第15話 地底にキラリ
第八位階下位
さて、次の白チケットまで時間があるが、今日は竜寝殿を襲ったり整備したりと大変だったので、あまり消耗したくないしさせたくない。
特にこれと言って予定は無いので……兼ねてから気になっていたアレを確認しに行こう。
◇
内心傷心中のシロを連れて、気になる旅に出た。
最初にインヴェルノの地下墳墓に行ってみたが、残念ながらハズレ。
最初の印象通り、彼はその役目を僕に受け渡し、永遠の眠りについたのだろう。
シロと一緒に花を添え、ちょびっとだけ心の中でお話しをしてからその場を後にした。
……ミシュカが生きてて良かったね。
そんなこんなで、次に向かったのは地底湖。
目的のブツを探す為、良くサーチする前に、直ぐに異常に気付いた。
「むむむ」
「……? あれは……岩……ゴーレム? いえ、蟹……?」
そう蟹だ。
それも、岩で出来た蟹だ。
岩蟹だ。
「むむむむむ」
「遠くてはっきりとは分かりませんが……強い魔力を帯びていますね」
サイズは大した事ない。一抱えあるかどうかと言った所だ。
内部にはコアと思わしき存在がいる。
だが、問題はソイツじゃない。
この地底湖のあちこちに大きな力を持つ蟹達がおり、更に敵の平均レベルが向上している。
精々レベル10代程度だが、強い者は50近い。
ベルツ大陸時代のランク設定を参考にすると……ざっとC級魔境と言えるレベルになっている。
元が大きく見積もってもE級程度だった事を考えると、大き過ぎる環境の変化だ。
アンデット組を迷宮探索から帰還させてから殆ど放置していたが……まさかこんな事になっているなんて……。
幸い、王都を守護する為のエネルギー源である大結晶は無事だ。寧ろ魔力が想定より多く補給されている。
原因は……結晶大王蟹の死である事は明白。
おそらく、死亡した時に拡散したエネルギーが地底湖の生物、とりわけ蟹達に吸収され、時間を掛けて強化された他、地脈の活性化も無関係ではないだろう。
拡散したエネルギーが呼び水となって、地脈のエネルギーが地底湖に噴出したか。
このまま放置すれば、多分B級くらいで落ち着くだろう。
「まぁ、取り敢えず……マシロ、アレを倒してみて」
「分かりました」
剣を抜き、浅瀬に入るマシロを見送り、僕は目的のブツを探す。少し目を凝らすと、目的のブツは直ぐに見つかった。
ふむふむ……これは……また面白い事になって……。
マシロがぱちゃぱちゃと水を跳ねさせ、一息に岩蟹に接近すると、岩蟹もそれに反応してマシロに鋏を振るった。
マシロはそれを軽く避け、斬属性により切り落とす。
即座に蟹は逆の鋏を振るい、マシロはそれを回避、闘気を宿した蹴りを撃ち込む。
胴体に直撃したそれはしかし、蟹の練り上げた闘気により防御され、ヒビ一つ入らない。
マシロの隙を突いて、破壊の闘気を宿した鋏を振るうも、マシロは回転しながら飛んで回避、着地と同時に跳ねる様に蟹へ接近し、斬撃でもう片方の鋏と足の何本かを切り落とした。
即逃走を図った蟹はしかし、マシロの投擲した剣で足を粉砕され、接近したマシロに胴体を蹴り砕かれた。
次の刹那——
——砕けた蟹の胴体の隙間から光る何かが射出され、湖へと落ち——
——る前に僕が念動力でキャッチした。
一瞬泳ごうとした後、ジタバタ藻掻くそれを手元に引き寄せる。
それは僕の手のひらサイズしかない、小さなイキモノだった。
クリスタルクラブ LV32
透明な結晶で出来た、ゴーレムの様な魔物。
コアは無いが、強いて言うなら魂がそれに該当する。
コレが、目的のブツ。
——結晶大王蟹の転生体だ。
肉の体に宿らない事で、こんな短い期間で転生を果たしたか。
てっきり魂のまま彷徨いているか、または死に切って拡散してしまったかと思っていたが……。
やはり、レベル800近いと予測される生物の強さと言ったら半端では無い。
魂の8〜9割を搾り取られても、負けじと蘇るのだから、正気の沙汰では無い。
取り敢えずテイムだ。
レベルこそ下がっているが、記憶や刻まれたスキルは殆ど失われていないだろう。
だからこそ、死の原因となった僕に対し反発があったものの……まぁ、ぐりぐりと、ゴリゴリと、現状最も得意であろう魂の戦場で虐めてあげたら、間も無く陥落した。
しょぼーんと萎びるクリスタルの蟹に、チュッと軽いキスを落とす。虐めてごめんよ。
寄ってきたマシロに、蟹を見せる。
「お疲れ様。ありがとね」
「はい……それは?」
僕の唇を見詰めつつ問うマシロに僕は微笑んで見せた。
「神になる獣さ」
「…………うーん、分かりません。少し強い様ですが……確かに結晶としては今まで見た中でも最高ですが、神になると言う程ではないと思います」
「うんうん……そーなんだよねぇ」
僕は辺りを見渡した。
この地底湖の各地に、力を得た強個体がいる。
何から力を得たか? 結晶大王蟹からだ。
つまり、彼の器はここにあり、それを満たしていた力は、複数の小さな器に注がれた。
おそらく、スキルの断片や記憶の一部も拡散した物と考えられる。
ここから効率的に力を取り戻すには、拡散した力を回収する方が良い。
即ち——湖掃討戦だ。
《【伝説クエスト】『大王継承戦争』が発令されました》
「……クエスト」
「……皆も呼んどこう」
まぁ、銀の力がより大きな銀に引かれる様に、彼の力も彼の魂に引かれる。
近くで敵を倒せば、スキルや記憶と言った強力な欠片は彼の元に戻るだろう。
それに、皆も次のイベントまで暇だろうしね。巻き込まれて貰おう。




