表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/149

第113話 ヴィムの背負う過去

 ハナたちに事情を話すと、すぐに動き出すということで話が纏まった。

準備にかける時間は三日ほどだった。


 早朝、まだ辺りは薄暗い時間からヴィムは漆黒をローブに身を包み、窓の外を眺めていた。

このローブは師匠から貰ったものだ。

だから、これを着る時は特別な時だ。


「見ててください、師匠」


 誰もいない部屋で、ヴィムは胸に手を置いて口にした。

その声に返答はない。ただ、宙を舞うだけだった。


 やがて、朝になり、外も明るくなって来た。

ヴィムはリビングへと降りた。

そこでしばらく待っていると、ハナとミサ、ディアナがやって来た。


「準備はできているか?」

「はい」

「じゃあ、行くか」

「待ってください!」


 そう言って、ハナが俺の前に立つ。

そして、ハナのことを優しく抱きしめた。


「ヴィムさんは人のことばかり守ろうとします。なんでも一人で抱え込もうとします。頼りないかもしれないけど、もっと頼ってほしいです! もう、一人でなんでも抱えなくていいんです」


 そう言うと、ハナはさらにキツく抱き締める。


「そうですよヴィムさん。あなたは無理しすぎる所がありますよ」

「マスターが背負っているものが分かるとは言わない。ただ、たまには降ろす時があってもいいんじゃないか」


 ミサとディアナがハナの様子を眺めながら言った。


「すまん、皆んな。心配かけたよな。皆んなには話ておくよ」


 ヴィムはソファーへ座り直す。

ハナはヴィムの隣りに座り、対面にはミサとディアナが座る。


「あれは、まだ俺が魔術の世界に入る前の話だ」


 ヴィムにはアーナという幼馴染がいた。

五歳の時からずっと一緒に遊んでいた。


 しかし、そんな楽しい日々も長くは続かなかった。

ヴィムが九歳になる頃にアーナは姿を消した。


 組織に攫われたのだ。

そして、殺された……


 当時の組織は今ほど大きくなく、統率も取れていなかった。

下っ端の連中が暴行し、アーナは息絶えた。


 再びアーナの顔を見たのは、変わり果てた姿だった。

悲しかった、悔しかった。そして、後悔した。


 もっと、力があったら。

アーナを守れるほどの強さがあったら。


 その一年後、ヴィムは異端の賢者と呼ばれる魔術師の弟子となった。

そこから、魔法の修行を重ねて今に至る。

『深淵の魔術師』と呼ばれる最強の魔術師に。


「やっと、チャンスが巡って来たんだ。アーナを殺したあの女、ぶっ飛ばさないと死ねないよ」


 屋敷のリビングには重たい空気が流れる。


「ヴィムさんにそんな過去があったんですね」

「酷い話です」


 ハナとミサは暗い表情を浮かべる。


「マスターの強さはそのアーナという少女がいるからなんだな」


 ディアナはあえて進行形で口にする。

ヴィムの中では、彼女はずっと生きていて今でもヴィムの力になっているはずだ。


「なんか、暗くしてごめん。そういう訳で、ちょっと因縁があるんだ」

「いえ、話てくれてありがとうございます」


 ハナはヴィムの手にそっと手を添えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ