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第76話 迷宮最深部

 階層を降りるたびに、マナ濃度はどんどん濃くなっていき、耐性が無いと相当辛い状況だった。

それでも、ヴィムたちは順調に階層を進んで行った。


 ここまで来る道中でヴィムの答えは決まっていた。

間違いなく、ここはS級の迷宮である。


 そして、階層は12階層まで到達していた。


「そろそろだな」


 ヴィムは感じていることがあった。


「何がですか?」


 ハナがヴィムに尋ねた。


「迷宮最深部だ」

「え、もう、そんなに来ていますか?」

「ああ、マナの感じと魔獣の様子を見ると間違いない。最深部が近づいてきている」


 迷宮になれると、感覚的にわかるようになるのだ。


「どうする? 今ならまだ引き返すことができるが」


 迷宮の最深部に行くと、迷宮の守護者が存在する。

その力は圧倒的なものとされている。


 ヴィムも一回戦ったことがあるが、普通の魔獣とは比べ物にならないくらいには強い印象を受けた。


「ここまで来たら行きたいです! 最深部!」

「私も、自分の力がどこまで通用するかは試してみたいと思うな」

「分かった。じゃあ、行きますか」


 2人ともやる気に満ちていた。

フロアの守護モンスターと戦った時を見ても、連携は取れていたので、余程のことがなければ大丈夫であろう。


 ヴィムたちは更に一階層降りた。


「来たか」


 13階層にはマナが漂っていなかった。

これが意味することはもう、わかるだろう。


「次の階層に強力な魔獣がいるんですね」

「ああ。おそらく、次の階層が最深部だろう」

「いよいよですね」


 ハナはどこか緊張している様子だった。


「覚悟していくぞ」

「「はい」」 


 そう言うと、ヴィムたちは次の階層へと足を踏み入れた。

やはり、そこが最深部だったらしい。


 迷宮の最深部によくある作りをしていた。

フロア守護者と同じく、検知範囲に入ったら守護者が登場するといった寸法だろう。


「行こうか」


 ヴィムたちは、守護者の検知範囲に入るためにフロアの中央へと向かって行った。

そして、もう少しで中央と言う所で守護者の検知範囲に入った。


「来たか……」


 そう言って、ヴィムは少し口角を上げた。


 ヴィムたちの目の前に現れたのは、真っ黒なワイバーンだった。

口からは青白い炎を吹き出していた。


「距離取るぞ」

「「はい」」


 ヴィムたちは一度、ワイバーンから距離をとった。

通常のワイバーンよりかなり強い魔力を感じる。


『防御膜』


 ヴィムは2人に先程かけた支援魔法の上から更に強い防御系統の魔法をかけた。


「凄い……」

「驚いている時間はなさそうだぞ」

 

 ワイバーンはこちらに向かってきていた。


 ハナとミサは剣を構えた。


『風の精霊に願い奉る! 切り裂け!!』


 ヴィムは風の刃をワイバーンの羽の部分に放った。

どこの世界でも空を飛ぶ敵は厄介なものである。

だったら、空を飛べなくしてしまえばいいのだ。


 ヴィムの魔法は見事にワイバーンに命中した。

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