掌話 海人のバルカローレ 三
第四位階下位
海鮮通路2番目は蛸が主なエリアだ。
この蛸達は、特にコレといった力こそないものの逃げ足が早く、また捕まって噛みつかれると普通に深く食いちぎられる。
そんなタコどもを連携して乱獲し、アイテムボックスとマジック・ポーチがいっぱいになったので一時撤退。
転移門広場で売っぱらいに行く。
……昨日までよりペースが少しは上がったかな?
後、レベルが上がった事で今更ながら気付いたが、こいつらパーティー編成出来ないしレベル上げはMC払ってやるから経験値そのものが入らない。
つまりは道具扱いのNPCって事なんだろうな。
◇
大きな蟹と蛸がおおよそ4000MCずつ。その他の獲物も含め、合計6万少々の稼ぎ。
そんな稼ぎを持って、リスティアのモンスターカード専門店に行くと、昨日とは打って変わってかなりの混みようだった。
そろそろプレイヤーの数が増え始める時間だし、これは暫く掛かるな。
少し時間を置いてまた来よう。
そうと決まれば次のエリアだ。
青い光に照らされる通路を抜け、程々に獲物を回収しつつ向かったのは3番目のエリア。槍イカエリアだ。
広間に入るなり、先ずはドーナッツ状の浅瀬を走りながら一周する。
背後で響く音は全て無視だ。
一周する頃には、波打ち際でジタバタするデカイカをモリで締めて回れば良し。
ただし油断は禁物だ。一周目で釣れなかった奴が足とか胴とかに突き刺さって死ぬからな。
走りながらモリを突き刺して周り、3匹程締めた所で一度陸側へ、モリからイカを抜いてマジック・ポーチに仕舞い、再度締めて回る。
これを繰り返した後、釣られて来ないボスイカ狩りだ。
もっとも、やる事は変わらないがな。隙を見て中央の浅瀬に渡り、水晶の前で隙を晒すだけ。
それだけで、ボスイカ達は水晶の結界みたいなのに全力で体当たりし、MP切れかなんかで硬化と高速移動が出来なくなる。
送還していたイルカとサメを再召喚。
さっさと終わらせて次行くぞーと。
◇
何事も無く無事狩り終わり、海鮮通路4番目に入った。
ここのボスは、蠢いて絡み付いて来る昆布と泳ぐゴブリンだが、その難易度は昆布の配置による。
今回は昆布もゴブリンも満遍なく配置されてるから……取り敢えずイルカとサメを昆布の囮にしてゴブリンを狩るのが最適だろうな。
「良し、お前ら、行ってこい」
召喚した2匹を先に行かせ、昆布の周りを泳がせる。
昆布が2匹に執心した所で、即座に飛び込んで先ずは1匹、ゴブリンへ武技を叩き込んだ。
モリは心臓部を貫き、ゴブリンは光の粒子になって消える。
硬直が収まるや、近付いて来ていたゴブリンへ同じ様に武技を放った。
一撃必殺。まぁ、こっちはレベル30後半だし、相手がどうかは分からないが、ぶっちゃけ昆布に巻き付かれてても勝てる。
そんなもんよなー。
「ぶくぶく《お? ラッキー》」
モリがドロップした。予備だなこりゃ。
もう一体からドロップした魔石はマジック・ポーチに、エレメンタルストーンはカードホルダーに、モリはアイテムボックスに入れた。
さてさて、次は巻き付かれて締め上げられてるサメとイルカの救出だな、と。
◇
混んでるのは致し方なし。
転移門広場の店で戦果を売っぱらい、モンスターカードは一旦諦めて鍛錬島の方に行くか。
そんな考え事をしながら、スキルレベリングを兼ねて広くない転移門広場の町を走り回っていると、ある違和感に気付いた。
いや、違和感と言うか、考え事してるせいで気付かなかったと言うべきか。
この町には、幾つかの店と宿、公園なんかがある。
それらの施設の中で最も多いのが、プレイヤーが借りられるらしい家なのだが……その内の一つ。各店に程近い家が、改装されて店になっていた。
鍛錬島の方が色々と設備が整ってるもんで、転移門広場の町は専ら通過地点。
新規でプレイヤーが9万も追加される事もあって、プレイヤーの殆どは鍛錬島かルベリオンにおり、この町は昼間でも殆ど人気が無い。
その所為か、その店は閑古鳥が鳴いていた。
取り敢えず入る。
「……ふーん」
見覚えのある内装。
魔物が描かれたカードがショーケースに飾られ、きらきらと輝いている。
——モンスターカード専門店だ。
この町にもあったのか。
「てんい……ん……」
「カードのアップデートでしょうか」
「あ、あぁ」
そこにいたのは、リスティアの店員と全く同じ姿形をした美人店員。
いやまぁ、ゲームだしな。そこら辺使い回してるんだろうな。ゲームだしな。
「レベルアップで、料金は……」
「レベル2に上げるのに1万MC。それ以降は1レベル毎に5,000MCずつ値段が上がって行きます」
「5,000ずつ上がるのか」
「レベル5までで7万MCですが、如何致しますか?」
レベル5で7万か……2体で14万。行けるな。
「2枚ともレベル5までお願いします」
「承りました」
指輪とカードを渡すと、店員は機械に指輪を翳したりカードを挿れたりとよく分からない作業をした。
ピカピカと光ったりするそれらをぼーっと見ていると、直ぐに終わった様で、カードと指輪を受け取った。
「ベビーシャークとベビードルフィンがシャークとドルフィンに進化可能になりました」
「え?」
「1体に付き1万MCと水の属性石3個が必要です」
「へぇ……」
進化? ベビーが消えて大人に……いや、何も言うまい。ゲームだしな。そんなもんだろ。
残金2万とちょびっとしか無いが、足りるしやろう。
「それでお願いします」
「承りました」
先と同じ様に指輪を渡し、青いエレメンタルストーンとカードを渡すと、店員さんは先と同じ様に機械で何やらピカピカやって、何か出来たらしいカードと指輪を受け取った。
モンスターカードは、絵柄がちっこいサメとイルカから成体っぽいイラストに変わり……これで強くなったんだろうか?
「またのお越しをお待ちしております」
綺麗にお辞儀する店員さんに見送られ、店を後にした。
取り敢えず……鍛錬島の方で試すかね。




