第123話 迷宮二階層
二階層に入ると、そこはかなり荒れている。
真っ暗なのでディアナの精霊術により、明かりを確保するが、それでも少し不気味に感じる。
マナの濃度も先ほどより上がっている。
死者の姿を映す水晶に、どんな状態異常も治してしまう聖水がある迷宮の洗礼なのだろか。
「止まってくれ!」
ヴィムがハナとミサに向かって声を上げる。
「どうしましたか?」
「トラップだ」
ヴィムの《トレース》に設置型のトラップが仕掛けられているのが見えた。
この上を踏んだら、あらかじめ設置されていた魔法が発動するという寸法である。
《雷帝よ》
光の魔法により、トラップを相殺した。
「これで問題無い」
「さすがです!」
こういったトラップは今後も出て来ることだろう。
並の冒険者では見逃してしまう。
それほど巧妙に仕掛けられていた。
ヴィムが解除したトラップの上を進み、次の階層へと進んでいく。
すると、ヴィムたちの後方にいきなり気配を感じた。
「おいおい、そんなのありかよ」
それは、まさにモンスターが湧く所だった。
アンデットが八体である。
「さっきはハナたちに任せきりだったからな。ここは俺が相手をしてやろうじゃないか」
ヴィムは僅かに口角を上げた。
「炎の精霊に願い奉る」《炎雷》
炎と稲妻が混じった矢が無数に展開されていく。
その展開にかかった時間はわずか3秒。
「吹っ飛べ」
そう言うと、炎と稲妻の混じった矢はアンデットに降り注ぐ。
そんな魔法を防ぐ術を持っていないアンデットは、矢を直撃するほか無かった。
魔法が消えると、そこには黒焦げになったアンデットの亡骸が転がっている。
「終わりだな」
ヴィムはローブに付いた砂埃を払いながら口にした。
「さすがだな、マスター」
「まるで、出番がありませんでした!」
「まだ、二人には負けられないなって、思ってね」
「我でも、マスターには勝てる気がしないよ」
精霊王のディアナですら、そう言って肩をすくめた。
「探索を続けるぞ」
ヴィムたちは再び歩き始める。
そこから、トラップを何個か解除しながら進んでいく。
「見つけた」
数十分ほど歩いていると、次の階層に進む階段を発見した。
「また、トラップか」
階段にも設置型の魔法トラップが仕掛けられていた。
《雷帝よ》
ヴィムは魔法によって、そのトラップを破壊した。
「これで、問題ないぞ」
ヴィムの《トレース》の前ではトラップなどは、何の意味も成さない。
「全然、トラップがあるのがわかりませんでした」
ハナが感心した様子で言った。
「まあ、普通に見たらそうだよね。俺もトレースが無かったら分からないものばかりだよ」
ヴィムの場合、トレースを使わなくても、直感的にわかることが多い。
しかし、この迷宮のトラップは巧妙に仕掛けられている。
魔力検知がしづらい構造になっているのだろう。
ヴィムの気配探知や索敵魔法にはトラップは表示されていなかった。
トレースの魔法があって助かったといえる。
「じゃあ、次の階層ですね」
ハナとミサを先頭に次の階層へと降りるのであった。




