第4話 狂わせる魔性
第四位階上位
遺跡に辿り着いた。
日が良く照る時間な為か、アンデットや瘴気は遺跡の外に出ていない。
ただ、不穏な気配は感じる様で魔物は全く見受けられない。
真昼と言うこの環境下で、この地には不思議な安全地帯が出来ていた。
少し小高いこの場所からは、猛烈な瘴気に当てられ死んでしまった森が見える。
森を殺す原因が無くなっても、この森が再生するまでは相当な時間が必要になるだろう。
休憩時の護衛の為に配下を召喚し、皆に声をかける。
「……それじゃあ皆、お昼休憩にするよ。護衛は皆がしてくれるから。全員ログインしたら殲滅に入ろう……質問がある人はいるかな?」
一応とばかりに聞いたが、特にいなさそうである。
まぁ、事前に説明は済ませてあるし、現状特に異変も無いのでそんな物だろう。
「……いないみたいだね、それじゃあ、解散」
それだけ伝えると、早速ログアウトする姿勢を取る。
ウルルに体を預けて寝っ転がるだけだ、一応周りの皆をザッと見ておく。
どうやら男子組、女子組に分かれてログアウトする様だ。
タクは岩に体を預けて直ぐにログアウトし、セイトは一頻り僕の配下を見た後、タクと同じ様にログアウトした。
アランはネロを撫でた後にログアウト。仲良いね。
女子組は荒野に布を敷いて、その上に寝転んでログアウトする様だ。
センリとユウミが出しているので、ポーションを買うついでに買っておいたのだろうか?
気配りの出来る二人らしい。
此方をチラリと見たので、ウインクで返しておく。
マヤとクリアは、マヤが目敏く発見したピンク兎のメロットに寄り掛かってログアウトしている。
ログアウト直前までメロットを撫でさすっていたが、メロットの方は変わらず眠そうにしていた。
警戒しないと言う事はそれだけ気を許……いや、敵が目の前にいても警戒してないか。
ミサキとケイがログアウトし、後に残ったのは何時もの皆。
妹組が何やら騒がしいが……。
「は、離せぇっ!! わ、私はやらなければならない事が——」
「——離さないわ!! 少なくともユキさんが戻ってくるまではアヤを離さない!!」
「そ、そんなの生殺しだよぅ! ……そ、そだ! ミュウも一緒に、ね! それなら良いでしょ?」
「うっ……………だ、駄目よ!」
「今迷ったねぇ、キョウちゃん」
「ミュウはむっつりだねぇ、リッちゃん」
「ふふふ、私は画像スキルを取ったので撮影済みですよ? 普段使ってるのと同じで音が出なくて良いですね」
耳が生えているから声がはっきりと聞こえる、まぁ、仲が良さそうで何よりである。
そうこう何の気はなしに探っていると、ユウミとセンリが此方に歩いて来た。
「あ、あの、ユキ? そ、そのー」
「ユキ君! その耳と尻尾、触らせてもらっても良いかな?」
「うん? 擽ったいから嫌なんだけど……少しだけなら良いよ?」
「やった!」
センリにしては珍しく、真っ赤な顔でモゴモゴと言っていたのを、ユウミがフォローする形で聞いて来た。
本当に擽ったいので遠慮したい所だが、少しぐらいなら問題ない。
「それじゃあ触るね?」
「うん……っ……」
「ふわぁ、この尻尾ふわふわしててスベスベで……癖になりそうだよ」
「こっちの耳もピクピク動いて……か、可愛いっ……!!」
「……っ……ん…………まだ……?」
いつまでも触るのをやめない二人に痺れを切らし、二人を見上げてそう聞くと、二人はビシリッと固まった。
「?」
「……う、うん、此処までにしておくね。…………これ以上やったら戻れなくなりそうだし」
「………………」
「ほ、ほら! チサトちゃん! 行くよ!」
「……はっ!? ……あ、あぁ」
何があったかわからないが、擽ったいのが終わって一安心である。
「はぁはぁ! 離してっ!! 私は! 私は……!!」
「くっ! ユキさんのばかぁ!!」
「はぁはぁはぁ……私、落ちますね……これ以上此処にいたら萌え死にます」
「キョウちゃん、後で触らせて貰おう!」
「そうだね、リッちゃん、早くお昼食べなきゃ!」
まぁ、問題なさそうなのでそろそろログアウトしようか。
「それじゃあウルル、白雪、また後でね」
「ウォン」
「う、うん……また後でね」
「クローズゲート」
◇
ログアウトし、昼食を食べ雑事をこなす。
ログインしようと階段を登っていると、上からアヤが降りてきた。
心なしか肌が艶々している様にも見える。
「あ、おにぇちゃん、えへへ」
「? 早く食べてログインするんだよ?」
「うん!」
さっそくログイン。
目を覚まし、即座に周囲の状況を把握する。
特に戦闘が起きている音は聞こえない、何かが近付いてくる音もだ。
敵の気配は無い。
瞼を開いて状態を確認する。
先ず隣に白雪が転がっている。僕の指を口に含み、吸って魔力を吸収している様だ。
続いてもう片方にはアヤが転がっている。
その足元にはミユウが力尽きた様に倒れていた。
「『魔力譲渡』」
「みゃ!?」
取り敢えず白雪の食事を終わらせて、起き上がる。
微妙に服に違和感があったので、もぞもぞと動いてただした。
ちょうどそのタイミングで双子が跳ね起き、此方へ向かってきた。
「ユキさーん、耳を触らせてください」
「尻尾も触らせてください」
「ちょっとだけなら良いよ」
「「やったぁ!」」
そういうと、双子は左右から僕を挟んで耳と尻尾を触り始めた。
「ふふふ、もふもふ」
「ふさふさ、えへへ」
「…………っ」
「ふへ、ここ、ここが良いんだね!」
「ふへへ、こうでしょ、これが良いんでしょ!」
「ん……くっ……はい終わり」
「ふへへへ、もっと気持ち良くしてあげ——ふぎゅ」
「ふへ、もっと激しくして——ふぎゅ」
終わりと言ったのにやめない二人に困っていると、急に二人が変な声を上げて釣り上げられた。
救世主はミユウ、力尽きて倒れていた筈のミユウだ。
「まったく、ユキさんが困っているでしょう。二人はあっちで戦う準備をしておきなさい!」
「「はぁーい! それじゃああっち行ってるね!」」
そう言って二人はユリちゃんが寝ているところへ向かって行った。
「ミユウちゃん、助かったよ、ありがとね」
「いえ、当然の事をしただけです」
何やらチラチラと僕の頭、耳を見ているミユウ……。
「……触る?」
「っ!? ………………はい」
ミユウは恐る恐ると言った風情で僕の耳に触れた、ミユウなら問題なかろうと思ったがしかし。
「はぁはぁ、こ、これが……はぁはぁはぁ」
「ミユウちゃん?」
次第に手の動きが怪しくなり、僕の声が聞こえていないのか返事を返すことは無くなった。
「っ! くっ! ……んぁ……やぁ……」
「はぁはぁ! ユキさん可愛い! ユキさんっ!! ユキ——」
「ミ・ユ・ウ?」
「はぅ!? わ、私は一体何を? ユ、ユキさん!?」
「はっはっはっ……はふ……はふ……ふ…………」
「ミュウ、ちょっとアヤとあっちでお話ししようか?」
「はうっ!? ……ち、違うの! これは何かの間違いよ!!」
「問答無用!」
何が起きたのか良くわからないが、とにかく嵐は去った、去ったのだ。
「ユキ、大丈夫?」
「はぁはぁ……ちょっと休む」
慣れてないからか過敏で困るね……。




