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第135話 ギルマスの依頼

 悪魔の祝着を解除して、二週間が経過した。

この二週間で色々あった。


 ギルド総括としての書類仕事は山積みになっていた。

一方で、王妃様の方は順調に回復して、今では公の場にも顔を出すようになっている。


 無事に回復してくれて、ヴィムは安心した。

なぜ、悪魔の祝着を受けてしまったのかは、いまだに判明していないが、その件の調査も今後進めて行くつもりである。


「旦那様、ギルド本部からお呼び出しがございました。近いうちに来てほしいとのことです」


 ジェームズがギルド本部から預かった伝言を伝えてくれる。


「分かった。行ってくるよ」

「ハナさんたちも連れて来てほしいそうです」

「了解」


 ヴィムはハナとミサ、ディアナを連れてギルド本部へと向かった。


 ギルドに入ると、ヴィムたち一向に視線が集まる。


「そういえば、モール大迷宮を踏破したことが公表されたのか」


 ヴィムたちのパーティが、難攻不落と言われていたモール大迷宮を踏破したことは、冒険者ギルド全体に伝わっている。

今、ヴィムのパーティは色んな意味で注目の的なのである。


「なんか、この視線も慣れてきたな」


 視線を向けられるだけで、誰も話しかけて来たりはしないので、そういう意味では楽なものである。

ヴィムたちは直接、ギルマスの執務室へと向かった。


 扉の前でノックする。


「ヴィム・アーベルです」

「入ってくれ」

「失礼します」


 ヴィムはギルマスの執務室へと入った。


「立場的にはヴィムの方が上なんだから、自由に入ってくれていいんだぞ」

「歳上の方には敬意を持たなければいけませんので、そうはいきませんよ」

「ヴィムらしいな。まあ、座ってくれな」

「失礼します」


 ヴィムたちは対面のソファーに腰を下ろした。


「それで、何か用事があったんですよね?」

「うむ、実はヴィムたちに頼みたいことがあってでな。これにつては知っているかな?」


 ギルマスは資料を机の上に置いた。


「新人冒険者講習、ですか?」


 ハナがヴィムの手元の資料を覗き込んで口にした。


「うん、この国には四年前からある新人冒険者の育成プログラムだね。これがどうかしたんですか? 僕らは新人じゃないですよ?」


 ヴィムはギルマスに視線を移す。


「君たちに頼みたいのはこっちだよ」


 ギルマスはもう一枚の資料を手渡した。


「新人冒険者講習講師のご案内、ですか」

「ああ、そうだ。新しく冒険者登録する者は一ヶ月で王都だけでも百人を超えている。講習を希望する者も少なくないんだが、講師の方が足りなくてな」

「確か、Bランク冒険者資格以上の冒険者が講師になれるんでしたっけ?」

「その通りだ」


 講習になるにも一定の実力が必要になる。

元々、母数が少ないのに、高ランクの冒険者となると、依頼があちこちから舞い込んでくるので、一箇所に留まってはいないことがほとんどだ。


「現在は、引退した高ランク冒険者まで講習の対象に幅を広げたんだが、人手不足には変わりない」

「これの講師を僕らでやれと?」

「さすが、察しがいいな。Sランク二人とAランク冒険者がいるパーティはヴィムの所だけだからな」


 実力としては申し分ないということだろう。


「これは、期間が一週間でしたよね?」

「ああ、そうだ」


 一週間の間に冒険者として活動していくための基礎知識、体力、戦術、戦闘技術などを学んでいく。

講師陣は実力者揃いなので、希望する講習生は後を絶えないという。


「やってくれるか?」

「そうですね。後輩を育てるのも二つ名持ちの務めですかね。二人は?」

「ヴィムさんが良ければ」

「私もです」

「我は、今回出番はなさそうだな」


 ディアナは精霊王なので、冒険者ではない。


「すまんな。講師になれるのは、冒険者資格を持つ者だけなんだ」


 ギルマスが柔和な笑みを浮かべて口にする。


「では、僕とミサとハナを講師として登録しておいてください」

「ああ、助かるよ。講習は一週間後からだからよろしく頼む」

「わかりました。では、僕たちはこれで失礼します」


 そう言うと、ヴィムたちはギルドを後にした。

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