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第46話 ラーディア領

 馬車はこの街では大きな屋敷の前に停車した。


「到着しました。まずはここの領主様に我々でご挨拶したいと思います」


 やはり、ここは領主邸だったと言うわけだ。

通りでこの街では1番大きいわけである。


 我々というのはこの馬車に乗っているメンバーのことだろう。

騎士団長に筆頭魔導士代理、ヴィムにハナの4人である。

確かに、大人数でぞろぞろ行っても仕方がないだろう。


「分かりました」


 ヴィムは停車した馬車から降りた。

そして、ハナに手を貸して馬車から降ろす。


「行きましょうか」

「はい」


 カミル騎士団長に続くような形でヴィムたちは領主邸の玄関の前まで進む。

すると、玄関が開かれてメイド服姿の従者が現れた。


「お待ちしておりました。王宮騎士団と魔導士団の方々ですね。ご案内いたします」


 ヴィムたちは従者によって、応接間へと通された。

そこのソファーに座り、しばらく待っているとガッチリとした体格で茶髪の男性が姿を現した。

領主の中では比較的若い方なのでは無いだろうか。


「みなさんお待たせしてしまって申し訳ない」


 そう言うと、ヴィムたちの対面にあるソファーに腰を下ろした。


「私、ラーディアの街を統治しております、マルク・ラーディアと申します。この度はわざわざご足労いただき、ありがとうございます」


 マルクと名乗った男は軽く頭を下げた。


「とんでもございません。我々は明日から討伐の任務に入らせていただきます」


 カミル騎士団長が言った。

恐らく、明日1日は調査に使われるだろう。


「承知しました。お手数おかけしますが、よろしくお願いします」


 領主様なのに随分と腰が低い方だと感じる。


「あなたが、ヴィム・アーベルさんですね。Sランク冒険者の方まできて頂けるとは、安心ですね」

「恐縮です。私も全力でやらせていただきます」


 ヴィムの情報もあらかじめ伝えられていたらしい。

Sランク冒険者ともなると有名人なので、ある程度の特徴も出回っている。


「では、我々はこの辺りで失礼させていただきます」


 領主様とある程度の今後の話を済ませると、領主邸を後にした。

そして、今日泊まる宿へと向かう。


「明日は朝から調査に向かいます。調査は騎士団と魔導士団で行いますので、ヴィムさんたちは街に居てください」


 宿に向かう道中にカミル騎士団長が言った。


「分かりました。適当にこの街でも見て回っているとします」

「そうしてください。何かあれば連絡しますし、調査結果は明日の夕方にでも報告しますので」


 騎士団長とそんな話をしているうちに本日の宿に到着した。

それなりに大きな建物である。

今回、交通費等も王宮から出ているので、チェックインの手続きを済ませて部屋に向かう。


 ハナとヴィムは隣の部屋だった。

おそらく、気を使って隣にしてくれたのだろう。


「じゃあ、また明日。ゆっくり休んでくれ」

「分かりました。ありがとうございます。明日は何時集合にしますか?」

「そうだな。12時くらいにするか」


 あまり早くしてもお店もやっていないし、たまにはゆっくり寝ていたい。


「では、そのように」

「もし、俺が起きて来なかったら起こしてくれ」

「ヴィム様は朝が苦手ですものね」


 ハナは少し微笑みを浮かべながら言った。

こういうことが言い合える関係性なのである。


「まあな。じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」


 そういうと、それぞれ部屋に入った。

部屋はベッドと机と椅子が置かれている簡単な感じの部屋だったが、そんなもんだろう。

数日泊まるには十分な部屋である。


 ヴィムはローブを脱ぐとベッドに横になった。

そして、目を閉じるとやがて意識を手放した。


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