第11話 油断禁物
第七位階上位
『アルフレアが神権を行使しました。只今より火の神権は使用不可となります』
アルフレアが戦場に飛び込んでまもなく、黒霧から情報が届きました。
アルフレアの奴、ユキから第一陣を指名されて調子に乗ってるんじゃないですか? いきなり実戦で神権を行使するなんて……功を焦ってるんですかね?
私が冷静に分析していると、何やらミュリアがニヤニヤと……ぶん殴られたいのですか?
「……殴りますよ?」
「あ、ありがとうございます!」
……馬鹿は死んでも治らない。つまり救いようが無いと言う事です。
「あぁぁ……! その目……愛してます……!!」
「…………もはや私が何をしても無駄だと悟りました」
そんな事より戦場の観察です。
抱きついて来ようとするミュリアの頭を潰すつもりで握り、送られる視覚情報を確認する。
アルフレアと赤い竜は現状ほぼ互角ですね。ちっ、これは神権を行使するのも致し方ないですね。
雲を統べる竜はミスティを主軸にディルヴァが少し援護している様ですが、旗色が悪い様に見えます。ディルヴァは他の竜へ果敢に攻撃している為援護が出来ていない。
後方から援軍が来ている様ですし、他の者等も雑魚共の妨害で思う様に戦えていない様子。
そろそろ行っても良いのでは?
「黒霧、私も戦場に向かいます」
『許可します』
「私も、私も行きます!」
『不許可です』
「なじぇ!?」
「ふっ」
愚かなミュリアを置いて、私はイェガから飛び立つ。
この溜まりに溜まった怒り、すとれすを戦場で発散してやります。
◇
雲を突き破り放火飛び交う戦地へと突入した。
ざっと見回した所、風の竜と雷の竜、それから陽光の竜が狙い目、フリーで——
「お、ドラミ、お前も来たのか!」
「あ゛?」
ちょっと不愉快な呼び方が聞こえた様な気がしましたが、気の所為でしょう。
ちょうど遠くから完全フリーな獲物が飛んで来ているのでそちらへ向かいます。
「お、確かにあれは強そうだな」
「ちっ……あれは私の獲物です。ザイエは別のを探しなさい」
「え? そう言う状況だったか!?」
「良く周りを見なさい」
間抜けなザイエにそこまで助言した所で、横取りされる前に獲物へ接近する。
私が翼を羽ばたかせるのと同時に、背後から雲の結界を貫き次々と強い気配が飛び込んで来たのを感じた。
……サンディア、ネロ、レイエル、ウルルとメロットまで……これは急がないと全部狩られ兼ねないですね……。
デュナーク達が積極的に獲物を狙わないのが幸いです。
全身に闘気を満たし、飛翔する。
私の殺気に気付いたか、青い竜は口腔に膨大な魔力を集約した。
ブレスですね。上等です。
全身の闘気を励起して、一直線に青い竜へ向かう。
正面から貫いてやります。
口腔の魔力が爆発する様にして、青い閃光が放たれた。
放出系は距離の壁で多少の減衰が起きますが、この距離と威力ならそう大きな低下にはならないでしょう。
地上一切を破壊し尽くせる程の青い閃光が目前に迫る。さぁ、ぶち抜き——
——刹那、白い閃光が弾け、青のブレスが四散した。
目の前に現れたそれを睨み付ける。
「……ルクス。何のつもりですか?」
『……』
私の問いに、ルクスはただ振り向き、じっと黙りこくる。
「……なんとか言いなさい」
『……』
本当にこいつは……! メロットでさえ一言二言声を発すると言うのに! ……いやまぁ、サンディアも喋りませんが。
青い竜が迫る中、ため息を吐きかけた次の瞬間、聴き慣れぬ声が聞こえた。
『……慢心は大敗に繋がり兼ねないとルクスは仰っています』
「っ……あなたがアシュレイですか」
『はい、ドラミール。声を掛けるのはこれが初めてですね』
まったく、ルクスときたら、自分の部下に言葉を代弁させるなど……ただの怠惰ではありませんか。
これはユキに代わって叱り付けるべきでしょう。
「ルクス、少しは自分で意思を伝える努力をしたらどうですか?」
『……無事か?』
「っ!?」
『っ!?』
しゃ、喋った……。
「ぶ、無事ですが」
『……』
言うや、ルクスはふいっと他所を向いた。
『あ、る、ルクスは万全な戦いをする様にと仰っています』
「はぁ……仕方ありません」
『で、ではまた』
六翼を羽ばたかせ、後方の戦場へ戻るルクス。
まさか本当に喋るとは……存外メロットやサンディアもちゃんと会話する事が出来るかもしれませんね。
迫り来る青竜に視線を戻し、改めて気を研ぎ澄ませる。
仕方がないので、魔典を取り出した。
ユキ化魔法は切り札なので取っておくとして、今は単純な強化系を使いましょう。
後は……竜の神権を行使しますか。
修行期間に何度も訓練して何度も気を失いながら身に付けた、神権の励起。
何の苦もなく、遅滞もなく、その力は鎌首をもたげる。
『ドラミールが神権を行使しました。只今より竜の神権は使用不可となります』
此方の力が跳ね上がると共に、敵も何か切り札を行使して来た様で、力が増大している。
……もし近接戦闘の最中それを突然やられていたら、大きなダメージを負っていたかもしれませんね……一応ルクスに感謝しておきましょう。




