりも自己の体験を重視して貰える様に、ちょっとだけ掲示板で情報操作するだけに留める。
イベント関連ではもう一つ、想定され得た、ある問題が生じ始めていた。
それが、錬金術スキルとチケットの問題だ。
簡単に言えば、錬金術スキルはスキルポイントが重い。錬金術スキル持ちは少ない。しかしチケット合成には錬金術スキルが必要。
その結果、お金を取ってチケットを合成する錬金術師が発生。
勿論、需給の関係上正当な対価として賃金が発生するのは全く問題ないが……各浮遊都市が実質閉鎖空間である事が悪い方に作用し、数少ない錬金術師が結託してギリギリまで値段を釣り上げようとする動きがあったのでチケット合成代行サービスを始めた。
不動の立場として、魔力消費や拘束時間との折り合いをつけた利益の出る値段より少し高い額を提示する事で、他の錬金術師はそれより低くする事しか出来ず、結果的に市場が安定する事だろう。
……これくらいなら奉仕的にただでも問題ないが、それだと錬金術師が育たないからね。
このサービス開始に伴い、幾らかの利益が出てしまう事が考えられる為、それらの還元とイベントを盛り上げプレイヤーの質を向上させる目的で、黒霧と応相談の末、もう一つサービスを提供する事にした。
それがコレだ。
《【緊急クエスト】【都市クエスト】『燃え盛るは火神の残影』が発令されました》
【緊急クエスト】【都市クエスト】
『燃え盛るは火神の残影』
・参加条件
都市・エヴァンノーンの防衛に貢献する。
・達成条件
都市・エヴァンノーンの防衛に成功する。
・失敗条件
都市・エヴァンノーンの防衛に失敗する。
・備考
噴禍神様の御力が高まり、火を宿す魔物達が力を求めて町へ押し寄せ様としている。
防衛の為、力を貸して欲しい。
そう、襲撃イベントの実装である。
尚、この文面はヴェルガノンの聖徒であるオクタヴィア・オーディニルこと新妻あずみが考え、その方面に詳しい面々が少し手を加えて作られた。
これらは不定期に各浮遊都市で行われ、プレイヤー達に幾ばくかの経験値とお金とチケットを配給してくれる事だろう。




