第8話 白の知恵
第八位階下位
中庭の殲滅を終えた僕等は、疲れ切っているリナとアマネに疲労しているキリサメとノアちゃんを護衛と言う名目で中庭に残し、六手に分かれて外壁の探索を行なった。
入り口から侵入し、イベントマップを参考にして1人が外壁を半周、反対側でペアと落ち合い、次の階の仲間と合流する至って単純な探索方法だ。
待ってもペアが来ない場合は、下階の仲間を待つか上階に向かって報告したのち、ペアを迎えに行く。
2人とも来なかった場合は、残りの4人で当該エリアに向かい、外敵を排除する。
その後4階を二手に分かれて探索し、そこで何も無ければ屋上に向かう。
既に他のチームが探索済みだと思われるので、専ら残党狩りと合流が目的である。
そんなこんなで探索を始めた。
外壁内には特に小部屋等も無く、外側に向けて幾らかの投石器やバリスタが設置されている以外は特に気になる物はなかった。
しかしまぁ、上位のチケットではこれらがプレイヤー達の頭を粉砕し腹を撃ち抜いて地面に磔にするのだと思うと……悲惨。
何名かは対抗し得る力を持つと思われるが、それでも悲惨である。
さっさとペアのミサキと合流し、特に何もなく他とも合流して4階に向かった。
4階も残党は影も形も無く、最後に向かった屋上で、ケイ、ユリちゃん、アキちゃん、マヤ、メィミー、シロ、ミカ、シハルの8人と合流した。
皆同程度の疲労度なのは、シロの采配あっての物だろう。
ボス級ユニットがいなかったのも大きい。
その後、少し回復したリナ達と合流し、各所にいる残りの門番兵を殲滅、城内部へ進出した。
◇
バラバラに分かれ、既に駆逐されている城の一階を探索した。
城内は、長い廊下と幾つかの広間、階段ホールに複数の小部屋からなる、城というよりも迷宮と言うのが相応しい構造だ。
指揮頭は通常ならリナだが、現状を加味してシロが筆頭に立ち、分かれ道毎に別れる方式で探索を始めた。
流石にアヤやリンカちゃん、タク、チサト、セイト達が探索しただけあり、取りこぼしは殆ど無かった。
その唯一の取りこぼしが、地下室である。
そして奇しくも発見したのは僕とシロ、2人だけの時だった。
……一度素通りした所だったのでとても怪しいが……少しの隠密術式で隠されている階段だったので、何とも言えない。
取り敢えず行ってみると、そこにあったのは広間と大扉。
「……あれらを倒すと良い様ですね」
「そうだね」
その大扉の左右に、4メートルはあろうかと言う大きな木像が立っていた。得物は、斧と槍だ。
レベルはおよそ30前後と言った所か。アガーラと比べれば弱いと言わざるを得ないが、脅威と言えば間違いなく脅威である。
「ここは私が行きますね」
「行ってらっしゃい」
「ツキはここで見ていてください」
「……見てないとダメ?」
「ダメです」
……やっぱりそれが狙いなのかな? 皆僕に見せたがるんだよね。色んな事を。
シロは剣を抜き、特に気負う様子もなく歩き出す。
稼働範囲内に入った様で、門番が動き始めた。
先ず最初に射程に入った事で、心臓目掛け突き込まれた槍を、シロはレベル相応の身体能力で跳んで回避。
槍の刃の上に乗り、斬属性を宿す剣を華麗に一振り、槍はただの棒になった。
音もなく着地し、続いて斧の射程に入るや、振り下ろされた斧を軽く回避。華麗に剣を一振り、斧はただの棒になった。
そのまま襲い来る棒を木の葉の様にひらりひらりと躱し、軽く跳躍して先ず元槍持ちのコアに剣を一突き。
剣を通じて放たれた打属性の闘気がコアを粉砕した。
哀れ残った斧持ちもコアを破壊され、門番達はあっさり眠りについたのだった。
「さぁ、ツキ。行きましょう」
「うむ」
エスコートする様に差し伸べられた手を取り、開き始めた扉を潜る。
中にあったのは、部屋の割に小さな祭壇。
大きな広間の奥にある祭壇の上には、ピラミッド状に積まれた6個のインゴット。素材は銅。およそ1kが6個だ。
それと、青、赤、緑の小さい石がついた指輪、ピアス、腕輪がある。
それらは一目見た瞬間に消滅し、シロのイベントインベントリに入った。
……入手に際する貢献度で自動分配されるのだろう。
「……うーん」
「……」
僕の手を取り、入手した指輪を見比べるも、悩んだ末にインベントリに仕舞った。
「ユキちゃんにこんな安物は似合いません」
「分かってるね」
そう言うこまめな好感度稼ぎが鈴守繁栄の一助となるのだ。
……僕にやっても意味ないけどね。後ツキだし。
「因みに全部EPに変換する?」
「……腕輪は残します」
「分かってるね」
腕輪の石だけ風属性の魔石だからね。小さくても含まれる魔力の質が高い。
「下級の魔法を刻んでみよう思います。何が良いですかね?」
「ちょうど良く魔剣だし、剣に風属性を付与出来る様にしたら?」
「攻撃系なら一通り知ってますけど、付与術式となると……」
「属性魔力を注入するだけだから簡単だよ」
「ふむ……魔剣なら魔力保持も……確かに、通常の武器と違って可能。問題は石の方の容量が少ない所ですね」
「長時間維持する方向性だと不足するだろうけど、一撃のみなら十分な威力になるんじゃない?」
「成る程……でもそれだと瞬間的な負荷に対して魔石の方の魔導耐久力が不足するのでは?」
「それこそ術式刻印の腕の見せ所じゃない? 最悪魔石を追加購入するのもありだし、消耗品と割り切るのも良いと思うよ」
「うーん……精密性、物質耐久に魔導耐久、術式耐久から考えて……消耗品にします」
「いらなくなったら買い取ってあげる」
「いえ、お構いなく。その時までには更に改造出来る様になっていますので」
うん。シロ、優秀。
教え甲斐があるなぁ。爺様の気持ちが良く分かる。僕も僕に教えたいよ。
そんな事もありつつ、地下の探索。一階の探索を問題なく終え、僕達は更に上階へと向かった。




