第13話 イベントは休憩
第八位階下位
万色のイベント会場と言う休憩場に賢者達と他数名の保護者達を連れ込んだ。
そう、保護者達には、張らねばならぬ見栄があり、貫かなければならぬ意地があり、魅せなければならぬ子等がいる。
ここはそう、正に地獄の修練場。
という訳で、神魔霊獣蔓延る地獄に、賢者達とアルネアとレーベと白羅と禅鬼とセバスチャンとおまけにミルちゃん、睡蓮、ウルラナを叩き込んだ。
総合戦力的にはほぼ互角。
ただし、彼等は知らない。
自分の足元に、然ながら泥沼の様に絡み付くそこそこの強者の群れ。そこに混じる致死のナイフの脅威を。
まぁ、専ら賢者達と禅鬼に集団の脅威を経験させる為の随行である。
子に誇れる大人である為に、死ぬ気で戦え。
強いぞ。アガーラとリターニァとナハトロンは。
僕は浜辺で知恵の探求を行う。
◇
スキル、天地万物による最も素晴らしい桃のプリセットを作る為の研究は、暫しの時間を要した。
さらりとした産毛が可愛らしいピンクの球体。
その中に眠る黄味掛かった白い実は、ふわりと甘い香りを漂わせ、世界を魅了する。
噛み付くとプツリと繊維の千切れる音。柔らかく、しかし確かな弾力。滴る爽やかな甘味。
溢れ出る果汁その一滴すら惜しみ、摘んだ指に舌を這わせる。
好物故か多く分泌される唾液が、ぬるりと指を滑った。
——正に至福。完璧な桃だ。
勿論、僕はどんな桃も愛せる。そう、皆違って皆良い。
コレもまた一つの究極であり、そして究極は何も一つでは無い。つまり桃の道は人の道と同様に無限大なのだ。
そうこうやってる内に、リターニァとゼンキが激しい肉弾戦を繰り広げ、ナハトロンとエルミェージュの撃ち合いは激化し、アガーラとセバスチャンが戦場を駆けて隠密と幻惑の化かし合いを行っていた。
他方でも、英雄級の敵と保護者達がぶつかり合い、島はゴリゴリと削られて行った。
僕が、素晴らしき香りと確かな弾力を持ち酸味と甘味の奏でるハーモニーを堪能できる黄桃を作った所で、戦場は死屍累々。
流石にレベル的に優っている事もあり、また戦闘経験が豊富であるが故、敵の大半を殲滅した今、此方に欠員はいない。
いないはいないが、無傷な者もいない。
この保護者達を持ってしても、皆が皆疲弊する。これこそが万色のチケットの良い点である。
上位迷宮のボスクラスがポコポコ出てくるのがとても実戦的で、得難い経験を与えてくれる。
僕も死神倒してダモス倒したと思ったら天使出て来た事もあったし、アンデット軍倒して不死竜倒したと思ったら賢神グリエルの亡霊と戦う事にもなった。
常にタイマンで戦える訳では無いし、戦えば確実に仕留められる訳でも無い。
それを教えてくれる素晴らしいイベントなのだ。
と言う訳で、宴もたけなわ、後は最後の城を残すのみ。
島の掘削を開始します。
◇
イベントから帰還し、直接目的の島の転移門広場に飛んだ。
そう、元β島。現我らが生産拠点にして本拠、スノーである。
今やその全てを黒霧に管理され、西側は大規模農場。東の崖は生簀。北の山側にはDPを回収しつつのアイテム生産工場が設置されている。
ここに、奴がいるのだ。
連れて来たメンバーを振り返る。
極一部、ウルラナと睡蓮を除けば、皆頭一つ抜きん出た戦闘経験を持つ者ばかりだ。
ウルラナと睡蓮にしても、長い時を生きた古強者である。
そして……悲しきかな古いが故に、保護者達は若干の順応性が……まぁ、パッと見せてありのままに受け取れてしまうのが若い子達で、パッと見せて色々考えてしまうのが古い子達。
どちらもちゃんとメリットがあって、デメリットもある。
ただ神気操作は魔力操作と同じで、先ずはあれこれやるより神気を操れる様になった方が良いのが現状。
その点で若干の遅れが生じているだけなのだ。
必要なのは濃厚な時間と濃密な経験。
だからこそ、これからやる事に付いてきて貰うのである。
イベントに秘められた時間合わせの機能により、僕の精神力はまぁまぁの回復を見た。
早速、皆を引き連れてそこに移動する。
少し歩き、古びた神殿の様な施設の前に来た。
そこの正面に立つのは、巨大な金属の像だ。
神造・殲滅弓騎兵 LV750MAX
「っ……これは」
「……一見しては分かりませんが、生きていますね」
「案内したって事はこいつが相手って事か……」
ニヤリと笑い拳を打ち合わせるザイエに、考察をするエイジュ、神域に通ずる者はその内部に刻まれた神代の力を察知しており、レーベに限っては無言で気合を入れている。
僕は微笑みながら振り向き……刹那、皆に緊張が走ったのは何故だろうまぁ良いが。
「……皆、準備は良いね?」
そう問う僕に、皆は頷く。
念動力の上位スキル、神通力を行使して、全員の魂を繋いだ。
「それじゃあ、行くよ……!」
神造の騎士に触れた刹那——
——世界はパチリと明滅する。




