第30話 いざ、解体ショー
第八位階下位
ただ僕がやるだけでは勿体ない。
幸にして星珠の皆は殆ど消耗していないし、僕は色々あったが3割程度の消耗率。
まだまだ十分余裕はある。
折角なので、白蛇君の新旧対決と行こうじゃないか。どっちが新でどっちが旧かは判然としないが。
死と夢の2つの星珠を起動、両手に絡まる黒蛇君と白蛇君の援護をさせつつ、僕自身も2人の魂にアクセスする。
後は、星珠の援護を受ける2人を引き連れ、魔覚の領域へ飛び込むだけ。
さあ、偉大にして強大なるオリ白蛇君の解体ショーだ。
◇
外部に露出している角を通じて、オリ白蛇君の魂と接触、その内部に侵入する。
差し当たって取っ掛かりを作るべく、オリ白蛇君の角部分に当たる魂魄を破壊した。
龍角であり、尚且つ何らかの神性を受け継いでいると目される光の双角は、オリ白蛇君の中では三指に入る強度だっただろう。
抵抗力は凄まじく、単純な密度による防御性能は流石の一言。
配下には任せられないので両方ともしっかりへし折っておいた。
奇襲だから楽だったと言うのもある。
破壊された双角の魂魄は丁寧にすり潰し、白蛇君に与えた。
同じ物を持っているのだから、当然全て許容出来ている。
此処を前哨基地とし、次なる目標に攻撃を開始する。
広がるのは、白い世界。
オリ白蛇君の心象世界だ。
敵にここまで深く乗り込むのは初めての事だが、やる事は侵略や支配、誘導と同じである。
既に角は奪取した為、背後を心配する必要がない。
白い虚空からじわりと無数の白蛇が現れた。
——抵抗力の具現だ。
反射の類いと言って良い。あまりの事態に反応出来ていないのか、単に力を温存しているのか……まぁどちらでも良い。
『ゆけ、白蛇君!』
僕の指示に、白蛇君はぴょんと飛び出し、白蛇の群れに襲い掛かる。
白蛇君はキットの援護を受け、夢の力を宿す虹の牙を振るう。
一方無数の白蛇達は、本格的な抵抗の意思を持たない為、反射的に白蛇君へ牙を向くも、全くダメージになっていない。
それどころか、白蛇君を敵としても認識しきれていない様で、寧ろ完全に因子の異なる此方にばかり襲い掛かってきている。
それらの雑魚を片手間に処理しつつ、オリ白蛇君の中を観察してみる。
『ふむ』
やはり、思った通りだ。
本来肉体に宿る魂魄は、魂という本体と地続きだ。体に魂を行き渡らせ、自在に肉体を操る一方、失われても魂自体に大きなダメージは残らない。
しかしこのオリ白蛇君は、緑の瞳の力を使い、肉体に宿る自分の魂魄を培養増殖させ、巨大な魂群を構成していた。
クラスタを生成する群体生命体と同じだ。
群体生命体と違うのは、全てが同じ魂を根源としている点。
パフィ子の様な群体生命体は、因子の一部をベースにして新たな魂を肉付けして分体を生成、個々が集まり旗頭の元協力している。
しかし、オリ白蛇君は個々として独立しているのに個々が無い。それは、オリ白蛇君が自分の魂を増やして新たな魂を作っているからだ。
構造的にはアリスの独立型三重魂魄に近いと言える。
ハミリオンインペリアルを倒した時は、抵抗力を延々と轢き潰して回収していたが、オリ白蛇君は少し大きな魂魄の塊を潰して回らないといけないだろう。
白蛇君はコツを覚えた様で、パカっと口を開いて吸引する様に白蛇の群れを吸収、分解している。
このまま本体が出張って来るまで待機していても勝てるだろうが、折角なので乗り込んで行こう。
◇
虚空を歩み、現れた何体目かの大蛇をちゅるりと飲み込んだ。
『そろそろだ』
そう呟いたのと世界が緑に変質したのは同時だった。
僕は一つ、こくりと頷いた。
『逃げたな』
そこはオリ白蛇君の瞳に該当する魂魄内。
しかし、最重要である緑の瞳の力は残っておらず、その残滓だけが存在していた。
オリ白蛇君の本体が、器と己との縁を絶ったからだ。
おそらく頭部近傍にオリ白蛇君の本体の魂はない。
過去もそうだったが、彼の蛇は危険な物から逃げるのが上手い。
緑の残滓を瞳に宿す巨大蛇に白蛇君の牙が突き立てられ、暴れる大型分霊を存外あっさり吸収する。
まぁ、所詮は分体、本体である白蛇君に叶う筈も無し。
分解吸収にやや演算力を取られているが、折角の緑の残滓を白蛇君に吸収させない手はない。
両目ともしっかり食べて貰おう。
◇
程なくして、頭部の制圧が終わった。
次の目標である魔石と、その直ぐ側にある竜玉を襲いに行くも……。
『……また逃げられたか』
そこには瞳同様残滓しか残っていなかった。
オリ白蛇君の性質を強く持つ巨大蛇と、竜性の強い巨大蛇を黒蛇君に始末させ、白蛇君に食べさせる。
多数の魂魄を支配下に置き、白蛇君がどんどん強くなって行くのは喜ばしいが……各個撃破出来なかったのは残念で仕方ない。
……と言うか、本来魔石や竜玉と言う物は物理的な魂魄と言うべき代物であり、マテリアル、スピリチュアル、アストラルを同時に侵略する今のやり方だと、それを逃すのは非常に困難な筈だった。
多分緑の瞳による肉体支配の力を使ったのだろう。やっぱりオリ白蛇君は凄いな。
取り敢えず、本体が出て来るまではこの調子で進もう。
狩りをするのは黒蛇君、食べるのは白蛇君。
構図がアレだが、黒蛇君も魂魄の戦いを経験して成長出来るので、文句はないだろう。




