第34話 成果をここに 二
第八位階下位
リッドにもにもにされた次は、イェガ。
解き放たれた全力の主砲の一撃は、地上に着弾するや大爆発を起こし、大陸の3分の1であるこの大地を消滅させた。
生じたヤバイ気体は、種精霊と共に瞬く間にイェガが吸収し、魔力分解。主砲を撃って減少した魔力の殆どを補給していた。
範囲はもはや文句なし。
威力は、一応直撃を受けたアダマンタイトの鎧が蒸発しているので、レベル700にも相応のダメージを負わせられる筈だ。
やり方はアレだが連発は可能だしね。
結果は上々である。
次、メロット。
隔離空間に移行後、いつも通りぼーっと玉座に腰掛けているメロットに歩み寄る。
半目のメロットと視線を合わせていると、その頬が徐々に赤く染まって行った。
「…………」
「……照れてる?」
「……誘ってる?」
僕は首をブブブと振るう。誘ってないし。
……ただちょっとだけ……僕の論理的規範を犯し、幾つか引いていた線を2個くらい飛び越えて来たメロットに対する意趣返しだ。
このままだと……僕の貞操が危うい。
まぁ、それそうと、メロットの修めた成果を見せて貰おうじゃないか。
僕は少し考えて、挑発する様に微笑んだ。
「それじゃあメロット……カッコいいとこ、見せて?」
「……誘ってる」
「照れてる?」
「……例え照れていても誘っている事実は変わらない」
意趣返しであって誘ってないし。
「……カッコいいとこみせてよ」
唇を尖らせてそう言うと、メロットは半目のままじとーっと僕の唇を見つめた。
「…………まぁ良いや」
何が良かったのか、メロットは玉座から降りると、徐にアダマンタイトの鎧に歩み寄り、一蹴り。
上段蹴りが頭鎧を粉砕し、余波がその先を消滅させる。
続け様に剣を持ち、一振り。
鎧が上下に泣き別れして、大地がフラットになった。
更にメロットは玉座を鎚の様な物に変え、振り下ろす。
鎧の下半分は無惨にも潰れ、大地に大きなクレーターが出来る。
そこでくるっと僕の方へ向き直ったメロットは、王笏を構え、全力の魅了を込めた王命を発動させた。
「王が命ずる『抱き締めて』」
「良いよ」
およ? 口が勝手に動くぞ。
案外としっかりとした足取りで、僕はメロットに歩み寄る。
意識がはっきりしているのはマレビトの加護のおかげだろう。
……多分だけど、マレビトの加護は魂を保護する反面意志力による抵抗を弱めてしまうのかもしれない。
まぁ、それにしたって僕の魅了耐性を貫いて来るのは結構な事だが。
取り敢えず、抱きつく直前に魅了を解除した。
方法は簡単。僕の美しさを再確認するだけである。
若干の疲労を纏いながらも、腕を広げて待つ姿勢のメロット。
「……?」
「……」
「……?」
「……」
「……!? ……イヂワル」
凄いぞ、ぎゅー。
◇
メロットを絞め落とし、次は地底湖参入メンバー。
ラース君は、残念ながら成長率がイマイチだった。
仙気を宿した限界突破による拳で鎧に穴を開けられたが……いや、成果は十分である。
実際、そこまで辿り着けない者の方が多いからね。
次のクリカは、鎚鋏で大地を広範囲に渡って破壊。剣鋏では鎧をバターの様に切断。結晶の力を使って放つ極大光線は大陸を横断した。
改めて結晶大王蟹の脅威を思い知らされる。
集合精霊達が全ての攻撃を受け止めていたのは、そうしないと少なくとも王都一帯が消滅していたからだ。
敵の数が多くて手数に力を割いていたのも王都救済の大きな要因だろう。
最たる要因は、結晶大王蟹が戦い慣れしていなかった事だ。
その点で見れば、クリカはおそらくもう結晶大王蟹に匹敵する戦士だと思う。
また、クリカの部下達は中でも強い者達が闘気法を使える様になっていた。
例の2体に限って言えば、少し仙気も使えている。
続いてサンディア。
彼女は色々と選択肢が多い。影か血か、闇か剣術か、どれを極めて来るものかと思った物だが、何の事もない。サンディアは全部やって来た。
影は牙を剥き鎧を砕く。血は時に毒となって鎧を蝕み、時に槍となってそれを貫く。
振るわれる剣には仙気と共に微かな闇の神性が宿り、迸る斬撃は光をも切り裂いて夜を生み出す。
その影を更に利用したり闇を拡散させた靄で領域を支配したりと、引き出しが多くまた巧みであり、それぞれが良く鍛えられていた。
若干剣が劣る様に見えるが、他がそれを補って余りある。
剣に血や影を纏わせたり、血や影を剣にしたり、それを複数操作したり、自分の強みを理解して、完成されたと言うべき戦闘スタイルを確立している。
後は剣術をもっと突き詰めるのと、スキルや魔法を細部まで意識して構築できれば文句なしだ。
サンディアの配下達は、特に特化して育てている訳では無さそうで、全体的には基本特性と闘気が使えるくらいだった。
……まぁ、数千の兵隊が操影操血出来て更に闘気も使えるのならば十分期待以上である。
次、モルドは、牙に神性を宿し、鎧を噛み砕いた。
評価としては上々。後は、練り上げられた火属性のブレス。強靭な鱗と甲殻。無尽蔵のスタミナと再生力。正に化け物。
攻撃的な仙気は限定的なものの、単純なフィジカルをぐんと上げて来た形であり、その脅威度は高い。高いが……イマイチ……いやいや、十分十分。
一芸は道に通ずる。モルドはそのまま牙を、もとい噛む事を極めて欲しい。
次の蜘蛛さんは、アルネアから直に仕込まれ、ハイレベルの操糸、毒、闇の力を体得した。
基本戦術は操糸と毒の合わせ技。
渾身の糸は鎧を切断出来たし、毒は鎧を腐食させた。猛毒を持つ糸を複数自在に操る事も出来る。
耐久力も考慮すると、正面戦闘ではモルド級と言った所だが、蜘蛛さんがその真価を発揮するのは自分の巣の中だ。
生成した強靭な糸を張り巡らせ、無数の罠と眷属、闇を駆使して敵を殲滅する。それは然ながら魔窟と言うに相応しい。
話に聞くに、アルネアは自分で動いて戦うタイプらしいので、巣作りと言う点ではアルネアに匹敵する程の物が作れるらしい。
地底湖参入組最後は、レイエル。
彼女は魔法使いメンバーの1人として、今まで魔法使い組で集まり、魔力操作の訓練をして来た。
今回は仙気法を学び、その要領で生成する水属性を仙気法の域まで引き上げる事に成功している。
放たれた水刃は鎧を切り裂き、大津波は世界を蹂躙し尽くした。
自分の魔法の威力を初めて見たらしいレイエルは、世界を滅ぼす大津波を安全な上空から見下ろし、口を半開きにして固まっていた。




