第19話 絶技の剣聖
第七位階上位
『ウルル、出撃を許可します』
黒霧の許可が降りると同時に戦場へ飛び込む。
薄くなり始めた雲を突き破り、真っ先に誰の相手もしていない大物を叩き潰した。
ユキの匂い。ユキの匂いがします!
辺りを探って見るけれど……よく分からない。
取り敢えず邪魔者を排除してみる事にした。
◇
ガルナ・カーデイはアルフレアが倒した。
ニベル・アナンはミスティが主に戦った。
アルトナ・ペーリアンティエはドラミールが討ち落とした。
ヴィーナ・エングラハはニュイゼが打ち破った。
ガラド・バハードはリオンが倒し、それと似た匂いがするヴァザク・バハードはミュリアとレイエルが戦っている。
巨大なナオ・ユーロンにはディルヴァが向かった様だ。
辺り一帯の大物は狩られ、幾らかの大物がいると目される迷宮には余力のある皆が入っていった。
わらわらいた竜達も大半が駆逐され、ようやくユキの残した痕跡を見つけられる様になった。
希薄なユキの残滓を追って、島の中を駆ける。
巨大な建造物に入り、白い街を駆け抜け——
——剣と爪が切り結ぶ。
鋭い斬撃を避け、弾き、打ち払う。
数度の交錯を経て、振るわれた尾大剣の一撃を蹴り飛ばす。
あ、今ユキの匂いがした気がする。
『遂にここまで来たか侵略者めっ!』
この先にユキがいるのでしょうか? 邪魔だからさっさと倒してしまいましょう。
ユキに教えて貰った通りに、神権を呼び起こす。
『む、これは……!』
『ウルルが神権を行使しました。只今より狼、月の神権は使用不可となります』
内から吹き上がる様に、強大な力が溢れ出す。
いつもの様に、思考が加速する。
世界がゆっくりと流れ出す。
地面を蹴った。
全力はコントロール出来ない。でも、その4分の1程度ならどうとでも出来る。
叩き潰して噛み砕き、ユキに追い付く。
正面から飛び掛かり——
——先と同じ様に切り結んだ。
『秘剣が一、天理剣』
神気を宿した斬撃を爪と牙で弾き、身を捻って躱す。
躱しきれない斬撃が硬属性の防御を貫き、少しの鮮血が舞った。
連撃の隙を補う様に振るわれる尾剣、それに加えられた翼剣を強引に蹴り、弾き飛ばす。
『秘剣が二、飛揚剣』
背後に飛びながら、剣の竜は斬撃を飛ばした。
指剣、腕剣、尾剣、翼剣から飛来したそれを避け、力の4割を出して懐へ滑り込む。
『っ! 秘剣が五、甲刃剣』
ここまで入れば後はぶちかますのみ。
力の8割を解放し、網の様に連なる斬気を貫いて、腕から血を吹きながら剣竜へ爪を突き立てた。
剣竜が甲殻の破片を撒き散らしながら吹き飛び、壁に衝突して動かなくなる。
それと同時に、此方もがくりと地に伏せた。
瞬く間に血溜まりが出来上がる。
最後の交錯、挟み込む様に迫る腕剣と翼剣を防ぎきれなかった。
神気を流用して硬属性を強化する事でどうにか止められたが、普通の防御だと上下に真っ二つにされていただろう。
危ない所でした。
神気操作を応用し、傷口に残る剣竜の斬気を払って傷を再生させる。
直ぐに立ち上がると、ユキがいると思わしき中心部へ歩き——
——飛来した斬撃を回避した。
『ここは、通さぬっ……!』
甲殻は砕けたまま。
血を吐きながら、そこだけは無傷の剣を振るい、剣の竜は立ち塞がる。
『剣聖が一、至天剣っ!』
カッと光が瞬き、剣竜の指剣と鼻先の剣が消え、一振りの剣が現れる。
剣が大上段に構えられ——
『神技、断絶斬——』
——斬撃は放たれた。
何物をも断ち切る様な一筋の斬撃。当たれば魂を断ち切られかねない即死の剣。
その延長線上から避けた所で、小さな影が現れている事に気付く。
「それはちょっと良くないなぁ」
何でもない事の様に呟き、小さな影は手を振った。
それだけで、斬撃が溶けるように消滅する。
何が起きたのかわからないけど、尻尾は勝手に動きだす。
「ありゃ、気絶してる……」
なにか気絶してるらしいけど、知らない。
「はっはっ、くぅ〜ん」
「よしよーし」
1匹倒しましたユキ。強いのも倒しましたよ!
「強くなったねぇ」
「くぅ〜ん、きゅ〜ん」
ユキぃ。




