第20話 竜の眠る地
第八位階下位
省エネモードに移行したウルルを抱き上げ、暫く満足するまでもしゃもしゃし、浮遊島改め竜寝殿中央へ戻る。
僅かな交信もとい神応を経て、情報収集を行なった結果、この竜寝殿が抱える大きな問題と因縁が明らかになった。
事に当たるに際して、配下の皆の状況を確認しよう。
特に気になるのは……ペルセポネかなぁ。
詳しく見た感じ、ペルセポネは間違いなく神の領域に足を踏み込んでいた。
僕がその実力を知る神は少ないが、仮にあの時の死神が最低位の神を模していたのだとしたら、ペルセポネは正しく神に違いなかった。
ペルセポネが行使した『神話降臨』は膨大な神気を呼び寄せ自領域を展開する術だ。
その詳細は……不思議の世界で体験したあれ、白虹の世界とほぼ同じ物。
それは行く当て無き信仰の吹き溜まり。
あの日僕が歩み、シュクラムが日常的に散策し、今日ペルセポネが展開したそれは、言うなれば『神域』。
励起された神気で構成され、神権を持つ者が支配する、正しく神の領域。
ペルセポネは自前で生産した神気を器に溜め込み、入り切らなかった分を放出していた様だが、今回はそれ、何処かしらに蓄積されていた神気をごっそり召喚した様である。
ただし、見た所ペルセポネはそれを呼び寄せるのに相当な精神集中と演算力を要したみたいだし、呼び寄せられた神気の量も夢のそれと比べると随分少ない。
……まぁ、夢の神気は他と比べて非常に柔軟性が高いので、あまり比べられる様な物でもないが。
その後の『神話降誕』は器に入り切らなかった神気による能力ブースト、いわゆる神降ろしや神懸かりを自己に付与する術。
『神話創造』は神気を用いた現実の改変現象、もとい創世含む神術の類いを、信仰を変える事で自在にコントロールするペルセポネ独自の妙技だ。
ペルセポネはパフィ子と黒霧の群体生命、精霊帝や原典保持者の信仰と神性等々から得たデータを元に作られた、神への最適解を体現する現人神。
10日分の準備期間を経て、早速芽が出た様である。
このまま自己進化を続けて、僕にユニークな世界を見せて欲しい。
次はディルヴァ。
ディルヴァは、邪神竜・アジ・ダハーカを倒した報酬で入手したアジ・ダハーカの魔石を与えてある。
あの邪神竜・アジ・ダハーカと比べると性能が大分劣るので、おそらくスタンダードタイプのアジ・ダハーカの情報とエネルギーを秘めた模倣魔石だと思われる。
だが、それだけあれば十分。ディルヴァは魔石を取り込み、その力を己が物としつつある。
最後のアレ……終末世界? アレは凄いね。
系統は単純なブレス。基本性質である火の属性神気を支柱に、最も適性の高い闇の神気を肉付けし、何重にも形成した術式を通してそれを完全にコントロール。
緋蟒竜・ナオ・ユーロンを倒す為、貫通性よりも拡散性に重点を置いたブレスを作成し、体内をこれでもかと蹂躙した。
一方ディランとディラナの放ったブレスは、以前僕が与えた腐竜王と竜王のブレスレットの力が強化された物だ。
頽廃世界が腐竜王の侵食と腐敗の力を宿したブレス。崩壊世界が竜王の火と破壊の力を宿したブレス。
どちらも既に竜王の領域にはなく、神気を宿したそれはやろうと思えば天帝竜クラスの一撃にも比肩する。
今回はディルヴァの技名を言う為に力を抑えていた様だが、2人分の力なら十分緋蟒竜のブレスを突破出来た筈だ。
……何気に緋蟒竜も半野生の癖して修行を付けた僕の配下に匹敵するから…………ミスティと氷白なら負けてただろう。白雪、ネロ、ミュリア辺りなら互角と言った所か。
件の白雪と氷白は、シアチとスカジの演算補助と神気を行使して、レベル600代の水竜姉妹を圧倒した。
相性的に見て、ペーリアンティエの姉妹やニベルも白雪と氷白のペアならそう苦戦する事なく撃破出来ただろう。
展開された氷神装は、魔術で構築された魔導鎧と言える代物で、攻撃、防御其々を半自動化する事で持久力、瞬発力双方を強化している。
凍氷封印は基本の鎧の他に用意された盾を利用する技で、複数の術式が描かれた板状の盾から鎖を射出、拘束した敵を囲んで捕らえ、氷結の神気を送り込んで凍り付かせる。
迂遠だが瞬発力を必要としない為コスパが良く、やり方を変えれば格上にも十分通じるだろう。
ただし、対象が大き過ぎる場合は難しいと言える。
他、ルムの光と闇の複合剣。レイエルに渡した清水大聖心虹雫による聖水魔術。ミュリアの一極型神聖魔術。それからネロの黒炎にリオンやミルちゃんの武威。
中々に見所の多い戦いだった。
捕らえた竜達には回復するまでお休みして貰う。
天帝級一歩手前の竜帝と戦った者達は、相応の大きな消耗がある為撤退。
氷白、白雪、桃花、ルムの4人は残りの竜達の掃討。多少余力のあるミルちゃん、ルクス君、ネロ、サンディアは先に目的地へ向かって貰っている。
他、満足に動かせる戦力は、ウルルとメロットくらいか。
爺様、デュナーク達4人には別口でやって貰う事が出来た、と言うかこれから出来るであろうと予測されるので、先ずは目下の大問題を処理しよう。
これからこの竜寝殿を襲うであろう、帝級や天帝級の亜竜対策だ。




