第14話 色チケットは手強い
第八位階下位
時間になり、待機場所に転送された。
ざっと見回した感じ、皆もちゃんと準備出来ている様だ。
皆僕を認識すると、わらわらと集まって来る。
「おにぇちゃんがちゃんとおにぇちゃんだ!」
「僕はいつだって僕だよ?」
抱き着こうとする両手をがっしり捕まえてにぎにぎしつつ、タクに視線を向ける。
「今度は各自でパーティーを組んで行ってみたらどうかな?」
「そうだな。敵が強くなるかも知れねぇし」
城の外からスタートかも知れないしね。
タク振り分けのパーティー編成は、タクチーム。セイトチーム。アヤチーム。リンカちゃんチームを筆頭に、僕を除いた他の戦力が均等になる様に配置された。
僕がやるのは、敵戦力の正確な計測だ。
無地のチケットは、レベル50が最低5人、ボス級ユニット対策で余裕を持たせるなら10人程度いれば問題なく殲滅出来るレベルだった。
色チケットは、それよりも高い戦力を必要とすると考えられるが、まぁ多くともレベル50が30人程度いれば問題ないと思われる。
1番の問題は、やはりアガーラ等の徘徊ボスだが、それ以外は大した事ないレベルだけのハリボテ。レベル差5以内なら問題なく対処出来るだろう。
さてさて、どんな物かな?
「よし、皆……気合い入れて行くぞ!」
『応!!』
気合い十分な皆の声が響いて、光が辺りを包み込む。
◇
微かな浮遊感の後光が薄れ、土の地面に降り立った。
場所は城の外壁の外側。
広く拓かれたその場所には、中同様無数のドール達が犇めいていた。それも青い石のドールだ。
直ぐ後ろに森と小道があるが、そこはフィールド制限によって区切られており入る事が出来ない。
見上げた外壁には幾らかの兵器の砲口が並び、戦いの時を今か今かと待っている。
どうやら、色チケットの段階では戦場全てが範囲内と言う訳ではなく、フィールド制限付近は範囲の外とされているらしい。
兵器の射程では普通に届くので、それを操るドール達の反応範囲が縮められていると言う事だ。
僕は皆に手を振ると、パッと消滅して空へ向かった。
ある程度の高空に立つと、地上を見下ろす。
早速、四方で戦火が上がっている。良く観察しておこう。
◇
見た所、外壁外の敵の平均レベルはおおよそ15だ。
無地のチケットが一桁代だった事を考えると、大幅な強化と言っても過言では無いだろう。
そんな連中と比較しても10倍以上、武器も合わせるとその数倍もの力を持つタク達を止める事はできず、火器の援護もどこ吹く風と殲滅を進め、1時間足らずで外の敵を倒し尽くした。
門番を倒し外壁に侵入した皆は、手分けして外壁内を掃討。そこに出現した新たな徘徊ボス。魍魎使いのゼムと魍魎のゼンを撃破した。
どうやら、ゼムとゼンは双子らしい。
死霊術師と死霊のタッグは、ゼンが魔力の刃で斬られてしまう為、最終的に憑依による合体で襲い掛かってきた。
近接戦闘向けでは無かった様で、ボスにしてはあっさり終わったが、本来なら死霊を切れないプレイヤー達には圧倒的な脅威であっただろう。
また、進退極まった状況での合体も良く無かった。
本当ならもっと追い詰められる前に合体して、周囲の死したドールの魂を呼び覚まし、生じた膨大なエネルギーを糧に色々と出来たんだろうけど……攻撃に使ったゼンと死霊術師の繋がりを読み取られたのがいけなかった。
まぁ、普通の人間クラスが相手なら、脅威としてはかなり高い。
そんなこんなで外壁内の掃除も終わり、いよいよ壁の中。
先ず猛獣使いのエラン、そして2匹に増え、ゴリラから大きな狼と獅子に姿を変えたゲッシュ。この3体が外壁上からの狙撃で逝った。
その後も魔法使いや弓士、銃士は上からの狙撃を続け、近接戦闘専門のメンバーが歩いて階段を降り、戦場に着く頃には半数を撃破していた。
こうして、いよいよ本丸への進撃が始まった。
効率性を重視した攻城作戦により、バラバラに分かれて進む皆は、易々と一層を突破。
このまま二層も突破するかと思われたが、リンカちゃんチームとオブザーバーのシロ、クンがやられた。
下手人は、強化アガーラともう一人の徘徊ボス。
小部屋で待ち伏せされたそれらに左右から挟み込まれ、アキちゃんが首チョンパ。更にノアちゃんが防御結界毎切り捨てられ、ヒヨリンが心臓を抉られて即死。
そこでようやく反応したココネちゃんが一合受けるも二の太刀で両断された。
即座にリンカちゃんの配下、ピィコが炎を吐いて牽制。アガーラが炎を貫いてピィコを首チョンパ。
一気に前に出たリンカちゃんの一突きを、アガーラは床、壁、天井を蹴って華麗に回避、反応出来ない猿飛さんが上下に分かたれた。
前後を挟まれたリンカちゃんは即座に長物である槍を捨て、アガーラへ徒手空拳で挑み、その一方でもう一体のボスの手によりカメ吉が踏み殺され、シャ助が斬り殺され、腕に噛み付いたニャニャミが頭を握りつぶされた。
そこでようやくシロとクンが参戦するも、常人離れしたアガーラの三次元的集中回避に攻めあぐね、もう一体の手によりリンカちゃんが背後から斬り殺される。
リンカちゃんも、背後からの殺気を感知して飛び込む様に避けたけど……壁毎切り裂く様な大太刀とそれに纏わされた赤い斬気に切り裂かれた。
対面だったら分からなかっただろうが、挟まれた上に敵は一切の油断なく確実に殺しに来たから……まぁ、もうちょっと早く、瞬時に闘気を練れる様になれば勝ててたよ。
リンカちゃんが死に、アガーラの高速回避により挟み撃ちにされたシロとクンは、視線を合わせる事もなく、即座に二手に分かれた。
シロはアガーラに、クンは体が大きいもう一体に。
実に合理的な判断だ。
クンの技量では室内のアガーラを倒すに足らない。シロならアガーラに対抗出来る。
もう一方は未知数だが、体が大きく、また廊下という一本道な為、銃を乱射すれば外す方が難しい。
即座にそう思考したか、或いは本能か、クンは銃を乱射しながら、アガーラVSシロの戦場から離れる様にもう一体に近付き、先ず一太刀、横なぎの一撃をスライディングしながら避ける。
ボコスカ撃ち込まれる弾丸をモロに浴びた敵は、しかしクンの予想に反して一切怯まず、股下を潜り抜けようとしたクンに馬乗りになってその細い首を握った。
クンは即座に練っていた闘気を膝に込め、渾身の力で敵の背を打った。
それに加えて銃を乱射するも、敵はその全てを意に介さず、衝撃に巨体を揺らしながらクンの首を握り潰した。
……まぁ、仕方ない。そいつは元々がオートマタで、ドールになって痛みなんか無い筈なのに怯むエランやゼムとは訳が違う。
そしてオートマタの素材は鬼人なので、強靭な身体性能を持ち、その上で剣士として長く生きた為剣術もかなりやる方。
相手が悪かったとしか言いようがない。
距離があればクンでも勝てただろうが、超近接戦闘は無理だ。
クンがあっさりやられてしまった一方で、アガーラの立体機動と互角に渡り合っていたシロは、凄まじい闘気と闘気のぶつかり合いの末……参戦したもう一体とアガーラの手によりきっかり3分後敗北。
両手を失い、足を切り捨てられ、牙を剥き、激しい激闘の末にアガーラの首を食いちぎっての敗北だ。
あそこまでやれれば正直十分だと思う。
その後、生き残ったもう一体、弑鬼のセロこと、クラウ一行の鬼人お兄さんはセイト一行と遭遇、オブザーバーのキリサメがその弾痕まみれな血塗れの体のセロを見て静かに激昂した。
銃を乱射して体の末端部を丁寧に破壊、半壊しながらも近付いて来たセロの腕を蹴り上げにより砕き、踵落としで胴を打ち、衝撃でセロを転ばした後、その頭部から心臓部に掛けてを執拗に銃撃した。
そんな番狂わせ的襲撃を乗り越え、皆は次々と城を攻略。最後の部屋で青地に金の装飾があるボスを倒し、イベントを終えた。
皆が頑張っている間、僕は折角なので城以外の壊せる物全てを破壊し回収した。
総合的な難易度は……ざっと、装備が整えられ、そこそこな練度のレベル50が50人は欲しい。と言った所。
アガーラが桁違いに強く、また立ち回りによっては魍魎使いはアガーラ以上の脅威になり得る。
何気に猛獣のゲッシュは数が増えてるし、エランの補助魔法を受ければその脅威度はグンと上がる。
単純な近接戦闘ならセロはかなりの脅威で、軍団でも有象無象ならセロの一太刀で数人は一気に沈むだろう。
徘徊ボスの戦闘力がボスを遥かに越えている。
今のプレイヤー達のレベルだと、平均値はおおよそ20にいかない程度。
これだと、色チケットをクリアするには……300から400は頭数が欲しいかな。
クリアまでに1割くらいは生き残れるだろう。
……それにしても、セロか……まさかオリジナルなのかな?




