第7話 竜寝殿
第八位階下位
お子様の群れから目を離してしまったダメな保護者達の代わりに黒霧を置いて安全対策を行なった。
気を取り直して、次の湖に向かおう。
森にいた強者達は戦場で激戦を繰り広げており、黒霧情報によると昆虫型や獣型の竜変種を確認したとの事。
是非竜化のサンプルとして色々採取したい所である。
さーっと移動しつつ、湖と湿地帯の竜の傾向を探る。
見た感じ、蛙や鮫、亀なんかの竜変種がいる。どうやら海水とか淡水とかは関係ない様である。
それらを観察しながら進んでいると、上空を竜が通過した。
蒼珠竜・アルトナ・ペーリアンティエ・シャズマリア LV708MAX
種族はサーナドラゴン。ガルナと同格の青竜だ。
エンシェントやエンペラー級に到達した色竜の正統進化。
元々色竜は種族の幅が広い傾向にある為か、ガルナやアルトナはその範囲内にいるらしい。
型にはまったと言うとなんだが、王道や定石はそれが最善にして正道だからこそ存在する。
幾千の先人が戦いの果てに残した無念と願いが、揺るぎない信仰となってそのルートを生み出した。それは正しく正道であろう。
後方で光が弾け、力がぶつかり合う。
いい感じに激戦を維持できている様で、僕としては万々歳である。
そんな事を思いつつ歩みを進め、目的地に到着した。
そこは湖の真ん中に出来た小島。
複雑に入り組んだ形状の浅瀬には、小さな青竜や水竜が戯れており、その地下には更に弱々しい気配を感じる。
地下への入り口は水中にある様で、一種要塞じみた防御力がある。
そしてそれらを守る様にして、1匹の巨大な水竜が潜んでいた。
深海竜・マリエナ・ペーリアンティエ・シャズマリア LV661MAX
種族はエンシェントアビサルドラゴン。名前から見て先程戦場へ向かった蒼珠竜の親類だろう。
体格は明らかにこちらの方が巨大で、体に見合う膨大な魔力を感じる。
水中型の進化をした水竜と単なる水竜にはこれくらいの差があるのか。
深海竜の方はクリカの部下に欲しいね。
龍の頭をした魚や足の付いた鮫、角と尾を持つ巨大蛙等興味を引く連中をスルーして、次のエリアに向かう。
少しの森を超え、辿り着いたのは乾いた荒野。
枯れ木の様な木や草に、風化した石塊。遠目には風穴らしき物が幾らか見える。
ざっと見回した限りだと、反り返った大角を持つ山羊や扁平な四足獣、蛇等、蔓延する極大の竜属性により変質した亜竜達がいる。
そんな荒野をゆっくりと進む巨大な影が一つ。
練巌竜・ガラド・バハード・ベルツェリア LV701MAX
種族はエンシェントアーストルティガン。竜帝クラスの亀竜だ。
一歩歩く毎に地響きが鳴り、小山の様な巨体を揺らしながら戦場方面へと進んでいる。
トルティガンと言う種の特徴か、灼岩竜同様に甲羅に砲の様な物が付いている。
このまま真っ直ぐ進むと森に突っ込むが、どうするのだろう? そう思いながら見ていると、不意に練巌竜が飛んだ。飛んだと言うか跳んだ。
巨体からは想像も出来ない大ジャンプで空を舞い、空中歩行系の能力を使って更なる跳躍、そして——地響き。
ズズンッと重い音がなり、浮遊島が僅かに、しかし確かに傾いた。
……やはり小型化や圧縮のスキルを使っていた様である。
微かな傾斜は忽ちに修正され、浮遊島は秩序を取り戻す。
……今一番被害があったのは湖だろう。なんて事を考えつつも、練巌竜がやってきた方向へと歩みを進めた。
進む事暫し、荒野を越え、岩場を越えて、直ぐに次の標的は見えてきた。
場所は砂漠地帯。そこには、先の練巌竜に勝るとも劣らない強大な力を持つ亀竜がいた。
塵芥竜・ヴァザグ・バハード・ベルツェリア LV702MAX
種族はエンシェントストームトルティガン。
動かない所を見るに留守番か。
この島の竜達は群れる事といい個々の力に慢心しない事といい、実に竜らしくない。
万が一の敵に備える体制が整っているのも竜らしくないし、必要に迫られない限りこう言う事にはならない様に思う。
……まぁ、レベル700ともなると、群れる事や知恵を回す事はイレギュラーとも言い切れないので気にする程の事ではないが。
戦場方面をじっと見詰めたまま微動だにしない塵芥竜をちょっと見回して、程々に満足したので次に向かう。
砂漠を駆け抜け、程近い溶岩地帯へと突入した。
地表に露出しているのにも関わらず固まる様子のない溶岩からは、迷宮の物と思われる力ともう一つの大きな力が感じられる。
その正体は不明だが、魔力に含有される敵対的な意思は薄いので……竜と迷宮ともう一つの力はそれぞれ敵同士でも味方同士でもないと言う事だろう。
そんな溶岩地帯には、主に火竜と亀と蛇が生息しており、岩漿を泳ぐ魚竜や蟹等も見て取れる。
そして、溶岩地帯のあちこちに見える赤くて長くて大きな物体が、この地の御留守番ドラゴンである。
緋蟒竜・ナオ・ユーロン・デルニュリア LV706MAX
種族はエンシェント・ヴォルガイユ・エンペラー。真っ赤な巨大蛇である。
部下に複数体のロードクラスが控えている様で、この地の守りは頑丈だ。
……高位竜は同種の眷属群を形成するとエンペラーが付くのかな?
気にはなるが、検証は捕まえてからにしよう。
あと行ってない場所は、少しの森と中央のみ。
森はともかくあちこちに乱立する結晶は詳しく調べたい所だが、先ずは中央の強大な気配を探りに行こう。




