第10話 バーベキュー
第四位階上位
配下の皆に守備を任せ、僕は広間のソファの様な物の上に寝転ぶ。
中庭ではタクが布を用いて剣や鎧を整備している。だが僕が見た限りだと、剣にも鎧にも浄化と自動修復の魔法が施されているので整備の必要は無い。
一方キッチンではアランが色々な後始末をしている。
「ああ、アラン、包丁とかはそこの壁に突き刺せば綺麗になるよ?」
「は? 突き刺すって……いや、やってみよう」
そう言ってアランは石壁に包丁を突き込んだ。
リッドに命令してあるので、包丁は壁の中にズブズブと吸い込まれ、完全に見えなくなった後にまたズブズブと吐き出された。
「……綺麗になってら……」
「じゃあ僕ログアウトするね」
「おう」
そう答えつつ、アランは他の調理器具も壁に沈めている。
とっても奇妙な光景だね。
「それじゃあ白雪、僕はしばらく寝るから、白雪は好きな事をやっててね」
「わ、分かったわ……好きな事……」
どうしてか男子部屋のベッドでログアウトしようとしたらセイトに追い出されてしまったので、リビングでログアウトするのである。おかしい。
「クローズゲート」
◇
意識が切り替わると耳に届くのは雨の音。
雨の日は不思議と寂しくなったりする物だが、アナザーでは皆一つ屋根の下にいると思うと却って楽しくさえ思う。
階段を降りると、アヤが既に夕食を温めていた。
……そう言えば皆、料理している時にリアルの呼び方で呼んでしまっていたが……気が緩んだのかな?
「アヤ、ありがとう」
「うん、どう致しましてっ。じゃあ食べよっか!」
夕食を食べ終え、寝る準備を済ませる。
雨の音を聞きながら早速ログイン。
「オープンゲート」
◇
集合時間よりも早くログインしたので、他の皆はまだログインしていない。
バーベキューは中庭でやるので、その準備をしておこう。
「『魔力譲渡』」
「みゃ!?」
白雪は食いしん坊なのかな?
「おお、ユキ、早いな」
「そういうアランはもっと早いよ?」
中庭で机やら椅子やらを作っていると、直ぐにアランがやって来た。
最後まで残っていたのに僕の次に来るとか早過ぎである。
アランも交えて準備をし、その間にも皆は続々とやって来た。
日が完全に沈み、しかし明るい中庭。
修理した灯り石の仄かな光と、アランの用意したキャンプファイヤーの光で、即席にしては良い感じである。
皆それぞれ飲み物を持ったので、音頭を取る。
「それじゃあ皆、今夜は大変だけど、楽しんで行こう! 乾杯!」
『乾杯!』
飲み物はタクとアランがお酒。それ以外が果汁水等である。
僕もお酒はいける口だが、何故かタクやアヤ達に必死に止められたので仕方なくアルルの果汁にした。
ちなみに、この果汁やお酒もアランが買っていた物だ。
早速、アランとタクがセイトに絡んでいる、酔っ払ってる訳でもあるまいに。
「おい、セイト、酒は飲まねぇのか?」
「いや、僕は未成年だし……」
「それ言ったら俺も未成年なんだが……」
「細けぇこたぁ良いんだって、折角ゲームの中なんだからよ! 多少やんちゃしたって誰も咎めねぇさ、なぁタク!」
「そうだぜセイト、ゲームの中で武器振り回してんだからゲームの中で酒飲んだって良いだろ?」
「……確かに、そう言われてみればそうだな……うん、わかった、折角だから飲んでみるよ!」
「おうおう良いねぇ! ほらぐいっと行け!」
セイトが落ちた。
どうでも良いが、イケメンが集ってると中々絵になる、記念に一枚。
バーベキューファイルを作ってそこに保存する。
また、一方では、双子がマヤに張り付いているのが目に入った。
「マヤちゃんマヤちゃん! お肉、はい、あーん」
「あ、あーん」
「マヤちゃんマヤちゃん! お野菜、はい、あーん」
「むぐ、あーん」
まるで雛の世話をする親鳥の様だが、単純に楽しんでいるだけだろう。まぁ、楽しいのなら何よりである。
「はむ、ん〜! おいしいですねぇ〜お肉」
「な、なるほど、肉は良く食べる方なのかい?」
「はい〜、お肉好きですよぉ〜?」
「や、やっぱり肉なのね……わ、私も一杯食べればそれくらい大きくなるのかしら?」
「私は私自身がこんなに大きくなるビジョンが浮かばないよ……」
「ん〜? どうしたんですかぁ?」
「「な、なんでも無い……」」
この三人は野菜の下処理の時に一緒だったので仲良くなったみたいだ。
「ミュウ、好き嫌いはいけませんよ? アヤちゃんみたいになっても良いんですか?」
「そ、それはそれで……」
「……良いかも知れませんね……でも、トマトを食べれないのは克服した方が良いです」
「うっ……うう……」
「唸っても駄目です、はい、あーん」
「うぅ、あ、あーん」
「ふふふ」
ユリちゃんは百合なので、親鳥と言うよりももっと別の物に見える。
ミユウは真面目な性格だが、実は身内の中で一番好き嫌いが激しい。
子供が嫌いな物は大体嫌いで、本人はそれを気にしている。
「あなた、白雪って言ったかしら」
「だ、だったら何よ!」
「よろしくね、白雪さん」
「うっ……よ、よろしく」
「私もよろしくね! 白雪ちゃん!」
「う、うん」
センリとユウミが改めて白雪に挨拶していた。
交友の幅が広がって行く様を見るのは、いつでも楽しい物だ。
「おにぇちゃん! お肉食べよ!」
「そうだね、いただきます」
「焼きトマト♪ 焼きトウモロコシ♪ カーボチャ♪ タマネギィ♪ お肉も良いけどお野菜もおいしいねぇ!」
「ふふ、キャベツもあるよ?」
「あーん」
「はい、あーん」
「むふふ♪」
◇
楽しい時間はなんやかんやで進んで行き、皆が満足したところでようやくメーンディッシュ。
肝試しである。




