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第42話 騎士団長からの頼み

 王女様と、他愛もない世間話に花をさかせる。

王女ともなれば、宮廷にこもってばっかりである。

たまにはこうして、宮廷の人間ではない者と話したくもなるのだろう。


「ヴィムさん、無理はダメですからね。もし、ヴィムさんの身に何かあったら」


 エリン王女は目をうるうるとさせて言った。


「大丈夫だよ。こう見えても俺強いから」


 ヴィムは笑ってみせた。


「それは、知ってますけど」


 それに、ヴィムには不老不死という呪いじみた力が宿っている。

迷宮の守護をする精霊による力だということまでは分かっているが、それ以上の詳しいことはわからない。

とりあえずはヴィムはこの力によって死ぬことはない。


 しかし、これはある種の呪いなのである。

これを解除する方法があるなら解除したいと思っている。


「じゃあ、俺たちはこの辺で失礼するよ。暇だったらうちに遊びにきてもいいですよ」

「ぜひ、伺いますね! 引き止めてしまったみたいですみません」


 エリンは笑顔を見せて言った。


「いえ、大丈夫ですよ。陛下も、ありがとうございました」

「おう、気をつけてな。そういえば、騎士団の副団長がヴィムに話があるとか言ってたからもし会うことがあったら時間作ってやってくれ」

「分かりました。そうします」


 そう言うと、ヴィムは応接間を後にした。

王宮の中を歩いていると、後ろから声をかけられた。


「ヴィム様!」


 振り返るとそこには第3騎士団の副団長の姿があった。


「ああ、副団長さん。戻られていたんですね」

「はい。つい先ほど帰還いたしました」

「私に何かお話があるとか?」


 先ほど陛下も言っていた。

このタイミングで会えるのはタイミングが良かったと言えるだろう。


「実は、うちの団長がヴィム様とお話がしたいと申しておりまして、お時間を頂けないかと」

「いいですよ。今からで構いませんか? 彼女も同席させますが」


 ヴィムはハナの方に視線を移して言った。


「もちろん大丈夫です。ご案内いたします」


 副団長さんに案内されてヴィムは騎士団の宿舎があるほうへと向かう。

そこに騎士団長室というものがあった。


「団長、ヴィム様たちをお連れしました」


 副団長さんがノックして言った。


「入ってくれ」

「失礼します」


 ヴィムたちは部屋の中に入った。


「ご足労いただきありがとうございます。どうぞ座ってください」


 金髪を短く切りそろえられ、身なりのいい服装で顔立ちが整っている男は言った。

おそらく、こういうのがイケメンと言うのだろう。


 ヴィムたちはソファーに腰を下ろした。


「私、第3騎士を預かっております、カミルと申します」

「ヴィム・アーベルです。彼女はハナ、私の相棒です」

「存じております。早速で恐縮なのですが、ヴィム様に折り入ってお願いとご相談がありましてご足労いただきました」


 カミルと名乗った騎士団長は対面のソファーに腰を下ろして口にした。


「お願いですか?」

「はい、スライムという魔物はご存知でしょうか?」

「もちろんです」


 スライムとはこの世界に最も多くいる魔物である。

レベルが低いものであればなんでもないのだが、高レベルとなると相当厄介な魔物なのである。


「ご存知の通り、スライムには物理攻撃が通じません。我々騎士団にとっては非常に厄介な敵となります」


 騎士団は主に剣を磨いてきた人間の集まりである。

剣での物理攻撃はスライムには通用しない。


「私は氷の魔法を使うことができますが、騎士団の中には魔法を使えない者も多い。そこで、ヴィム様にお力をお貸し願えないかと。実は次に行く討伐にスライムが大量発生しているようなんです」

「それは構いませんが、宮廷魔導士団ではだめなんですか?」


 宮廷魔導士団はその名の通り宮廷に仕える魔導士たちのことだ。

騎士団とは違い、魔法に長けている人間が所属することのできる組織である。

宮廷魔導士団と騎士団は協力関係にあるはずである。


「もちろん、宮廷魔導士団にも応援要請をだしています。しかし、筆頭魔導士が現在別件のため不在となっております。討伐計画を出した時に戦力的に不安が残ると言う結果になりました。そこに、ヴィム様のお話を耳にしたのです。どうか、お力をお貸しください」


 カミル団長は頭を下げた。


「とりあえず、頭を上げて下さい。私でよければご協力致します」

「本当ですか! 助かります」

「はい、討伐計画が完成したら私の屋敷に届けていただけますか?」

「もちろんです! 届けさせて頂きます。よろしくお願い致します」


 カミルとヴィムは握手を交わした。


「では、それまでにこちらもある程度の準備をしておきますので」

「分かりました」


 騎士団の討伐に同行するとならば、話を通さないといけないところが少なからず存在する。

まずはギルド本部である。

ヴィムは宮廷に仕えている訳ではなく、冒険者なのである。

一応、ギルドマスターの許しがいるだろう。


 そして、国王陛下だ。

こっちはもう通っているようなものだが、一応話は通しておくべきだろう。


「では、私たちはこの辺で失礼します」

「はい。ご足労ありがとうございました」


 そう言うと、ヴィムとハナは騎士団の宿舎を後にするのであった。

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