第14話 九日目の朝
第四位階上位
「ふぁ……んぅ……んん?」
目を覚ましたら見知らぬ天井だった。
どうやらログアウトせずに寝てしまったらしい。
昨日の夜の事を思い出そうとするが、良く覚えていない。
僕が覚えていないと言う事は覚える必要が無い事、と言う訳だ。
よって思い出す必要は無い。
それよりも、ログアウトしなければ。
「……ユキ?」
「ん?」
声のする方へ振り向くと白雪がいた。
「……おやすみー」
「え? う、うん」
◇
ログアウトし、いつも通り朝の準備をする。
今日は晴れ。心なしか気分も良い。
途中サアヤが『昨日はお楽しみでしたねぇ』とか良く分からない事を言っていたので『? うん、昨日は皆で狩りが出来て楽しかったね』と答えておいた。
ともあれ、今日の準備も整った、後はタクメールを確認するだけである。
そんなタクメールによると、西の森探索隊は現在、三人のトッププレイヤーを筆頭に据えて探索しているらしい。
巨大な剣を軽々と振り回し、巧みな体捌きと得物の重量で敵を圧壊する『大剣士』または『戦場の暴君』。
音もなく木の上を飛び回り、気取られる事なく敵を仕留める、珍しい弓使い『森の暗殺者』または『沈黙の殺戮者』。
拳や脚を武器に戦い、高い戦果を上げている、珍しい体術使い『拳鬼』または『拳姫』。
この三人は推定レベル20オーバーの、紛う事なきトッププレイヤーだ。
彼等が率いるパーティーを中心に、探索は順調に進んでいるとの事。
北の森は特に進展は無し、南の鉱山街も真っ暗な洞窟の中を進む為、攻略は滞っているらしい。
二つ名持ちの三人の情報も少々書かれていた。
『戦場の暴君』は名前に暴君とついているが実際には賢君らしい。
人を率いるカリスマ性があり、色々と適当に楽しんでいるのだとか。
暴君の所以は戦いで容赦無く魔物を叩き潰すから。
『沈黙の殺戮者』は物騒な名前だが、その実、森で魔物に殺されそうになっていたプレイヤー達を次々に救済している人らしい。
やられるっ、と思った次の瞬間には魔物の脳天を矢が貫いている、とかなんとか。
『拳姫』はやたらと強くて生意気なロリ餓鬼らしい。
PvPでは負け無しで、自分こそプレイヤー最強と豪語しているのだとか。
実際に、ゴブリンや犬程度の魔物相手なら単独でも負け無しの様だ。
現状はソロ。
タクメールは以上だ。
未だに地下水路が見つかっていないが、その理由はいくつか考えられる。
そもそも地下水路への入り口は、東西南北の門の隣や街の各所にある兵士の詰所、街の中心部の王城やその近くの貴族街、と一般人が入れないところにある。
ニャン拠街にある入り口は元々兵士の詰所だったところらしいので、実質そこ以外にプレイヤーが地下水路へ行ける道は無い。
地下水路への入り口が見つかるのはまだまだ先になりそうだ。
集合時間まではまだ余裕があるが、ログインしよう。
「オープンゲート」
◇
目を覚ますと周囲を確認。どうやら白雪含め女子組は今眠っている、と言うかログアウト中らしい。
直ぐに女子部屋から脱出する。
何故かは知らないけれど、ここにいてはいけない気がしたので速やかに離脱。
リビングに出ると、中庭にタクとアランがいた。
何をしているのかと思えば朝っぱらから酒盛りである。
バーベキューの残りを焼き直しつつ、随分と楽しそうである。
僕も混ぜて貰おうか。
「やぁ、おはよう」
「ん? ユキか、早いな」
「おう、ユキ、どうだ一杯」
「うん、頂こうかな」
アランの誘いに応え、壁に手を突っ込みコップを取り出す。
リッドが変形した物だ。ついでに、一晩経って消費された魔力を魔力譲渡で補充しておく。
コップをアランの前に出したところで、タクが待ったをかけた。
「アラン良いか? ユキに、酒を、与えては、いけない。何があろうともだ」
「あ、あぁ……ユキ、一体何したんだ?」
「失敬な、僕は何もしてないよ?」
実際に記憶に無いので、つまり何もしていないと言う事だ。悪い事をしてたら忘れる筈がないからだ。よって何もしていない。
祭事で飲む御神酒も酔う様な事は無い。
「……アラン、ユキに、酒を、与えては、いけない。良いな?」
「……分かった」
「むぅ」
わざわざ強調して二度も言ったタク。
仕方ないのでつまみの串肉を掻っ攫い、アンデット等の魔石を合成する作業に取り掛かる。
アンデットの魔石は小さく、含まれる魔力も少ない。
これと同様に、虫系も強さの割に魔力含有量が少ない傾向にある。
ゴキブリとウサギの魔力量はほぼ同じだが、明らかにゴキブリの方が厄介なのだ。機能が洗練されているのだろう。
アンデットの魔石を合成、変換し終わると、続いてゴブリンもどきことヴァンパイアの魔石を合成する。
此方はレベルも高かったので、多くの魔水晶を作る事が出来た。
錬金術のレベルも上がったので、魔水晶を更に合成、変換してみた所、見事に成功した。
魔結晶《小》 品質D レア度5 耐久力A
備考:巨大な魔力を秘めた純魔力の結晶体。小さい。魔力含有量が少なく低品質。
残念ながら、手持ちの魔水晶の殆どを使っても低品質の品一つしか作れなかった。
むしろ、一つでも作れた事を僥倖と捉えるべきだろうか?
魔結晶から感じられる魔力は中々に凄まじい。
結晶大王蟹から得られた魔石、この場合は魔核と言うべきだろうか?
ともあれ、件の魔核はこの魔結晶よりも凄まじい魔力を秘めているのだから結晶大王蟹の強さが伺えると言う物だ。
そうこうしている内に皆がログインしてきたらしい。
朝ご飯を食べたら出発になる。
だが、その前に、スキル結晶を配って魔水晶を集めてしまおうか。
皆も強くなれて、僕も魔水晶が得られる。正にwin-winの関係だね。




