第29話 エンターティナー
第四位階上位
砦内部の通路。正面から向かってくる敵が、愚直に真っ直ぐ突き込んで来た槍を盾で受け流し、練り上げた気を宿した魔剣で人形の中枢を刺し貫く。
遅れて続いて来た人形には鉄絶甲で盾を叩きつけて弾き飛ばし、逆側から迫る石剣の振り下ろしを剣で切り結ぶ。
動きを止めた3番目に、セイトが闘気を宿した剣を振るって仕留め、続け様に後続の4番目を剣毎切り裂いて、5番目の斧持ちと相対した。
「……飛ばし過ぎではないか?」
「え? そうかな、ごめん」
2番目の人形を屠りつつ注意すると、セイトは素直に闘気を引っ込め、斧の一撃を大きくバックステップで回避した。
「……ようやく出番?」
開かれた射線にマヤが杖を向けた。
「……むむむ……『魔矢』」
僅かな間をおいて生成された半透明な魔法の矢が、人形の胴体に突き刺さり、その体が大きく傾く。
気を宿さない剣が振り下ろされ、中枢部分へ深々と突き刺さって、最後の1体が動きを止めた。
セイトがにこやかに振り向く。
「マヤ、魔法発動までの時間、短くなって来たんじゃない?」
「……ん……一から構築は地味にめんどい」
そう言う割には楽しそうだ。
本当に、マヤはアナザーを始めてから……いや、ユキに会ってから、良く笑う様になった。
「さぁ〜、喋ってないでぇ、次に行きましょ〜!」
レイナがいつになくノリ気で拳を突き上げる。
勿論、ユキの提示した景品目当てだ。
昔からレイナは現金だからな。
「……そう、急ぐ。『ポイントの表示を』」
レイナと同じ様に拳を突き出したマヤの前に、302と書かれた半透明のプレートが出現した。
「……目標額まであと698」
特別なモンスターカードか……そう言えばもふもふしたヤギの様なモノを飼いたいとか言ってたな。……ひつじじゃダメなのか?
「宝部屋とかを見つけるとポイントが多めに加算されるらしいし、一部屋ずつ必ず確認しよう」
何かと部屋が多いし、そこに潜んでいる人形を狩ればポイントも稼げる。
敵自体はそんなに強くない様だし、ポイントはパーティーで分散されるから、2手に分かれても良いかもしれないな。
……隠しボスが徘徊しているらしいから言わないが。
◇◆◇
目視情報からイベント会場を模したステージを作成し、皆の試運転がてらイベントの予習を行わせる。
フィールドは、綺麗な円形の島。
四方に砂浜があり、そこから道なりに進むと大きな砦、更に進むと中央の城に行ける様になっている。
他にも何かしらあるかもしれないが、深い森に隠れて分からなかったので、あくまでも模倣ステージである。
敵は、レベル10〜25までのドールを中心に、味変的にレベル15〜25のゴーレム等を徘徊させ、各種砦の入り口や幾らかの隠し部屋には門番としてレベル高めのゴーレムを置いた。
ボスはレベル50に設定したアーマーゴーレムで、四方の砦にはレベル40の中ボス、そして各地にレベル45の隠しボスが10体程徘徊している。
仮に皆が負ける原因があるとしたら、それは数の差である。
敵の総数は、島内全域をカバーすると共に砦や城に詰める分もあるので……おおよそ5万体くらいが犇いている。
資源が無限だから全自動生産装置を作って大量生産した。
レベル差とかを考慮しても、殲滅する気でいるなら一日じゃ難しいと思うね。
また、ヴァルハラの面々も複数用意したイベントステージにばらけて、タク達と同じ様に攻略を進めている。
尚、エンターテイメントとしてこれらはライブ配信されており、配下の子達は皆朝っぱらからお酒を飲んだり賭け事をしたりしつつそれを見て騒いでいる。
尚、賭けられている物はお菓子やジャーキー等だ。
修行の成果を試しつつイベントの下見も出来て皆の娯楽にもなって景品と言う形でメインウェポン以外の支援も出来る。
正に一石四鳥の妙手である。
取り敢えず皆の戦いをざっと見た感じ、タクチームとシロチーム、アヤチームにリナチーム+αは問題なし。
セイトチームは人数が少ないのもあってか若干殲滅速度が遅く、リンカちゃんチームはリンカちゃんはともかくとしてココネちゃんは未だ未熟だし、それ以外の3人は闘気法がちょっと出来る様になっただけで地力は精々ビギナーレベル。
後者2チームは隠しボスの奇襲を受けたら誰かしら死ぬかもしれない。
死んだら黒霧が宴会場でリスポーンさせるので、実質リタイアとなる。
そうならない様皆には頑張って貰いたい所である。
と言う訳で僕は4日振りの休憩をとる。
皆の修行と言う形で休み休みやっていたが、流石に神気操作の疲労がバカにならなくなって来たので、しっかりお休みする。
一応未だ余力がある現状で監視をさせるには黒霧はちょっと信用ならないので、真・プチニコラに監視して貰おう。
「それじゃあニコラ〜、よろしくぅ……」
「はーい! ユキちゃんに良い夢をプレゼントするよ☆」
「そうして……」
まぁ、本気で邪魔しに来られたら無理だと思うけど。




