第33話 地方ギルド
ディオン伯爵はお酒を煽りながら食事を進めていた。
少しずつだが、酔いも回ってきたらしい。
「本格的な討伐は明日からか?」
ディオン伯爵が尋ねてきた。
「はい、その予定になります」
今日はもう日が暮れて暗くなってきている。
明日、こっちのギルド支部に挨拶をして討伐任務に入りたいと考えていた。
「それじゃあ、今日はここに泊まっていくといい。どうせ部屋なら余っていることだしな」
「よろしいんですか?」
「ああ、たまには人が多い方が楽しそうだ」
ヴィムたちは適当に宿を決めてそこに泊まろうとしていた。
なので正直な所、この申し出は大変にありがたかった。
「では、お言葉に甘えさせて頂きます」
「そうかね。では、部屋を用意させよう」
ディオン伯爵は使用人の一人に声をかけた。
「ありがとうございます」
食事を終えると、ヴィムたちは部屋に案内された。
そこは、来客用と思われる綺麗な部屋だった。
ベッドには天蓋が付けられている。
ヴィムはそのままベッドに横になった。
目を閉じると、睡魔が襲ってくる。
やがて、意識を手放すのであった。
♢
翌朝、まだ空気が澄んだ朝の時間に目を覚ました。
部屋を出ると、階段を降りる。
すると、ハナの姿があった。
「おはよう」
「おはようございます!」
一緒にリビングへと行くと、ディオン伯爵もすでに起きていた。
「お二人ともおはよう。よく眠れたかい?」
伯爵は優しい声で言う。
「はい、おかげ様でちゃんと休めました」
「それは良かった。ワシみたいに歳を取ると朝は早く目が覚めてしまってなぁ」
自嘲するように笑みを浮かべると、紅茶の入ったマグカップに口をつけた。
「これからはギルドか?」
「そうですね。ここのギルド支部長にまずはご挨拶をと思いまして」
「ギルドは屋敷を左に真っ直ぐ行った所だよ。大きな建物だからすぐにわかるだろう」
伯爵はギルドの場所を説明してくれた。
「ありがとうございます。助かります」
ヴィムはここの街は初めてなので、場所を教えてくれるのはありがたかった。
「ああ、気をつけていってくるんだぞ」
「分かりました」
そう言うと、ヴィムとハナは伯爵邸を後にして、ギルドへと向かった。
伯爵に言われて通りに数分歩いていると、バーロンギルド支部に到着した。
そのまま、二人はギルドに入る。
中に入ると冒険者で溢れている。
流石に、王都のギルドよりは規模は小さい。
まあ、ギルドの雰囲気はどこの支部も変わらないのかもしれない。
ヴィムはギルドの総合窓口で1番空いているところに並ぶ。
「ここのギルド支部長に会いたいんだが」
懐からSランクのギルドカードをヴィムが受付で提示した。
ヴィムのギルドカードを見た受付嬢は目の色を変えた。
まあ、Sランクのギルドカードなんて早々お目にかかるものではないだろう。
「す、すぐに確認して参ります!」
受付嬢はそう言うと、その場を離席した。
そのまま数分待つと、さっきの受付嬢が戻ってきた。
「ギルマスがお会いになるとおっしゃっています。ご案内いたします」
受付嬢は『離席中』の札を置くと、ヴィムとハナを案内するためにカウンターから出た。
「こちらになります」
ギルドの奥にあるギルド支部長室へと通された。
支部長室に入ると、眼鏡をかけた比較的若い男性が立っていた。
「お待ちしておりました。この街のギルド支部長をしております、カミラと申します」
「ヴィムです」
「ハナと申します」
ヴィムたちはカミラと握手を交わした。
「とりあえず、座ってください」
「失礼します」
支部長に促されて、部屋の中央にあるソファーに腰を下ろす。
そして、カミラ支部長は眼鏡を中指で上げると、対面のソファーに座った。
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