第140話 vsハナ
メアリ、ギーグのペアとハナが模擬戦の会場で対峙する。
張り詰めた空気が、漂っている。
「それでは、始め!」
ミサの合図で模擬戦が開始される。
「行くぞ!」
ギーグが剣を構えて、ハナに向かった突っ込んでくる。
しかし、正面突破が通用するようなハナでは無い。
ハナは半歩移動するだけでその攻撃を躱す。
「まだだ!」
ギーグがそのまま、ハナの後ろに移動して頭上から剣を振り下ろした。
「動きは、悪く無いですね」
それでも、ハナは笑みを浮かべていた。
ギーグの腕を掴んで、剣の矛先を変えて受け流す。
「これで、終わりじゃないですよね?」
「終わってたまるかよ」
ギーグは少しハナと距離を取る。
しかし、その距離ではハナの射程圏内に入ってしまっている。
実践だったら、今の攻撃でギーグは倒れていたことだろう。
「ギーグさん、援護します」
後方で構えていたメアリが言った。
「わ、わかった。頼む!」
『風よ来たれ』
メアリは風魔法の適正があるらしい。
《エアーカッター》
しかし、詠唱が遅い。
ハナは詠唱が始まった瞬間に剣を抜いた。
そして、向かって来る風の刃にピクリともしない。
「はっ!」
ハナは剣でその魔法を全て弾いたのだ。
「嘘!?」
魔法のスピード全て見切った上で、それを正確に弾くという技量は相当な反射神経と剣技が必要とされる。
ギーグはメアリの魔法から一歩遅れてハナに突っ込んでくる。
魔法により、体勢が崩れているなら、その戦法も効果が出てくるが、この状況ではただの正面突破と変わらない。
ハナは剣で受けることなく、全ての攻撃を躱しきる。
「Aランクってマジかよ……これより強いのがSランクなのか」
まだ、会ったばかりで連携がうまく取れていないというのもあるが、これではいつまで経ってもハナに攻撃を当てることは出来ないだろう。
「終わりにしますか?」
ハナが尋ねる。
「まだ、まだやれます」
ギーグが肩で息をしている。
「わかりました」
その後も、魔法と剣術の連携でハナに攻撃をしてくる。
「最初よりは、良くなりましたね」
しかし、ハナはそれを剣で受けることなく、全て躱し切っている。
獣人の目の良さと反射神経、それについて行ける身体能力、全てがギーグとメアリを遥かに凌駕している。
「も、もうだめだ……」
ギーグは剣を杖のようにして、立っているのがやっとという感じである。
「私も、もう魔法は……」
メアリの方も明かに魔力が枯渇している。
もう、魔法を放つこと自体が厳しいだろう。
「そこまで」
ハナは最初の位置からほとんど移動していなかった。
「ヴィムさんは、あなたたちの自信を無くそうとしているのではありません。弱点と強みを明確にしたかったんです。安心してください。大体わかりましたから」
ハナはそう言って二人の肩に手を置いた。
「今ので、分かったんですか?」
「ええ、後程皆さんと一緒に説明します。ヴィムさんが回復魔法をかけてくれますので、一緒に行きましょう。それと、次の模擬戦もちゃんと見ていてくださいね」
人の戦っている所を見るのも勉強である。
吸収できるポイントは見て吸収するのも一つである。
そして、次はミサとの模擬戦が始まろうとしていた。
ミサの相手は、ララとレートのペアである。




