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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
二日目
15/223

「今日の午後は、ずっと上の空でしたね。もしかして、昼食時のこと怒っていらっしゃいますか? それとも、気付かないうちにコノ、悪いことをしていましたか?」

 午後の授業が終了すると、心配そうに堂本さんが問い掛けてきた。どうしよう。


 ①怒っている ②悪いことしていた ③なんでもない


 ーここは③に致しましょうー


 堂本さんのせい、それは本当かもしれない。

 怒っているとか、彼女が悪いことをしたとか、そんなはずはない。

 ただ、彼女のせいで……、俺はあんなに嬉しかったし、喜んでいたから授業は上の空になってしまっていたわけだし。

 そのことを全て考えたら、やはり堂本さんのせいといえるのだろう。

 っていやいや、んなわけあるかい。

 自分でツッコミを入れて、俺は首を横に振った。

「ううん。なんでもないんです。ちょっと、食後で眠くなっちゃいましたかね」

 いつも以上に眠気さっぱりな今日午後だったが、そう言うとわざとらしく欠伸までしてみせた。

 ごめん、堂本さん。

「そうですか。なら、良かったです」

 微笑んで、堂本さんは荷物の支度を始めた。

 その微笑みは儚げで美しく、それが普段の堂本さんが浮かべている笑みと、同じものとはとても思えなかった。

 だって俺は、堂本さんのことを友と思っているはずだから。

 お互いに同志と思っているはずだから。

 悪戯っぽさと遠慮の混ざった、彼女の笑みとは全く別の微笑みに感じられた。どうしよう。


 ①この気持ちを知りたくて ②答えを知りたくて ③何も知りたくない


 ーここでも③になるのだそうですー


 堂本さんの微笑みが、頭から離れない。

 女の子と隣の席とか、ラッキー。女の子に話し掛けて貰えるなんて、ラッキー。

 そう思っていたけれど、堂本さんとは普通に友だちとして接したいとも思うんだ。

 友だちとして、隣で一緒に、リア充への道を歩んで欲しいと、そう考えているんだ。

 だからこの気持ちがなんなのか、その答えなんて……、何も何も、知りたくなかった。今はまだ、何も知りたくなかった。

 その意味では、美少女のストーカーをするのも悪くないのかもしれないね。

 そんなのは、俺の勝手な事情だし、俺の勝手な気持ちだけど。

「あんまり、無理はしないで下さいね?」

 また妄想をしていた俺を見て、心配でもしてくれているのか、堂本さんは笑い掛けてくれる。

 彼女はこんなにも優しいのだから、俺のせいで変化を起こしたくはない。やっぱり、彼女とは友だちのままでいたい。

 帰宅してからも、彼女の微笑みを忘れられなかった。堂本さんの微笑みの虜になったままで、俺は自分の家に倒れ込む。

 どうしてだろう。

 女の子とそれなりに会話も出来ているし、去年までの俺からしたら完全なるリア充状態じゃないか。

 まだリア充になりきれているとは言えないけれど、このままいけば恋人だって出来るのかもしれない。

 そんな夢さえ見られるほどに、今年は綺麗な女性との出会いに満ちている。

 それだったらどうして、俺はこんなに悲しいしこんなに苦しいのだろうか。俺は、リア充になってはいけない存在なのか。

 いやいや、それはいくらなんでもあんまりだ。

 いつまでも家の中に籠もって、転がっているような男だからなのかな。どうしよう。


 ①買い物 ②勉強 ③運動 ④ゲーム ⑤風呂 ⑥食事 ⑦寝る


 ーここは①にしますー


 荷物を置いて、怠い体を起こす。

 夕食に使うための食料が、もう残っていない。

 仕方がない。買い物に、行かないといけないな……。

 とりあえず弁当の中身は完食して、洗って拭いて片付けまですると、冷蔵庫の中に足りないものを確認する。

 うん、何もかもが足りていないね。

 元気を出して、買い物に行くしかない! どうしよう。


 ①コンビニ ②商店街 ③その他


 ーここは②でしょうねー


 この乏しい財布。コンビニで買い物なんてする気にはなれない。

 しかし、体は怠いし動きたくないし、遠くになんか行きたくないし。

 人見知りのくせして、知らない人との会話をし過ぎちゃったかな? それで疲れちゃっただけだよね、きっと。

 体を奮い起こして自転車に跨ると、商店街を目指して漕ぎ始めた。

「あらま。今日もまた商店街にいるのね。ってことは、どうせ金欠なんでしょ? ほら、これあげるわよ」

 少ないお金で何を買おうかと、迷いながら彷徨っていると、そう声を掛けられた。

 肉屋のおばちゃんである。どうしよう。


 ①貰う ②貰わない ③逃げる


 ーここは①でいいでしょうー


 何をくれるのだろうか。何をくれるのだとしても、貰えるのならばありがたい。

 糸で引かれているかのように俺の足はそちらへと向かい、いつの間にか目の前にまで歩いて行っていた。

 いやぁ、飢えって本当に怖いね。

「お食べなさいよ」

「あっ、ありがとうございます」

 コロッケ、だろうか。

 俺はコロッケ屋に来た覚えはないのだが、なぜか熱々のコロッケをくれるというので、ありがたく貰う他ない。

 肉屋だから、肉をくれるのかと思った。

 八百屋がくれるのはいつも野菜だけだからね。

 でも確かに、いつも飴をくれるおばちゃんは別に飴屋じゃないもんね。

 そんなことを思いながらも、絶品コロッケを頬張る。

 食べている姿を隣りで眺めている、この視線はちょっと……辛いけど。どうしよう。


 ①気にしない ②罵倒 ③逃げる


 ーここは③を選びますー


 見られながら食べるのは嫌だから、俺は軽く逃げ出そうとした。

 走ればさすがにバレるから、自然と歩いて立ち去れば大丈夫かと思ったんだ。

「あら、どこに行くの? ここで食べて行きなさいよ。なんなら、お夕飯もうちで食べていっていいわよ」

 笑顔で俺の首根っこを捕らえると、迫力のある声でそう言った。

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