第18話 レア素材
第八位階下位
暇つぶしのクエストも終え、得られた良い物は精々スキルポイント8P。ロジックポイント16Pくらい。
皆の要求に応じて装備をアップグレードしたり、魔物召喚板等の特殊なアイテムを受注生産したり、そんな報酬の分配を終えた。
皆は次のイベント開始までのそこそこの時間、それらの確認とスキルレベリングに励む様である。
一方僕は……この地底湖戦を経て、2つの課題を抱えた。
内一つは、地底湖戦の続きだ。
簡単に言えば……地底湖の北側に存在する迷宮狩りである。
元々この迷宮は、王都を守る結界のエネルギー源となる大結晶の影響で発生した物だ。
しかし今は、試練級の魔物が近くで死んだ事、それが呼び水となり地脈の魔力が多少流れ込む余地が生まれた事により、地底湖エリア同様に異常な進化を遂げている。
また、確保した結晶大王蟹の因子を用いて、蟹型のボスを生成している様であった。
という訳で、クリスタロス改めクリスタには、最初のお仕事としてこの迷宮を再度攻略して貰う。
そう、虐殺だ。
これで、タスクの一つが終了。
問題はその次……神代のサーチ能力を行使して初めて気付いた、妙な気配だ。
早速僕は、地底湖の上。合成獣研究施設の中央の部屋に向かった。
◇
合成獣研究施設中央。
そこは、位置的には地底湖の中央、即ち杖が封印されていた場所の上であり、王城の地下中央、即ち審判の間の下である。
まるで力が収束する様に作られたかの様にも思えるし、なんだったら……強い力で挟み込む事で何かを封印している様にも見える。
或いは……何かを隠していたのか。もしくは僕の考え過ぎかな?
大きな水槽が4つある部屋の中央で、すべての機材を退けて調べた所……何かの仕掛けがある様子は無かった。
ただ、気配を感知するに、間違いなくその床下に何かがある。
つまり……そこに何かを置いてから、その上に施設を作った。もしくは、中央の部屋だけ後から作った。
どちらにせよ、これを作った者はその隠した物を通常の手段では取り出せない様にしたと言う事だ。
ただ、それをやった年代に関しては何とも言えない。
空間魔法が使えれば、そんな隠蔽なんて幾らでも出来るからだ。
まぁとにかく、中に何があるか見ておこう。考察はその後で良い。
床をスパッと切り取り、下の小さな空間に飛び降りて——
「……成る程」
——納得した。
何者か、または何者か達、が隠そうとした理由。
奇妙に気配を感じ取れなかった理由。
そして、高度に暗号化された記録に残されていた、ルベリオン王国先祖のホムンクルスに利用されたとされる骨が何処から来たのか。
それらの明確な答えが、そこに鎮座していた。
竜寝殿でも見た、大きな結晶体。
それに包まれる、二人の金髪の女性。
「……ティアーネとエリザベートか」
間違いない。
この結晶は竜寝殿のそれと根源を同じくする封印結晶だ。
解読した経験から、中身がティアーネとエリザベートであるという事が分かる。
小さな空間には、それ以外にも3つの台座があった。
その上には、同じ様に一抱えもある結晶が安置されている。
しかしその内2つは、結晶が半ばから割れていた。
「ふむ……」
見た所、何か大きな力が封印されており、その力の発する圧によって、長い時間を掛けて砕かれた様だ。
その大きな力の正体は、砕けた結晶の微かな残り香から分かる。
——ティアーネとエリザベートの魂だ。
だから、ティアーネとエリザベートはルベリオン王国内で転生を果たしたのだろう。
残る最後の台座にあった物は——
「……読めて来た」
——黒い斑点が付いた腕。
チラリと見上げたティアーネの遺体には、左腕が無い。
まごう事なきティアーネの腕だ。
問題は、そこに刻まれた斑模様。
これは……負の力に侵食された形跡だ。
また、腕の結晶は何者かによって削られ、切断面の一部が露出している。
表面のみ劣化し、その数センチ先は良好な状態が保たれているのは幸いと言って良いだろう。
それはティアーネの素体の質が極めて高い証明とも言える。
そんな生前強力であった筈のティアーネが死ぬ程の相手など、当然限られる。
おそらくティアーネ達を殺したのは、神獣ベルツェリーアを殺害し、機械神イヴ・ハルモニアに壊滅的被害を負わせ、熾天使アシュリアを死に追いやった彼の邪神。
ベルツ大陸を滅ぼした、邪神竜・アジ・ダハーカに相違あるまい。
となると結晶化封印を施したのは、十中八九イヴだ。
そして、これをここに運んだ者と、最近までこの施設を稼働させていた者は、同一人物である可能性が高い。
何故なら、結晶化封印を削れる程の力を持った存在が、苦労して手に入れた骨を誰かに譲る筈もなく、またその人物は今まで生存していてもおかしくないからだ。
つまり、そう……つまりだ、その人物は、初代ルベリオン王国国主にして……金の因子の適合者、ティアーネ・ルベリオンのホムンクルスを使役している。
それだけでなく、そいつはドラミールの因子を持つ竜を使役し、ルェルァ・ローシェの因子を持つであろう無属性精霊を使役し、おまけでなんか頭が9個あるっぽい狼の怪物を使役している。
で、そんなそこそこ強い戦力を保有しているであろう人物に、僕は心当たりがある。
時代的には、ユウイチ君率いるリベリオンが活躍していた時の前後からベルツ大陸が滅ぶまでのおおよそ300〜500年程度に存在する人物。
その人物は合成獣がとても好きで、いつか自分の考える最強の魔獣を自らの手で作りたいと考えている奴。
そして、倫理観が欠如しており、平気で生きてる者を材料にするわ必要とあらば腐り切った帝国に与する奴。
そう、キメラマスターと称される帝国十傑の一人——バーチス・アルディである。
そもそも、数百年も生きていれば、作るのではなく育てる方が早いと気付く。
蛇の死体を2個くっ付けて多頭蛇を作る労力と、蛇を育ててツインヘッドスネークに進化させる労力、後者の方がずっと楽だ。
それをわざわざくっ付けて作る事に拘る辺り、ほぼ間違いないだろう。
仮に本人じゃなくとも、その弟子か何かなのは間違いない。
仮にティアーネのホムンクルスに何かくだらない事をしていよう物なら……その魂までバラバラに分解して海に流してやる。
それはそうと……やったね! 強力な素材を手に入れたぞ。




