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第44話 討伐へ

 あれから一週間ほどが経過した。

今日が討伐に出発する当日だった。


 朝から討伐に同行するべく、屋敷を出る。


「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」


 ジェームズとアーリアに見送られる。


「ありがとう。度々、屋敷を開けてしまってすまんな」

「いえ、これが旦那様のお仕事ですので。屋敷のことは我々にお任せを。それが私どもの仕事です」

「助かるよ」


 有能な使用人がいるとこういう時に助かるものだとつくづく思う。


「行ってきます」

「行ってらっしゃいませ」


 アーリアやジェームズ、屋敷の使用人たちに見送られて王宮へと向かう。

今日は王宮が集合場所となっていた。


 騎士団の宿舎から王宮は近いのだ。

恐らく、ヴィムたちに気を使って屋敷から近い王宮を集合場所と選んだのだろう。


 ハナと共にヴィムは王宮へ歩みを進めた。


「お待たせしてしまいましたかね? すみません」


 ヴィムたちが王宮に到着すると、そこには既に騎士団の人と宮廷魔導士団が集まっていた。


「いえ、時間通りですのでお気になさらずに」


 カミル騎士団長は優しい微笑みを浮かべて言う。

ちょっと目にかかる程度の金髪に後ろは綺麗に刈り上げており、イケメンというのはこういう人の為にある言葉なのではないかと感じる。


「さて、これで全員揃いましたので、出発しましょう。ヴィム様たちは我々と同じ馬車でご案内致します」


 そう言うと、騎士団が用意した馬車に向かう。

ハナに手を貸して馬車に乗せると、ヴィムも乗り込んだ。


 その様子をカミル騎士団長がじっと見つめていた。


「あの、何か?」

「いえ、ヴィム様は紳士なお方なのだなと思いまして」

「これが普通ではないのですか?」

「まぁ、確かに貴族などの間では当たり前ですが、冒険者の方にはあまりお見受けしないので」


 カミル騎士団長は辺境伯の御子息だと聞いている。

元々、騎士団に入れるのはそれなりの身分のものが多いというのが一般的だ。


 しかし、レオリアは叩き上げの人も多い。

それが、実力主義国家というものである。


「何か、一度染み付いたら抜けないものですよ」

「確かに、それはありますね」


 カミル騎士団長とそんな話をして、馬車に乗っていると、もう1人の男性が現れた。


 一見すると女性と見間違えるほどの中性的な顔立ち。

ちょっと長めな茶髪で、色白。

ヴィムと同じようなローブを羽織っているが、その色は白を基調としたものだった。


「お初にお目にかかります。筆頭魔導士の代理で魔導士団を率います、アロンと申します」


 やはり魔導士だった。

まぁ、ローブを羽織っているのなんて魔導士や魔術師の類いが大半なのである。


「ヴィム・アーベルです。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願い致します」


 ヴィムはアロンさんと握手を交わした。

筆頭魔導士の代理となるとアロンも相当強いのだろう。


 騎士団長や筆頭魔導士は冒険者だとSランクに匹敵するほどの強さを持ち合わせている。

副騎士団長や筆頭魔導士代理だって、Aランクくらいにはなるだろう。


 ヴィムとも対等に渡り合えるかはわからないが、少なくともヴィムに近い所に居る人間なのである。


「では、出発します」


 カミル騎士団長の合図で馬車は並んで出発する。

騎士団の馬車なのでそれなりに快適だ。 


 騎士団、宮廷魔導士団、合わせて6台の馬車が並んで王都を出るのであった。

 

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