第66話 正義の代償
王都から冒険者の街まではコンスタントに行けば3日ほどで到着する。
それなりに長い時間馬車に揺られることになるだろう。
「さてと、暇ですな」
ここからは暇との戦いでもある。
これは毎回思うのだが、馬車に乗っている間にやることはほとんどないと言ってもいいだろう。
「一応、展開しておくか」
ヴィムは索敵魔法を展開する。
まだ、道も整備されているので魔獣や盗賊といった被害は少ないと思うが、用心に越したことはない。
ハナとミサは世間話に花を咲かせている。
すっかり打ち解けてくれたようで何よりだ。
俺は何となく窓の外を眺めていた。
そして、少し昔の事を思い出していた。
ヴィムがサイラス帝国から幽閉されたのが、約2年前。
レオリア王国に来てからが1年が経過しようとしていた。
この一年はいろんな出会いがあった。
「随分と賑やかになったよな。俺の周りも」
帝国に居た時は考えられなかったような状況が続いている。
ヴィムは間違ったことは間違ってると言わなければ気が済まない性分だった。
その為、帝国の上層部でも対立することは少なくなかった。
しかし、先代の皇帝はヴィムの意見もしっかりと耳を傾けてくれた。
公爵も後ろ盾になって守ってくれた。
それが、代替わりしたことで一変した。
完全なる身分主義に度重なる増税。
このままでは帝国は衰退していくことが素人でも目に見えてわかってくる。
「ヴィム様、何か嬉しそうですね」
ハナがヴィムの表情を見て口にした。
「ああ。嬉しいよ。帝国を去ったことで素敵な出会いに恵まれた」
「私も、ヴィム様に出会えてよかったです。もう、死を待つしか選択肢はないと思っていましたから」
確かに、あのままヴィムが治療せずに放っておいたら長くは持たなかっただろう。
まさに、あれは運命的な出会いだったと言える。
「私もですよ。ヴィムさんみたいな方と行動を共にすることができるのは騎士の誇りです」
「ありがとう。俺もミサの腕には期待してるよ」
「任せてください!!」
まだ、しっかりとこの目でミサの実力を見たわけではないので分からないが、陛下のお墨付きともなれば相当なものなのだろう。
レオリアは実力主義国家。
そのトップに立つ国王は相当な実力者であると言える。
普段は温厚なレオリア国王も怒らせると怖いらしい。
武道だけではなく、勉学も優秀だとか。
「そろそろ最初の街を通り過ぎます」
御者台の方からロルフの声が飛んできた。
王都を出発してから4時間と少しで最初の街に到着したようである。
しかし、この街には特に用事がある訳ではないので、そのまま素通りする。
そこから、馬車はさらにスピードを上げて進んでいく。
地面を踏む蹄鉄の音が規則正しく聞こえてくる。
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