第41話 鉄柱迷路に潜む者
第七位階上位
該当エリア内に進入したと報告します。
提案を受諾、検体を採取しま、した。
成分はタンパク質。フィブロイン。物により細かな変動あり。
物質としては火に弱いですが、アルネアの糸は火にも耐性があり、焼夷弾の効果は薄い。
はい、無効ではないと明言します。
焦土作戦を提案します。
「エヴァ、なにエヴァエヴァしてるのです。さっさと進むのです」
「エヴァエヴァとは何かと聞きます」
「エヴァエヴァはエヴァなのです」
「エヴァとは何かと聞きます」
「なんもん。あそんでないですすむ」
「怒られたと怒ります」
「ルムのせいじゃないのですー」
「はっ、まんま子供さね」
「は? ……洗濯板がなんか言ってるけど気にしないのです」
センタクイタとはなんですか? ……情報をアーカイブに登録します。
洗濯板:胸部の脂肪が乏しい女性の事。もしくはその部位。
……洗濯とは服飾類を洗浄する事ではないのですか? ……そう言う物なのかとエヴァは一応の納得を示します。
「〜♪ ーー!」
「ではエヴァは右から行くと明言します」
「かってなことしないで」
「ーーー♪」
「サンディアの冗談は分かり辛いとエヴァは憤慨します。ぷんぷん」
頬も膨らまします。サンディアは直ぐツンツンしてくれるので直ぐに空気を吐き出せます。
エヴァが憤怒を露わにしている内に、目標地点に到着しました。
「では作戦通り、私達は正面から一気に直進しましょう。行きますよ、アニス、ラース。それとエヴァ」
「ちょっと、ケロ子! 固まってないで、もう! 蛇子も分かってやってるんでしょ!? あ、ちょっ、サンディア! 左よ! そっちは右! あーもうっ!」
「わたしたちはみぎ。ディルヴァ、たよりにしてる。リオン、こうか。ぜんえいよろしく。びゃくやとルムはこうえい。ちゃんとやって」
エヴァはクラウの人身掌握術をリスペクトします。
「ヴェルアニスとラスタは遊撃、ドラミールはエヴァと一緒に突撃します。頼りにしてと明言します」
「えぇ、頼りにしてますよ、エヴァ」
……何か違うとエヴァは疑問を呈します。
……頼りにされてるなら良いと納得します。
仮想敵、アルネアとレーベ攻略作戦を開始します。
情報の共有をします。
アルネアは出現して即座にホームを作成しました。この事から——はい。エネルギー資源がアルネアの限界保持量を越えています。
なので根源因子:魔力の総量はおそらく無限だと予測します。
はい、エヴァもそう予測します。このアルネアは低スペックです。情報を共有します。
『全軍に報告。アルネアは本物と比べて弱体化していると予測します。また、魔力量はほぼ無限だと考えます』
「ふむ……魔力無限とは厄介ですね。やはり息つく暇を与えず一気呵成に仕留めるのが良いと思われますが……」
「当然、そうするのが適正でしょう」
「あたしも。強襲には賛成。だけど逃げ回られると厄介だし、分かれて先に罠を壊しておくのは悪くないと思う」
「むぅ、確かに、それもそうですね。功を焦りましたか」
功績を上げるとユキからご褒美が貰える筈だと断言します。
アルネアはエヴァが仕留めます。ユキを抱いて震えます。
……アーカイブに登録。おたまじゃくしの肉を使います。カエルではダメかと問います。
おたまソーセージのオムレツ? 卵は栄養が豊富なので納得です。おたまとたまごで子供が生まれます。震えます。
有機融解炉をシェイクして混沌から命が誕生します。
……おたまじゃなくても良いのではとエヴァは密かな疑問を封じます。
◇◆◇
来たの。いっぱいなの。と、微かに揺れる細い糸を手繰り、アルネアは頷く。
「3方向から来るの。地図埋めなの?」
「3方向か……どちらから攻める」
「正面は力押しなの。面倒なの。ちょうど罠地帯だから時間を稼ぐのよ。左は罠では止められないから放置なの。ぶちぶち解除されてるの。右が今の所一番御し易いの」
「了解した。先ずは右から行こうか」
「一当てして分断するの。犠牲は致し方なしなの」
密談を終えた2人は、暗闇の中、気配を殺して静かに移動を開始する。
移動の最中、アルネアは片目を瞑り、眷属を通して敵の戦力を把握した。
「レイエルにハイネシア。ニュイゼにイテア。それからルカナとサンディアなの」
「精霊帝等が2体に……サンディアか……」
「サンディアなの……因みに目もサンディアに潰されたの」
眷属の小型蜘蛛に剣が振り下ろされ、目が途切れたのを苦笑いで誤魔化し、アルネアは対策を考える。
既に周辺には薄い血の霧が張られ、目は駆逐されている。
抜け目のない者、頭のキレる者が多い中で、年長者達がサンディアを苦手とする理由は、彼女が一見して無害そうにしか見えないからだ。
気付くと警戒を解いている。気付くと懐でごろにゃんしている。
しかしいざ視線を合わせてみると、全てを飲み込む様な深淵の如き瞳と相対する事となる。
よくその動きを見てみると、一挙手一投足に既視感があった。
思い返してみると、その動きは自分や己が強者と定めた者達の動きに似ている。
そうかと思えばごろにゃんしている。見間違えだったかと目を擦り、見直してみればもういない。
猫の様に気紛れで、雲の様に掴み所が無く、鏡の様に此方を見返してくる。
漠然とした脅威は、天災のそれに等しい。
「……取り敢えずルカナとサンディアからやるべきだろうな」
「弱い者から倒すのは定石なの……サンディアは……タイマンでやれるの?」
「む……出来る筈だ。しかし梃子摺るだろう」
また下がっていた脅威度を上方修正し、レーベは頷く。
未熟な娘もこれ程の力を持つ朋友に恵まれれば、俺など直ぐに越えるだろう。
何処と無く寂しい思いもあるが、レーベは父として娘の生育環境の良さを喜んだ。
しかしそれはそれとして、娘と同じくらいにしか見えないサンディアの真の脅威を肌で感じられる事に悦びを感じている。
——ただの戦闘狂であった。
アルネアは苦笑しつつも、今回でサンディアの脅威をしっかりと認識する為、最悪レーベを捨て駒にする事も辞さない覚悟だ。
レーベ程の強者を当てなければその真価は測れない。そう判断を下した。
間も無く、ルカナ小隊と接敵する。




