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第81話 王都出発

 一週間の準備期間を経て、王都を出発する当日となった。

王宮から馬車が用意され、形式上は大使として赴く為、王宮騎士が護衛として付くことになった。


 陛下はヴィムに護衛など付けたら足手纏いだろうと笑っていたが、これは必要なことらしい。


 馬車には王家の家紋とアーベル家の家紋が入ったものの二種類だった。

ヴィムもこの国ではそれなりに有名人と化している。

Sランクの冒険者が乗っている馬車とわかるように家紋を入れているのだ。

ヴィムが乗っている馬車を襲おうとするのはよほどのバカかヴィムのことを知らない人物だろう。


「ヴィムさん、道中同行させていただきます」


 そこには第三騎士団の団長を務めているカミルさんの姿があった。


「カミルさん、ご無沙汰してます。カミルさんなら安心だ」


 カミルさんとは以前、スライムの討伐で一緒に戦った。

剣の腕に関しては王国でも右に出る者はいないだろう。


「いやいや、ヴィムさんなら我々の力なくても余裕でしょう」


 カミルさんは苦笑いを浮かべながら言った。


「そんなことはありませんよ。人数が多い方が襲撃される可能性は少なくなりますから」


 人数が多くなると連携を上手くとらないといけないが、その分賊も大所帯の旅人は狙わない傾向にある。

まあ、あくまでも傾向があるというだけなので、油断をしていると足元を掬われることになる。


「初めましてですよね。第三騎士団を預かっています、カミルと申します」


 カミルさんはミサの方を向いて言った。


「初めまして。ミサ・フルメンと申します」

「よろしくお願いします」


 そう言うと、二人は握手を交わした。


「じゃあ、出発しますか」


 ヴィムはハナとミサに手を貸して馬車に乗せる。

そして、自分も馬車に乗り込んだ。


 ここからグリフィントの皇都までは順調に進めば二週間ほどである。

三週間で着いたら御の字という所だろうか。


 そして、馬車はゆっくりと動き出す。

地面を踏む蹄鉄のが規則正しく聞こえてきて、馬車は徐々にスピードを上げて行った。


「長旅になりそうですね」


 隣に座るハナが口にした。


「ハナは国境を越えるのは初めてか?」

「はい、こうした形で国境を越えるのは初めてですね」

「じゃあ、楽しみだな。俺もグリフィントは初めてなんだ」


 ハナはずっと奴隷として生活してきたし、猛毒に侵されていた。

国境を跨ぐということはなかったのだろう。


 ヴィムもずっと帝国で宮廷魔術師をやっていたので、他国を知らない。

知っいるとすればレオリアくらいだろう。


 帝国もどちらかといえば軍事力中心の国だった。

だからこそ、今から向かうグリフィント皇国には興味がある。


「グリフィントは神への信仰が深い国らしいですよ」


 ハナとは反対側のヴィムの隣に座るミサが言った。

ヴィムは今、ハナとミサに挟まれている形なのである。


「へぇ、文化の違いってのは面白いな」


 レオリアは実力主義国家という特性からか、神への信仰が厚い人間はそう多くない。

ヴィムたちは新しい地への期待を膨らませながらレオリア王都を出発するのであった。

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