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第115話 復讐者に憐れみを①

 ヴィムは組織のボスの女と対峙する。


「ヴィムさんは彼女と戦ったことがあるのですか?」


 隣に立っているハナが小声で尋ねて来る。


「ああ、三年前に一度だけ。あれは、戦ったというよりはただ見かけたというレベルだがな」


 ヴィムは三年前に一度だけ、彼女を見かけたことがある。

その時は、組織の下っ端の妨害があり、彼女に近づくことすらできなかった。


「今度こそ、逃しはしないからな」


 ヴィムの目に怒りの灯火が灯る。


《縮地》


 一瞬にしてヴィムは、女との間合いを詰める。

顔面に向かって、拳を叩き込んだ。


「最悪、一本は取れると思ったんだがな」


 ボスの女は鉄の剣でヴィムの拳を受け止めた。


「さすが、深淵の魔術師。その実力は魔術だけじゃないようですね」

「まあな」


 そんな中、騒ぎを聞きつけた組織の連中が続々と出て来た。

やはり、ここが組織のアジトとみて間違いないようである。


「マスター、雑魚は任せろ」

「そっちは私たちが!」


 ミサとディアナが出て来た組織の下っ端連中を相手にしてくれる。


「任せた」


 そう言って、ヴィムは再び女との間合いを保つ。

ハナが静かに剣を抜く。


「一緒にやるぞ。俺は左から行く」

「では、私は右から」


 ハナが猛スピードで女の右側を取る。

素早く剣を振るうが、その攻撃も彼女は剣で受けることなく躱す。


《雷帝よ》


 稲妻がまとった槍が、6本彼女に降り注ぐ。

かなりスピードを上げたが、剣に魔法を付与したもので魔法を捌く。


「まだまだ」


《炎帝よ》


 炎の矢がさらにスピードを上げて降り注ぐ。

必死に剣で捌こうとす。


 しかし、最後の一本がついに捌ききれず、左脇に直撃した。


「ぐわっ……」


 それなりのダメージを負ったボスはよろめきながらもその場に立っていた。


「まさか、俺の魔法をまともに食らって立っていられるとはな……」


 スピードに重きを置いたが、威力だって並以上にはあるはずだ。


「今まで色んな修羅場を経験して来たからな……」

「そうか」


 それでも、今のボスの女には完全に隙が生まれている。

これを見逃す、ヴィムでもハナでもない。


《縮地》


 ヴィムは一瞬で間合いを詰める。

ハナもまた、急激にスピードを付けて、ボスの女に突っ込む。


《魔弾》


 魔力エネルギーを拳に付与したものを女の鳩尾に叩き込んだ。


 そして、ハナの拳も女の顔面に直撃していた。

縮地を使ったヴィムのスピードについて来れるとは、流石である。


 隙が生まれたボスはヴィムたちの攻撃を躱すことができなかったのである。

攻撃を喰らったボスは、その場に倒れ込んだ。


 どうやら気絶しているらしい。


 後ろを見るとディアナとミサが組織の連中をボコボコにしている所だった。

所詮、下っ端は二人の相手にもならないようであった。

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