第24話 予定調和
第八位階下位
明けて翌朝。
今日も今日とて修行日和である。
場所は街を見下ろせる森の展望台。
木漏れ日の下、近くを流れる小川のせせらぎを聴きながら、皆思い思いの場所で昨日の復習をしている。
昨夜の交流もまた上手くいったようで、情報交換したり友達が出来たりと盛況だった。
上手いこと闘気法のやり方やその先、または魔力の性質を聞き出している者達もいたし、配下の皆も新しい風を受けてより一層修行に身を入れている。
それではいよいよ闘気法の実習である。
◇◆◇
闘気法は操気法と練気法の動きを汲んだ技術。
瞳を閉じて集中し、己の内にある生命力を操作して、その更に奥に潜んでいる魔力を汲み上げる。
汲み上げられた魔力を利用し、オドの全てを掌握した。
「ふぅー」
息をゆっくりと吐き出し、軽く深呼吸。
掌握したオドを体内で巡らせ、最も扱いやすい生命力へ、そして固有属性魔力へと練り上げる。
ユキは言っていた。闘気とは闘志であり、闘志とは勝利を得る為の意思、渇望であると。
目蓋を持ち上げる。
そこにあるのは、ユキが用意した木の人型。
腰に添えられた武器は、それと同じ素材の木刀。
練り上げた私の魔力に、意志を込める。
ユキは言っていた。信ずればこそ真に叶う。
信じよう。ユキの作ったこの刀で、あの人形を両断出来ると。
研ぎ澄ました闘志を刀に送る。
そして——
「はっ!!」
——一閃。
「…………?」
振り抜かれた刀を見る。
次に一切変化のない人形を見る。
「……?」
……あ、当たらなかった訳では無い筈……でも手応えが無かった……なんでぇ?
私が困惑して固まっていると、横あいからユキがヒョコっと現れた。
ユキがつんと人形を押す。すると——
——ずずっ……がしゃんっ!
「!???」
——人形が上下に分かたれた。
その断面は滑らかで……胴体の殆どをメタリックな輝きが占めている。
…………え? もしかしてこれ、私が切ったの? ……いやいや、ユキが触ったら動いたからユキがやったのよね? 第一木で木を切るならともかく、木で金属を切れる訳がないもの……。
つまりユキが指で金属を切った。これが正解だわ! あれ? ちょっと違和か——いやいや、気のせいね!
混乱する私に、ユキがパッと振り返った。微笑みながら両手を大きく広げて。
条件反射的に抱き付く。
「おめでとうチサト。闘気の質は現状3位ってとこかな? 流石チサトだねぇ」
「んふ——こほん。ふふ、ユキの教えが良かったのよ」
「皆僕が教えてるけどね」
そうだった。
何か言い訳を考える前に、ユキの胸元に顔が埋まった。
「よしよーし」
「んふふ♡」
「因みに1位はマシロ。2位はリナとチアキ。3位が同率キリカ。4位がタクとアランとアヤ。量は1位がマシロで2位がリナとアラン。3位がタクとシキナで4位がマヤとアヤ。チサトは6位くらい」
「…………実質5位くらいね」
となると1位のマシロさんはもっと凄いご褒美を……?
「むぅ……」
「? ……一応今日の内だけど、何日分も待たせるのは悪いから、今やっちゃうね」
醜くも嫉妬する私を、ユキは優しく抱き締める。
も、もしかして……ご褒美タイム……?
「あ、ダメ……人が来ちゃう」
「ん? 来ないよ。その為に最後にしたんだし」
い、良いのかな? ユキが言うんだから、良いのよね?
……神聖な訓練場でなんて……!
「ん……チサト、もっと強くしても……良いんだよ?」
「ユキ……そんなこと言ったら……!」
我慢……出来なくなっちゃうんだよ……?
………………でも、ゲームだから痛くないしね。とか思ってるんだろうなぁ。むぅ……ギリギリまで攻めてみようかしら?
◇◆◇
激しい精神疲労からかいつになく甘えてくるチサトのガス抜きを終え、自習という形で時間を取り、昼食を終えた。
本日の午後は……シエスタの修行である。
……実の所、殆ど皆平気な顔しているが、実際に闘気を操作した疲労は今までに無い形で蓄積されている。
その最たる要因は、皆が高いレベルで闘気を練り上げたからと言うのが大きい。
初めてにして上出来だったのだ。それは過剰と言い換えても良いだろう。
まぁ、操気法から闘気法までが早かったのも一因だし、しばらくは操気、練気、闘気の反復練習になるだろうね。
闘気法を十全に扱える様になれば、晴れて皆は『霊身』の壁『生体限界』を越えて『天身』に至る権利を取得出来る。
そんな訳で、各員には疲労回復用の特別なベットでしっかりおやすみして貰う。直ぐ寝れる様になる修行だ。
黒霧仕込みの入眠ベットなので……何かしらイタズラされる可能性も否定出来ないが、すっきり爽快な目覚めを約束するかもしれない。
さて、僕はその間に、比較的弱めの子達から確認してまわろうか。




