第2話 出発前のひととき
第四位階上位
集合時間よりも早くに集合場所に行くと、其処にはロリーズが集まっていた。
具体的には、マヤ、アヤ、双子、である。
マヤは身長を弄っているので(確信)一応ロリーズに含まれる。
その中に一人混じっている男が、タクだ。
仄かな犯罪臭を緩和する為にも僕は声を掛けなければならない。
「やぁ皆、早いね?」
「おぉ、ユキと……誰だ?」
「おにぇちゃんはまた女の子を引っ掛けて……」
「わぁ! 可愛い!」
「わぁ! 強そう!」
「……ふむ、ユキは女たらし、と」
人聞きの悪い事を言わないで欲しい。
まぁ確かに、良い人材を味方に引き込むのは鈴守の家訓なので、女たらしは間違いでは無い。
強いて言うなら人たらし……いや、生物たらし? ……ゴーレムは生物?
取り敢えず白雪を紹介しよう。
人見知りを発動させ僕の後ろに隠れている白雪、元来気が強い為か、僕の片腕にしがみ付いて半身だけ出している。
「皆、紹介するよ、彼女は白雪。仲良くしてあげて欲しいな」
「うんうん、白雪ちゃんだね! よろしく!!」
アヤは割と人見知りする方だが、白雪に対してはそうでも無いらしい。
まぁ、僕が連れていると言うのも大きいのだろうし、何より女の子同士だからね。
人見知り度で言うなら、アヤが近寄って来た時に僕の後ろに隠れて顔を出すだけになった白雪の方が上である。
「おっと」
「ひゃ!?」
「にゅふふー」
アヤは隠れたとかはお構いなく、僕ごと白雪を抱き締めた。
白雪にも紹介しなくちゃね。
「白雪、今抱き付いてるのが僕の妹のアヤ、あっちの蒼鎧のデカイのが親友のタクで、双子がアヤの親友、魔法使い風のがマヤだよ。仲良くしてね?」
「う? ユキの……妹?」
「うん、おにぇちゃんの妹のアヤです! 白雪ちゃん、よろしくね!」
アヤにそう声を掛けられると、白雪は途端に人見知りが抜けたらしく、アヤが抱き締めるのを止めた後、僕の横に出て来た。
「そ、そう言う事ならあたしの妹も同然ね! よろしくしてあげるわ!!」
何故にアヤが白雪の妹になるのかわからないが、仲良く出来そうで何よりである。
「あーそうなのー……ユキねちゃん、ちょっとあっちでアヤと、お話し、しようか?」
「良いわよ、ふふん、お姉ちゃんに甘えさせてあげるわ!」
ユキねちゃんとはシラユキお姉ちゃん、の略称だろうか? アヤにしか出来ない呼び方である。
それはそうとアヤの雰囲気が少し変わったが……これは偶に見られる謎の現象だ。
僕の周りの女子は、僕の子供っぽい見た目のせいか執拗に世話を焼こうとしたり、あるいは甘えて来たりするのだが、アヤと仲良くしているとそう言う事が少なくなるのだ。
経験から言うと、アヤの前や近くにアヤがいる時はそう言った事は殆ど見受けられない。
僕は子供の時から、何をされてもあまり気にせずされるがままにする傾向があるのだが、世話好きな所のあるアヤは自分で僕の世話をしたいのだろう。
僕としてはどう転んでも有難いので問題は無い。
門から少し離れ、此処からは見えない所に行った二人を見送ると、何故かプルプルと震えて抱き合っている双子の方へ近付いた。
「あわわわわわ、キョウちゃん!」
「はわわわわわ、リッちゃん!」
「……二人共、どうしたの?」
「「な、何でも無いです!」」
よくわからない状況に、マヤはキョトンとしタクは何故か遠い空を見上げている。
それはそうと、インベントリから二本の杖を取り出し、震え上がっている双子に渡した。
「これ、あげるね」
「はひっ!? い、頂きます!」
「はわっ!? た、賜ります!」
「……本当に大丈夫?」
「「だ、大丈夫であります! ユキ閣下!!」」
大丈夫なのか大丈夫じゃ無いのか判断つきかねるが、一応武器は渡せたので良しとする。
待つ間は暇なので、マヤと会話する。
タクは放って置いても構わない間柄だが、今回の殲滅戦ではセイト達に対しては僕はホストである。
「マヤ、これあげるね」
「有難う、貰う」
「マヤ、武器の調子はどう?」
「ん、絶好調、ユキのおかげ」
「そっか、それは良かったよ。普段は何処を攻略してるんだい?」
「……北か西、西は簡単だから昨日は西」
「そう、確かにある程度武術を習っていればゴブリンの動き方は拙く見えるかもね……マヤは武術を習っている様には見えなかったけど……?」
「ん、最近習い始めた」
「それなら安心だね」
「ユキのおかげ、感謝」
インベントリのスキル結晶を渡し、その後そんな会話をしていると、他のメンバーがちらほらやって来た。
先ず最初に来たのはアランだ。
「やぁ、アラン、早いね」
「そう言うユキはもっと早いがな……今日はよろしくな、タク」
「おう、こっちこそ」
そう言うと、アランとタクは拳を合わせた。
いつの間に仲良くなったと言うのか、武器の事やら狩りの事やら話し始めた二人。
人が仲良くなるには共通項があると良いと言うが、タクとアランは……イケメン? ともあれ、仲が良いなら良きかな。
続いて現れたのはケイとミサキ、てっきり女子組は全員で来るものと思っていたが……。
「やぁ、すず……コホン、ユキ君。早いね」
「ユキ、この大剣有り難く使わせて貰ってるわ!」
「それは良かったよ、ついでに二人にこれをあげるね」
そう言うと、インベントリのスキル結晶を取り出し、渡した。
「これは……噂のスキル結晶ね!」
「ほぉ、良いのかい? 何だか凄く高いらしいけど……」
「ふふふ、ケイとミサキに使って欲しいんだよ」
「そ、そう、じゃあ貰っておくわ」
「う、うん、頂くとするよ」
「それで、センリとユウミはどうしたの?」
「二人ならポーションの買い出しに行ってるよ」
僕がニコリと微笑むと、頰を赤くしてスキル結晶を受け取ってくれた。
変にごねられても面倒なので、多少は演技もするのである。
続いてやって来たのがセイトとマガネ。相変わらずの重武装である。
「セイト、マガネ、おはよう」
「ユキさん、おはよう」
「ユキ、今日はよろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくね」
早速インベントリから例の鎧を取り出す。
「セイト、これをあげるよ」
「へ? こ、これ……凄く良いものなんじゃ……」
「受け取ってくれるよね?」
「え? ……うん、わかった……この鎧に相応しい男になってみせるよ!」
しばらくマガネみたいにごねるかと思ったが、何やら決意した様な表情を見せると、鎧を受け取ってくれた。
ついでに、セイトには聖剣術、マガネには聖盾術のスキル結晶を渡しておく。
所謂投資と言う奴である。
二人は素直に受け取ってくれた。
「……これが『聖盾術』のスキル結晶……」
「……ど、どうしよう……いやどうするも何も使うしか無いんだけど……えっと、幾らぐらいしたっけ……?」
「確か……七百くらいだ」
「ななっ!?」
二人がスキル結晶を持つ手が震えている。
スキル屋の情報は既に専用掲示板で知れ渡っている様なので、その価値を知っていたのだろう。
ちゃんと情報収集している様で何より。
次にやって来たのがユリちゃんとミユウちゃんだ。
「おはようございます、ユキさん」
「お待たせしてしまったでしょうか?」
「ううん、まだ時間前だよ」
「それは良かったです」
「ミユウちゃん、これをあげるね」
インベントリから取り出したのは装飾の少ない例の剣。
「い、頂きます」
「?」
どうしてか、器用に嬉しい様な顔と警戒する様な顔を同居させたミユウちゃん。
キョロキョロと目だけで誰かを探している様だが……アヤの事かな?
次に来たのはセンリとユウミ。
「ユキ君、お待たせ!」
「遅くなってしまったかしら?」
「ううん、時間前だよ、まだ一人来て無いしね」
嬉しそうに駆け寄るユウミと、少し心配そうに皆をみるセンリ。
集合時間にはまだ少し時間があるので、何ら問題は無い。
「センリ、ユウミ、武器の調子はどう? 問題なく使えてるかな?」
「うん! ユキ君の杖、殴るのにも使えるし魔法の威力も上がってるみたい」
「ええ、とっても。刀みたいで使いやすいわ」
「それなら良かった」
ユウミは完全に後衛の筈だけど……まぁ、良いか。
そして最後にやって来たのがクリア、時間ぴったりである。
此方に走って来ているクリアは、体格の割に大きな胸がゆらゆらと揺れて大変そうである。
「はぁはぁ、すみませ〜ん、遅れましたぁ〜。きゃ!?」
「ふむぎゅう」
走り寄って来たクリアは何が原因か不明だが、僕の前ですっ転び僕を押し倒した。
僕の身内ではかなり上位に入るその巨乳が、僕の顔を押し潰している。
受け身もとったし、下手に転がられて怪我をされても困るのでしっかりと抱き留めてある。
レベルの恩恵が大きいので、僕は全くの無傷である。
「イタタタタ……はえ?」
「フモフ」
「はひゃ!? ご、ごめんなさい!」
「……いや、良いよ」
僕はそう言うと、体をクリアごと抱き起こした。
側から見ると、軽々とそんな事が出来る僕は凄い怪力に見えそうである。
これで全員が集まった。
アヤと白雪もお話しが終わったらしく、妹組同士で集まっていた。
ともあれ、出発である。
「それじゃあ皆、行こうか」
それぞれの上げる返事が、澄み渡る空に響き渡った。




