第49話 約束の
第八位階下位
吸血鬼達の楽園、月下の魔城。
水棲魔物達の根城、遊覧海域。
人形達の軍事拠点、浮遊都市イェガ。
これら全ての攻城戦を終え、何度も激闘の末の死、そして復活と厳しい訓練を経た事で、配下の皆はぐんと成長した。
現状教えられる事の全てを叩き込んだので、後は個々人の感覚の領域である。
クリカやサンディアの配下等、トップクラスと比べると見劣りする上層域の子は仙気法へ到達し、悪魔や淫魔、人形達等の中層域は闘気法をほぼマスターした。
ヴァルハラナイツも練度の差こそあれ闘気法を使える様になったし、中には仙気法の領域に足を踏み入れている者もいる、そしてタク達は既にそれ等に追い付いている。
明日は11日目。日の巡り的には11日目だが、実質10日目だ。
戦闘技術の獲得。情報の共有。イベントに向けた攻城戦の練習。実りのある10日間だった。
今日の夜に終了して一晩寝たら、タク達は昼からイベント開始だし、僕等は午前から爺様達とドラゴンスレイバーだ。
それらに備えて最終日、皆にはしっかりと心身共に休んで貰う。
……一部を除いてね。
◇
「……時は来た」
起き抜けにそんな事を言うメロット。
もぞもぞと起きたうーたんを撫で、僕も上体を起こす。
「先ずは朝食ね」
「……望む所。朝飯前」
朝飯後だって。
心なしか興奮気味のメロットを宥め、微睡むうーたんとめーたんを抱えて食堂に向かった。
本日は休息とは言え、朝のちょっとした運動や精神修養は禁止していない。
稽古の後は、皆休んでないと心から休めない子もいるので全面休息である。
食いしん坊の様に朝食を促すメロットを宥め賺し、稽古は朝飯前でしょーなどと適当な事を言いながら時間を稼いで、うーたんとめーたんがぱっちり目を覚ました所で朝食を摂った。
元々摂らなくても良い物だが、それは内緒である。
そんなこんなで、うーたん達を黒霧に預け、僕とメロットは約束の場所へ転移した。
◇
降り立ったのは、成果確認の為に作った仮想空間。
皆がいる空間とは繋がっていないので、思う存分暴れる事が出来る。
「……む」
それを見て、メロットは眉を顰めた。
まぁ当然だろう。
何せ、それは僕の配下の中でも1、2を争う出力を持つ、規格外の絶対強者。
今の時点で、メロットでは余程の事がない限り絶対に倒せない様な化け物だ。
それ、僕と全く同じ姿をした少女は、キリッと美人可愛い僕とは違い、やや緑がかった瞳を細めてにこぉっと締まりのない笑みを浮かべた。
容姿で僕と違う点は、髪が真っ白な所だけ。
彼女は黒霧を除けば最も僕に近い演算力を持ち、瞬きの間も尚成長を続ける、果てなき未知の探求者。
「さぁメロット、始めようか」
「……致し方ない」
此方の装備は、メロットの王権の象徴と、僕のルメール繊維学生服。
総合魔力量的に心許ないが、魔力の多寡が勝敗を決する訳ではないので、そこら辺は僕の技量を御覧じて貰おう。
早速玉座に腰掛けるメロットへ両手を広げる。
メロットは微笑む僕をじとっとした目で見ると、数瞬後ため息を吐き、ぽんぽんと自分の膝を叩いた。
「いや、魂合に際して接触面積を増やすのが目的だから座りながらよりも——」
「——御託はいい。来る」
「仕方ないな」
まぁ、元より必須ではない。そもそもメロットの魂は本に封印されているので、わざわざ接触するのは概念的意味合いしかないのだ。
仕方ないので、僕はちょこんとメロットの膝に座った。
しかし——
「——逆」
ひょいと持ち上げられ、向かい合う様に座り直された。
「これじゃあ接触面積が——」
「——抱き締めれば良い」
「……まぁ、接触しなくても良いん——」
言い終わる前に抱き締められた。
仕方ないので僕もメロットの背に手を回す。
するとメロットはもぞもぞと動いた後、僕の膝を撫でだした。
「……分かるでしょ。足も」
「……すけべうさぎ」
「……悪い口、塞ぐ」
「『魂合』」
正直言ってね、爺様が作ったイェガ、リッド、メロットの3人は、何らかの神の介入があったんじゃないかと僕は疑ってるよ。
他より一回りも二回りも強いからね。
それにイェガ。あの子は生まれたばかりにしては感情が豊か過ぎだった。
配下の子達の根源について調べるのも良いかもしれないね。
そんな事を思いつつ、僕等は光になって溶け合った。
レビュー頂きました。ありがとうございます。
今後も作り込まれていると言って頂けるよう精進致します。




