第25話 良い師弟
第八位階下位
最初は、獣人ちびっこ隊。
うーたんは構えた拳に闘気を宿し、その身体能力に物を言わせて拳を振るう。
凄まじい轟音と共にそれを受け止めたのは、アニス。
「良いぞ、良い拳だぞ! でも収束が甘い! 真っ直ぐに突き込むんじゃなくて、回転させるんだ!」
「むむむ、えーい!」
拳から流れ出すオーラが螺旋を描き、再度振り抜かれた拳を、アニスはまたも易々と受け止める。
「今のはいい感じだったぞ! もっと激しく、エネルギーの一粒一粒で敵を打ち砕くんだ!」
「むむむむむーー、はぁぁー!」
今度は破壊音ではなく、楽器の様に高く響く音が鳴り、受け止めたアニスの腕から血飛沫が舞う。
「そうだ! その感じ! よし、見てろ!」
言うや、アニスはたちまちに腕を再生させて、遠い山目掛けて拳を振るった。
放たれた仙気は螺旋を描き、拡散しながらも大気を引き千切って山へ着弾した。
木々が跳ね飛ぶ様に四散し、土砂が舞い上がる。マグマがバラバラ飛び散って、その様さながら地獄絵図。
しかし、黒霧の操作で山は直ぐに元通りになり、アニスにも魔力が充填される。
「うーたんもドカーンってやるのー!」
「おうやれ! 吹き飛ばせー!」
「むむむむむむむ、たぁー!!」
放たれた拳撃は広範囲の木片を散らし、土砂を巻き上げた。
残念、収束が甘かったね。魔力量もアニスより少ないし、こんなものだろう。
「むぅ……赤いのが出ないの」
「はは、上出来、上出来! 後は操魔力をもっと鍛えて、一粒一粒をちゃんと認識出来る様になると良いぞ」
「因みにママがやったらどうなるの?」
「え? …………新世界ガ産マレルカモ?」
「流石ママなの」
意識が宇宙に飛んでいっている2人は置いておいて、次はめーたんと講師ナーヤ。
「その調子……ゆっくり、ゆっくり、意識を緩めずに……今!」
「っ!」
掛け声と同時に、抜刀。溜めていた斬属性を解放したその一閃は、見事アダマンタイトの鎧に傷を付けた。
多分魔力さえ続けば、チサトやタクにも同じ事が出来るだろうが……流石にレベル差=保有エネルギーの差なので、現状では厳しいだろう。
「はぁはぁ……」
「うん、良く出来ました。だんだん精度が高まってきたわね。あとは……やっぱり爆発力が足りないみたい。剣身に斬気が残ってるのは分かる?」
「は、はい……ちょっと……ふぅ」
「そうね……剣をそのまま一気に伸ばす様なイメージで、行ける?」
「が、がんばりまふぅ」
「ゆっくりで良いのよ? 時間なんて幾らでもあるんだから」
「がんばりまぅ」
「ちょっと休憩しましょうか」
ナーヤは流石に肩で息をしている様な状態では無理だと判断した様だが……極限でこそ得られる物もある。
めーたんはどちらかと言うと追い詰められて本領を発揮するタイプなので……まぁ、『霊験門』を越える時は僕が直々に、嫌われてでも追い詰めよう。
続いてあーたんと講師マハーカ。
「はっ、せっ、ィヤ!!」
「うん、うん、良いよ。基本は完璧だ。さぁ、次っ!」
単純な突き込みの型。薙ぎ払い。捻りを加えた突き上げ。衝撃波を伴うそれ等の次は、軽く魔力を纏わせるだけの魔纏術。
身体能力もついでに強化されている様で、槍のキレが増している。
徐々に込める力の質を上げていき、闘気法。
「はぁっ! せぇっ! ィィヤッ!」
「ここまで完璧。最後、行くよ!」
いよいよ仙気の領域と言った所で、ついに完璧だった型がブレた。
それでもどうにか最後まで喰らい付き、ガクリと膝をつく。
「はぁ、はぁ……ありがとうございました!」
「うん。中々良かったよ」
「はぁ……そう、でしょうか、はぁ……」
「才能は間違いなくある。後は慣れと経験だね。このまま続けて行けば、直ぐに強くなれるよ」
「はい! これからもご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします!」
ペコリとお辞儀をして、休憩に入った様だ。
一応転生者とは言え、年齢の割に強い方だと僕も思うよ。
次、ぐーたんとアジェ。
「よし! 行け! 吹っ飛ばせー!」
「おぉぉっーー!!」
振り下ろされた戦鎚から膨大な量の打属性が放たれ、大地を粉砕する。
拡散する指向性攻勢エネルギーが浸透し、野原を粉々に砕きながら、山に至る手前で力尽きる。
「もっとだ! もっと気合いを入れろ! 山をぶっ壊せ! 出来る筈だ! お前なら出来る!」
「押忍! うおおぉぉぁぁーーっっ!!」
充填されたエネルギーを即座に仙気に変え、戦鎚に宿し、更に凝縮し、おまけにアニスとうーたんを真似て螺旋状にしたそれを、再構築された大地へ叩き込む。
大地を粉砕し、土砂を巻き上げ、先よりも速く突き進んだ一撃は、ついに山へと到達し、それをゴリゴリ割り削りながら停止した。
「よぉくやったぁ! 次は込める力の最小まで気合いを行き渡らせるんだ! よし、休憩!」
「押忍!」
バターンと倒れて目を回すぐーたん。倒れた弟子の介抱の仕方を良く心得ているアジェ。
……まぁ、相性は悪くないよね。
次、しゅーたんとグルガス。
「……良い、構えよ」
「……ん」
「……守護とは先ず己を守ってこそ。己が盾たれば全てを守れよう」
「……私は盾」
「……柔を持って剛を制し、剛を持って柔を退けよ」
「……柔剛、多重構造」
刹那、盾と盾が衝突した。
衝撃が一帯に響き渡り、先にしゅーたんの軟属性と硬属性が尽きる。
しかし、そこでしゅーたんの盾から虹色の光が溢れ出て、グルガスの仙気と相克した。
「……筋は良し。其方のその力、如何様にも変えられよう。どの道を進むも其方次第だ」
「……全部」
「……剛気な事よ。良かろう、全て教える」
「……眠い」
「……今は休め。次はそれに頼らず、盾のみで防ぐが良い」
「……Zzz」
こっちも相性は良いね。
ちびっ子組は良い師が付いているから、特に心配はないな。
次、遅れてる子達。
4桁の大台に乗りました。
今後もよしなに。




