第50話 vs.終焉の白 ※挿絵あり
第八位階中位
くすぐったい様な不思議な感覚の末に、光から零れ落ちる様にして意識が戻る。
かつて程の全能感がないのは、金の神の力が宿っていないからだろう。
そこは少し残念に思いながらも、玉座から立ち上がる。
「……何秒?」
白の少女は素早く順番に指を3本立てた。
……0.3秒か。遅いな。
まぁそこは慣れ次第でどうにか出来るだろう。つまり沢山練習が必要だ。
その際は何度もやっているメロットが最善……いや、サンプルの為に他の者でやるべきだ。
旗は防御膜。杖は魔術専門。玉座を鎚に変え、剣の隣に据える。
ティアラはそのまま、服を軽鎧へ変形させる。
……うむ、ピンクシルバーの髪とうさみみが可愛らしい。完璧だな。
装備の最適化を終え、改めて少女と向かい合った。
「……それじゃあ、行く」
「むふー」
ふんすふんすと鼻息荒く微笑む白き死と、戦いが始まった。
◇
初撃の奇襲式上段蹴りを腕で防がれ、剣と鎚は無数に発生した白い刃で防がれる。
続けて魔矢と念動力を繋ぎに拳の応酬。
弾けて舞う白い粉を都度焼き払い、小爆発を起こして着実にダメージを重ねる。
僕としては魔力量が相手の方が上なので、がっつり奪って行きたい所だ。
そんな思惑の元接近戦を続けていると、それは起きた。
「ほっ」
突如何の予兆もなく、白い少女のお腹から放たれた白い球。
ここぞとばかりに掴みかかる少女の手をはたき落とし、もにゃーんと飛来する白い球を紙一重で回避する。
いや、なびいた髪の一本に当たった。
そう認識した刹那——たった一本の髪から数本のキノコが生えて来た。
「きも」
瞬時に逆侵食をかけ、キノコを分解、吸収する。
掠っただけでコレとは流石の一言だ。
「ふにゃぁ」
気の抜ける声をだし、少女は炎熱を宿す蹴りを受けてコロコロ転がった。
立ち上がるのを待って、一言。
「……準備運動はここまで」
「ふにゅ〜ん」
次の瞬間、僅かな距離を一息に駆け抜け、白の少女と衝突した。
◇
激突の度に大気が揺れ、大地が捲れ上がる。
弾ける白い粉、もとい胞子はその量と質を増し、地上を侵略していた。
白い少女こと合体パフィ子は、侵食する白から力を得てパフィニョンボールを連射、世界を白に染めんと暗躍している。
——もはや地上はパフィ子キングダムだった。
しかし、それは敵に理するばかりではない。
魅了の魔眼を行使する事で、容易くキノコ達を支配下におき、溜め込まれた魔力を横取りする事が出来るからだ。
本体は接近戦をしつつ、魔法同士をぶつかり合わせ、一方では魔力の奪い合いをする。
どちらも優勢なのは此方だが、魔力量と言う一点において相手が遥かに勝っている為、地道に削って行くしかない。
「にゅにゅん!」
気合いの声と同時に、合体パフィ子から白いオーラが滲み出る。
触れればキノコになる恐ろしい力だ。
今やパフィ子達は僕の魔力に耐性を持ち、最初の頃の様な優位性はない。
魔力の密度、質が向上した結果だろう。
僕も成長しているとは言え、パフィ子達程の飛躍はしていない。
まぁ、そろそろ成長も頭打ちになる頃合いなので、追い付かれる事こそないだろうが、敵として見れば相当に厄介なのは違いない。
侵食する白に飛び込むのは得策じゃない。
火属性をぶつける事でその侵食を妨害し、大きく後ろに飛ぶ事で白の領域から逃れた。
白に飲み込まれた大地から、巨大なキノコが立ち上がる。
ちょっと強めなキノコだ。侵食力、吸収力、共に高い性能を持ち、此方の魅了に耐性がある、パフィ子専用補給拠点だ。
これは焼き払う他ない。
雨霰と放たれるパフィボールを距離を取りながら避け、パフィ拠点へ炎球を放つ。
着弾する直前——キノコが弾けた。
大爆発したキノコからは大量の胞子と欠片が飛散し、炎球による粉塵爆発から生き残った胞子が突風を受けて広範囲に蔓延した。
シュタっと降り立った合体パフィ子と、再度接近戦を行う。
◇
——世界は白に染まった。
それは宛ら終末の時。
山の様に聳り立つ無数のキノコ。
木々の様に乱立する無数のキノコ。
草の様に生い茂る無数のキノコ。
再構築を続ける世界から、キノコ達は無限のエネルギーを得て、果てしない増殖を続ける。
山キノコは時折思い出したかの様に笠から白い雨を振り撒き、木キノコは数秒に一度白い球を吹き出す。
これが、パフィ子達を地上に解き放つと起きる災禍。
——白き死。
大陸を喰らい尽くし、空を渡って海を越え、やがて世界の全てを呑み込む終焉の白。
星喰いを遂げる頃には、きっと白死の女王は神の領域に立っている事だろう。
それは未来視にも等しい確定した予測だ。
そんなパフィ子達を倒す方法は2つ。
隠密を駆使して本体を仕留めるか、もしくは……立ち塞がる全てを蹂躙する神となるか。
神気を身に纏う。
ピンクシルバーその一筋にまで。
宿すは銀の神性。
意図的に放出した力が仄かなオーラとなって、白き死を討ち滅ぼす。
比較的余裕があるのは、2人分の演算力があるからだろう。
見上げた先では、パフィ子達が白いオーラを吹き出している所だった。
やっぱりパフィ子達も神気を多少扱えるらしい。
「……これで最後」
「にゅにゅん!!」
やはり、単独で今のパフィ子軍団に勝つには、神気の強大過ぎる力が必要になる、か。
事前の準備があればそんな事もないだろうが、高い質を持つ高密度な量を打ち砕くには、同じく質と量が必要だ。
質に関しては問題ないが、量がどうしようもなく足りない。
誠に遺憾だが、こうなる事は最初から分かっていた。
削り、奪い、精神の消耗を強要し、しかし届かなかった。
実質敗北の様な物である。
若干やさぐれながらも拳を構え、終幕の一閃を解き放った。
——光が弾けた。
白に染まっていた世界は、一時銀に飲み込まれる。
世界が静寂を取り戻した時、そこに白の終末は無くなっていた。
「……はぁぁ〜」
白の少女は目を回して倒れ伏し、それを確認した桃銀の少女はゆっくりと息を吐き出す。
刹那、ガクリと地面に膝をついた。
疲労故か、今にも眠りに落ちそうなトロンとした瞳。
兎耳は力なく垂れ、頭に合わせてふらふらと揺れている。
それもその筈、桃銀兎は世界に蔓延る白だけを狙って光を放ち、同時に白の本体を殺さない様にダメージ調整までしていた。
神気による攻撃は、魂魄に施された加護をも貫き得ると配慮した結果であった。
「……」
目を回し、すやすやと昏睡する白をジト目で睨み、桃銀はコロンと地面に転がった。
「……無理ぽ……」
と言う事にした様である。
少女は意識を虚空に手放した。
第十四節:第一項、授業、修行、苦行——完
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パフィ子:カラービジュアルイラスト
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