第11話 しつけをしよう
第八位階下位
照れた様にはにかむミシュカ。
流石のレベルか目元の赤みはもう引いている。
ミシュカを籠絡したので、無事会議開催である。
拓いた竜寝殿の空き地に降り立ち、他の面々を召喚する。
呼び出したメンバーは、シテン。シャクナ。ヴィーナ。ニベル。ガルナ。アルトナ。ナオ。ガラド。ヴァザグ。ヴァルトラ。マリエナ。
トップクラスの竜達が並ぶ様は壮観である。
後はベルツェリーアを少々懐に忍ばせる。
真っ先に動いたのはシテン。
僕の前で跪き、首を垂れた。
『幼き神よ、お戯れはおやめください』
何の事かと思ったが、視線が僕のお腹の辺りに向いているので、ベルツェリーアを懐に入れてる事だろう。
何か試されてるとでも思ったのかな? 取り敢えず取り出す。
ベルツェリーアがポンっと現れると、その系譜に連なる者や強き者達が一斉に跪く。
……ナオとマリエナは遅れたけどね。
僕はインベントリから例の宝珠を取り出した。
「それじゃあベルツェリーア。この宝珠を使って竜寝殿の統率をしてもらうけど、良いかな?」
『元よりそれは妾の務め。我等が神よ、その任、確かに任された』
こう言う所、ベルツェリーアは良く出来た人だよね。
トップが従う姿勢を見せる事で下々もそれに倣う。鈴守でもやらせてる奴である。
僕は微笑みながら頷き、次にシテンと向かい合う。
「シテンとミシュカはベルツェリーアの補佐をしてもらう」
『はっ! 仰せのままに』
「へ?」
シテンの声に半ば掻き消されているが、背後のミシュカがギョッとしているのが伝わって来る。
シテンはともかくと言った様子で、他の竜達の視線がギョッとしているミシュカに集まった。
「……因みにだけど、シテン。イヴ・ハルモニアの事は知ってるよね?」
『はい。無限の叡智を持つ機械の神ですが、ベルツェリーア様と共に邪神と戦い……お隠れになられたと聞いています』
「この子はそのイヴ・ハルモニアの娘みたいな物だ」
『やはり、そうでしたか』
「へ?」
知っているなら話は早い。
「この浮島についても?」
『イヴ・ハルモニア様に所縁のある物だとは思っておりました』
「神血についてはどこまで?」
『存じ上げませんが、大気を漂う精霊に似て非なる力の存在を感じます』
「ナノマシン。目では見えない極小サイズの機械がこの島を動かしてるんだ。その大元がミシュカの血中に満たされている」
「へ?」
『神の血が流れていると?』
「そう言う事だね」
『成る程。委細承知致しました』
改めて、シテンは同僚と向かい合う。
さっきからへ? しか言ってないミシュカは困惑気味に鏡の竜を見上げた。
『……貴女が、子等を守り、育て、導いてくれたのですね』
「へ?」
「そうだよ」
「え?」
正確にはミシュカ・イコルがだけど、ミシュカがやった様な物だからね。
ミシュカはもうちょっと内なる己と会話した方が良いよ。
「彼女について、マリエナはどう思う?」
『っ!?』
突然話を振られたマリエナは、他を差し置いて何故私っ!? と激しく動揺している。
他に促される様にミシュカをじっと見詰め。
『……確かにこの気配、覚えがあります。迷宮の構造、敵の動き、多くの事に違和感がありましたが……貴女が我々を守ってくれていたのですね』
ずいっと近付く巨体にミシュカは怯む事なく、ただ覚えのない感謝に困惑している。
シテンが一歩前に出ると、マリエナはホッとした様子で下がった。
『貴女の無償の愛に感謝を。この礼に必ず報いると我等が神と神獣ベルツェリーアに誓います』
『うむ、確かに見届けた』
「恩に思った分だけ返すと良い。ミシュカは過剰だと思ったら好きな方法で返しなさい」
「う、うん」
コレで上下関係は出来た。あくまでも竜連中の感覚的な問題だが、トップのベルツェリーア。リーダーたるシテン。恩のあるミシュカ。それらが全員従う僕。
コレは従わざるを得ない。
「それじゃあ早速、君達の今後について会議を始めようか」
竜達の緊張が高まった。
◇
竜寝殿の最も大きな問題は、外縁部にあった。
簡単に言えば、重い奴が来ると崩落するのだ。
だから亀竜の親分であるガラド・バハードが来た時なんかは、みんな森林部が消失するんじゃないかと気が気で無かったとか。
まぁ、地下に迷宮が広がってるからそんな事にはならないけどね。
とは言え、最外殻に崩落する部分があるのは間違いないので、しっかり整備した。
形状はイェガと同じ半球状。外壁は厚く巨大で、亀竜が乗っても問題ない。
そんなニュー竜寝殿の内部は、およそ5つのエリアに分かれている。
森、草原エリア。湖、海エリア。荒地、砂漠エリア。火山エリア。そして中心の……ごった煮エリアである。
中心は主に幹部の家なので、混沌とした状態になるのは致し方ない。迷宮化させて空き地を大量に確保しているので、皆どんどん強くなって良いんだよ?
また、竜寝殿内部の迷宮も整備した。
広い入り口に広大で餌が豊富な内部構造。既に登録されていた程々に強い亜竜の配置を行う事で後続の訓練が出来る。
各種耐性を付ける為の訓練ルートも複数用意したし、メタリオン家用の道場とか水竜系木竜系等々の訓練施設も設置した。
他に何か意見や使ってみての問題があれば、シテンやミシュカ、ベルツェリーアと話し合って欲しい。
竜寝殿の整備とその役割の詳しい説明を行いつつ、並行して竜達の詳しい調査も行なった。
詳しい調査と言っても、解剖とか分解とかそう言うレベルの物ではない。
総合的には、中々面白い収穫があったと言える。




