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「ねえねえ、何部に入ろうと思っているの? 一年ごとに部活を変えられるって言うと、他の学校よりも気軽に入れていいよね。なんか、生徒が楽しめるように努力してる、って感じがこの学校は最高じゃん」
思ったこともなかったな……。
三年生だからって経験者とは限らない。三年生だって、一年生と同じ一年目かもしれない。
それでも、一年生で気軽に入る勇気はないだろう。どうしよう。
①肯定 ②否定 ③曖昧に
ーここで③しか選べないんですねー
彼女の言葉に肯定しても、それは俺にとっての嘘になってしまう。
だからといって、同意を求められたこの言葉に、否定なんて出来ようものか。
「あぁ、うん、そうだね」
はっきりと「はい」とは言いかねたから、なんとなく、やんわりと返事をしておいた。
「あっ、学校が見えてきたね。ここから競争だよ」
質問の内容は、何部に入ろうと思っているかだったはず。
しかし答えに興味などないのか、そんなことを言って走り出してしまった。どうしよう。
①追い掛ける ②競争する ③放っておく
ーここは①を選べるみたいですー
走って行ってしまったので、俺は慌てて追い掛ける。
かなり余裕を持って出てきたと思ったのに、時計を見ると遅刻の危険すらありえる時間だった。
「えっあれ、先輩だったんですか? 僕、てっきり同級生とばかり思っていました。ごめんなさい」
二年の昇降口へ行った俺を見て、驚きながらそう言われてしまった。
学年によって名札の色が違っているのだから、学年はわかるはず。そこまで俺は、疑うまでもない一年生だったのか。
もっと先輩風を吹かせた方が良かったのかな。
いや、それはそれで駄目なのか。
「え、あ、……え?」
一方の新木さんの方は、そんなことは全く気にもしていなかったらしい。いつの間にかもう教室へ向かっているのか。
彼女にとって俺はその程度の存在だったのね。
なんて適当なことを思いながら上履きを履いていると、戸惑い気味にこちらへと向く視線に気が付いた。
「あ、あなたは」
俺もそちらへ視線を向け、戸惑うこととなった。
間違いない。昨日、銭湯で出会ったあの美女である。どうしよう。
①話し掛ける ②抱き締める ③教室へ急ぐ
ーここも①ですー
これほどの美女と接せる機会は、これからの人生でもう二度とないだろう。
俺は運が良かったものの、運が悪ければ一生出会えないレベルの絶世の美女だ。美しさも可愛さも持ち合わせている、もはや完璧としか言いようがないだろう。
他の人にどう見えているかは知らないが、少なくとも俺の中ではナンバーワンだ。
「同じ学校の、それも同じ学年だったんですね」
知らないふりして去ろうとしていた彼女だが、話し掛けてしまえばそうするわけにも行くまい。
とりあえず、遅刻してはいけないので歩きながら、彼女との会話に挑むことにした。
二年生の教室は二階。クラスにはよるが、そこそこの時間を稼いでくれるのではないだろうか。
「ええ、そうだったみたいね。あのときは、本当にごめんなさい。迷惑を掛けてしまったかしら」
詳しく自分のことを知られたくはないのだろう。まあ、それも当然といえば当然なのだが。
彼女はなんの情報も与えないような言葉で、時間を潰そうとしているように思える。
「いいえ、迷惑だなんてとんでもありません。周りに小さい子供なんていないもので、とても癒やされましたよ」
それであなたに会えたのだから。
そう言おうと思ったのだけれど、それは言えずただのロリコンみたいな感じになってしまった。
俺はこんなことを言いたかったわけではないんだよ……。そうじゃないのだよっ!
何も考えずに、ナンパを簡単に出来ちゃうくらい、チャラ男になれたら彼女だって作れるのかな。
そんな男になれたら、このお方の個人情報を安々と手に入れて、あくまでも自然に仲良くなれたりするのかな。
ただの友達としか思っていないって、そんな顔して彼女の隣にいられるのかな。
自分が持ち合わせていないそのスペックを恨みながらも、俺は俺のやり方で、俺なりに頑張ってみようと思った。
「あの子は、親戚の子とかなんですか?」
春香ちゃんはかなりの幼女に見えたので、俺はそう問い掛けてみた。
高校生であることが判明したのだし、きっと娘ってことはないだろう。ない、よね?
「妹よ」
最低限の返ししかしてくれないようだが、今回は彼女の情報をもらえた。
まずこれで、妹の存在を知ることが出来たのだ。そこそこに懐いてくれていたみたいだし、この感じだったら自宅にお邪魔することも叶うかもしれない。
無邪気な子供を利用することに、もちろん罪悪感はあるけどね。
って、そうこうしているうちに、一番奥の教室まで辿り着いてしまっていたらしい。どうしよう。
①あと少しだけ ②教室に帰ろう ③絶対に引かない
ーここは②を選ぶしかないでしょうー
どうやら彼女は二年一組だったようで、二年生としては最も長い時間を一緒にいられたことになる。
クラスは九つあるので、九組だったりすると階段上がってすぐなので、ほとんど一緒にいられる時間はない。
それに比べて、一組ならば廊下の端まで一緒にいられるのだ。
そのことに喜びを感じながらも、彼女が俺のことをどう思ったかふと考える。
同じクラスじゃないことは、さすがにわかっていただろう。それだったら、どこまで着いてくるつもりなのか、そう思っただろう。
こいつは何組なのか。どこの教室へ入ってくれるのか。
それを待っていたのに、予想外に一組までやってきて、戸惑っているのではないだろうか。
戸惑うだけならばいいのだが、怪しんだり気持ち悪がったりはしていないだろうか。どうしよう。
①構わない ②謝って帰ろう ③気にしない
ーここも②を選びますー
気付かずここまできたのは本当だから、大丈夫だよね。
「ごめん。人と話すことが少ないから、あんまり慣れなくて、嬉しくて、いつの間にかここまで来ちゃっていました。ごめんなさい。俺も、自分のクラスに帰りますねっ!」
あえて彼女には何も言わせず、そこまで言うと廊下を猛ダッシュした。
この行動が彼女に何を思わせたかはわからないが、俺としてはよくやったと思うし満足している。




