第73話 迷宮調査②
しばらく歩いていると、3階層へと降りる階段を発見した。
今回は調査であり、攻略を目的としているわけではない。
その為、最深部までは潜らなくても問題にはならない。
この迷宮がどの程度のランクであるのかを報告することが任務である。
「このまま、行けるところまで行ってみる?」
ヴィムはハナとミサに尋ねた。
「そうですね。もう少し潜ってみてもいいと思います」
「私もです」
「よし、わかった。じゃあ、行きますか」
このメンバーなら、ある程度のところまでは大丈夫だろう。
何なら、最深部まで進めるかもしれない。
まあ、いざとなったらヴィムの魔法があればどうにでもなるとは思う。
ヴィムたちは3階層へと続く階段を降りた。
「おお、これは酷いな」
「ですね」
3階層に足を踏み入れると、そこは更に荒れていた。
まあ、人が入らない迷宮なので、ある程度荒れていることは想定していたがここまで荒れていると進むのも一苦労である。
「だいぶ荒れているから気をつけて進むぞ」
「「はい」」
ヴィムはライトの効果範囲を広くした。
そして、索敵魔法の効果範囲を少しだけ狭くした。
マナ濃度が更に濃くなっているため、索敵魔法の精度は少しでも上げておいた方がいいだろう。
ヴィムたちはとにかく前へと進んでいく。
「前から来るぞ」
索敵魔法に魔力生命体が引っかかるのを感じ取った。
個体は一体だが、感覚的に強い魔力エネルギーを感じる。
油断はできない相手だろう。
ヴィムがそういった数十秒後、正面に魔獣が現れる。
熊のような見た目の魔獣だ。
「行きます!」
「ほどほどになー」
ハナが熊の魔獣に向かって突っ込んでいく。
魔獣の方もハナの攻撃を察知して、爪を立てて攻撃をして来る。
『爆ぜろ』
ヴィムは炎魔法を応用させて、熊の魔獣の顔面に向かって爆発を起こした。
魔獣の動きがそれによって鈍くなった。
「はぁあ!」
ハナは一気に懐へと潜り込んだ。
そして、熊の魔獣の胸の位置に剣を突き刺した。
『ガルルルルゥ』
魔獣は地面に響くような大きな咆哮を上げた。
胸からは血をダラダラと流している。
それでも、まだ絶命には至っていない。
そして、魔獣はハナに向かって牙で攻撃を仕掛けてきた。
その時、ヴィムの後ろからものすごい勢いでミサが移動した。
魔獣の攻撃を剣で見事に防いでいる。
「ハナさん、今です」
「はい!」
ミサの声でハナは魔獣の後ろに周り込んだ。
魔獣の首の部分に剣で切り込んでいった。
首の半分ほどまで剣は貫通して、熊の魔獣はその場に倒れた。
そして、再び起き上がることはなかった。
「2人ともお疲れさん。見事だね」
「ありがとうございます」
「ヴィム様の魔法での援護があったからですよ」
2人はそう言うが、今回ヴィムは特に何もしていない。
実際に致命傷となる一撃を与えたのはハナである。
こうして見ると、ハナも成長したなと感じる。
「でも、結構強かったな」
「ですね」
このレベルの魔獣が3階層の段階で現れるということはS級指定の迷宮という推定が正しいと思う。
A級の迷宮でもこの強さの魔獣なら最深部に近いところでしか現れない。
「気をつけて進むぞ」
「はい」
ヴィムたちはライトで照らしながら、迷宮の中を再び歩き始めた。
そこから、特に大きな魔獣と遭遇することはなかった。
ウルフ程度の魔獣ならヴィムの魔法で焼き払ってしまった。
「お、あったな」
歩くこと数十分で次の階層へと続く階段を見つけた。
「降りましょう」
「ですね」
ハナを先頭に階段を降りた。
「え、随分と狭い階層ではないですか?」
ハナが驚いたような表情を浮かべながら言った。
確かに、すぐに見渡せるような狭い階層が4階層であった。
「これは、きたか……」
「そうだと思います。マナも無いようですし」
ミサはすでに気づいているようであった。
「次の階層に階層の守護者が居るな」
「何ですか? それ」
「ハナは知らないかもだけど、迷宮には階層を守る守護者と呼ばれる魔獣がいるんだよ」
本来であれば4階層にもマナが充満し、魔獣が存在するはずだ。
しかし、それが全く無いということは何を意味するかと言うと、次の階層に強力な魔獣が存在するということだ。
5階層のマナだけでは足りずに、4階層のマナも使用しているのである。
そのため、4階層はこんなに狭い作りになっているのだ。
迷宮を攻略する冒険者たちからは魔獣が出現しない為、安全エリアとも言われている。
冒険者たちの休憩エリアとなっている。
「さて、守護者倒しに行きますか」
「行きましょう」
「私、大丈夫ですかね?」
ハナは不安気な表情を浮かべていた。
「ハナは強いから、大丈夫だ。それに、今回は俺もちゃんと参加する」
「分かりました! 頑張ります」
「よし、じゃあ気を引き締めていくぞ」
ヴィムたちは次の階層に進む階段を降りた。
「流石にマナが濃いな」
4階層にマナが存在しなかった分、5階層のマナは相当濃いものになっていた。
耐性が無い状態だと、泡を吹いて倒れるレベルだ。
5階層は何も無い平地状態だ。
おそらく、守護者の検知範囲に入ると守護者が現れるという寸法だろう。
「さてさて、どんな守護者ちゃんかな」
ヴィムたちは守護者にお目にかかるべく、5階層の中央へと向かった。
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