第24話 万色の城
第八位階下位
新規プレイヤー達の動きを観察し、初期プレイヤーの動向を見下ろし、我が国民達の営みを見守り、我等が配下達の休憩を強制し、些細な興味を満たした。
待っている間に、コウキ軍団の手により雲と奈落の迷宮がクリアされた。
報酬は、スキルポイント40P。ロジックポイント28P。1,000,000MC。極光耐性と深淵耐性が1個ずつ。付与結晶『聖光の守護』『暗黒の守護』。光精鋼の剣に闇精鋼の大鎌。
スキルポイントが美味い以外はまぁまぁの報酬だ。
一つ気になっているのは、迷宮が6つクリアされた事で解放される塔の迷宮。
塔の迷宮に入る事自体は問題ないが、その先の中位迷宮に入れるかどうかが気掛かりだ。
もし入れるなら配下達の狩場が減ってしまう。
現状コウキ軍団は、難関である2つの迷宮をクリアした事で、補給やイベントに備えて休憩している。
その為塔の迷宮側に行く気配は無い。
まぁ、それも時間の問題なので、今のうちに得られるリソースは得ておこう。
プレイヤーが来た時に備えて、黒霧に監視と管理を任せる。
その他、黒霧提案の元、黒霧のクラスタ魂魄を利用したレギオンの多重編成で、無地のチケットの欠片を使ったイベント募集を行う事も決めた。
これで、初期プレイヤーもイベントにスタートダッシュ出来るだろう。
幸にして、無地のチケットの欠片は腐る程あるので、初回は差し当たって1,000枚まで募集を掛けておく。
様々な確認を終え、ログアウトして早めの昼食を摂り、各種雑務を終えた。
さて、それじゃあ、時間だ。
◇
光に包まれ、気付くと、超巨大な円盤の上に立っていた。
ざっと辺りを見渡すに、今回の円盤は高所恐怖症に配慮したか、真っ白な床に半透明な虹色が水玉模様を描いていた。
しゅばばばっと集まって来る皆を制し、きれずにウルルに跳ね付かれた。
勢いを殺してバックすると、そこで待ち受けていたシャルロッテに激突。
華麗に僕の勢いを殺して、自分は吹っ飛んで行った。
一体なんだと言うのか。
……この待機場所で死んだらどうなるのか少し気になったが、どうせ誰かが実験すると思うので、黒霧を通じて掲示板から情報を集めよう。
差し当たって、整理分類スキルを利用してレギオンを四重編成。
僕以外のメンバーは四方に散らばるだろうが、僕が何処に送られるかは不明だ……果たして——
光に包まれ、気付くと浜辺に立っていた。
「……ふむ」
メンバーは、ある程度戦力均等分配したとは言えどうしても発生する微かな差の中から、最も戦力が低い場所だ。
参加者の戦力をある程度正確に測って、参加者達の手動で分配されない部分を自動で分配される様になっているのだろう。
取り敢えず、サンディアとテリー、ミルちゃんなどに手を振ってから、空へ登ってみる。
ふわりふわりと上を目指すと、途中で何かをすり抜けた様な妙な感覚があった。
これには覚えがある。転移門がある旧遺跡の街だ。ここには安全地帯の結界があるのだろう。
更に上へと飛翔すると、突然地上で何かが弾け、飛来した光をはたき落とした。
閃光のリターニァ LV650
ドールではなく完全な人型をしたそれは、ブロンドに黄色の瞳を持つ長身の女。
彼女は一瞬驚愕に目を見開くも、隙は見せずに即座に行動を開始した。
宙を蹴り、閃光となって僕に拳打を繰り返す。
僕はその悉くを打ち払い、カウンターをポコポコ打ち込み、ひたすらぽこぽこした末、油断したリターニァの心臓をまるッと消し飛ばした。
怯んだリターニァを蹴り落とし——その反動を利用して飛来した黒槍の一撃を避ける。
必殺のナハトロン LV650
黒い髪に赤い瞳。僕よりは少し背が高いが小柄な……悪魔だ。
かなり距離のある大きな砦の上で、目を見開いた後に凄く嫌そうな顔をして此方を見ている。
差し当たって念動力で手を伸ばして見ると、ギョッとした顔で再度槍を生成し始めた。
まぁ、手が届く事はないだろうけどね。
刹那——森の中から飛来した斬撃が、念動力の手を切り裂いた。
慈悲のナーヤ LV650
ナーヤだ。
でも多分ナーヤが死んだのはレベル200代の時だと思うので、やっぱりオリジナルの魂であるとする線は無いのだろうか?
それとも、宝珠の様な補助人格が埋め込まれてレベルが格上げされているのだろうか?
とても気になる。
ただはっきりと分かるのは、その武装が中身はともかく外身は最初会った時と全く同じ物と言う事だけだ。
僕がそれらと戯れている内に、配下の皆も動き出した様で、あちこちで激しい戦いの音が響き始めた。
高度を稼げていないので何が起きてるか目視は出来ないが、取り敢えず海の幾らかと島の幾らかが蒸発しているのは分かった。イベントインベントリに壊れた土とか水が入ってるから。
◇
ナハトロンやリターニァに狙われて、はたき落としたり槍を避けたりしていると、暫くしてその2人も忙しくなった様で、安心して天空から地上を見下ろせる様になった。
地上は酷いあり様だった。
それは戦闘とか戦争とかと言うよりも、終末。または棒倒し。
レベルにして最低300程のドール達が蔓延る島は、四方から削り取られる様にして無くなっていく。
勿論、敵も無抵抗でなければ無力でもない。
島が未だ残っているのが、このレベル300代以上の兵士たちの健闘あるが故なのだ。
その総数は、ミリオン単位。
雑兵を強化したからこそ漸くまともな戦闘になっており、強化してなかったらあっさり殲滅されていた事だろう。
頭数だけ見れば未だかつて無い程の規模。総合戦力で言えば……竜寝殿くらいかな。
まぁ、つまり、勝てる。
ただ圧勝ではない。
根絶のギラン LV650
髭をたくわえたとんがり帽子のお爺さん。
この男が、森や味方のドール毎、森海の主の軍勢を焼き払った。
ガス欠を起こしたお爺さんは、直ちに始末された。
また、ナハトロンが執拗に研究者メンバーを狙い、それに気付いた3人の英雄級が研究者メンバーを襲撃した。
城塞のアルベルト LV650
竜殺のエミリー LV650
剣聖のヴァーミュラー LV650
応援が間に合い事なきを得たが、それでも戦いは長引いた。
これらの他にも、新たな徘徊ボスが各地で猛威を振るった。
詩仙のエブラィジュ LV650
エルフの男は竪琴を奏で、砦全体のドールを強化した。
呪怨のタリジャ LV650
リッチとなったこの男は、呪術を用いて遠隔攻撃を仕掛けて来た。
不滅のタンブラ LV650
シャドー系の上位種とみられるコイツは、塵一つ残さず消滅させても復活する驚異的な再生力で消耗戦を仕掛けて来た。
王威のノーデンス LV650
複数の角を生やした人型の大男は、エブラィジュ同様に範囲補助魔法を行使し、多くのドールを強化した。
秘奥のシスカ LV650
病的に真っ白な肌のこの女は、倒した筈の英雄級を蘇生した。
虐殺のアンドレア LV650
神癒のヴィオレッタ LV650
強力な魔剣を持つフィジカルが強い大男と、結界魔法を得意とする回復担当のタッグは、単純な分強く、スパーリングの相手としては優秀だった。
やはり、周囲の雑兵が油断ならない程度には強いのが良い効果を齎している。
常に緊張感が維持され、その中に混じる大物の脅威を際立たせているのだ。
レベル650ともなると、中々相対できる物ではないので、とても良い経験になる。
これが何度も出来るなんて……最高のイベントじゃない?




