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第111話 情報戦①

 獣人の街へと出向いた、翌日にヴィムは王宮へと出向くことにした。

王宮の諜報機関である情報調査室なら、何か情報を掴んでるのでは無いかと思ったからである。


 ギルドの諜報部と王宮の諜報部門は完全に別のものである。

その為、ギルドの掴んでいる情報と王宮が掴んでいる情報が違うというのは、割とあることである。


 元々、王宮の情報調査室は極秘情報を扱っている部署なので、他の諜報機関と情報を共有することが少ないのだ。


「お疲れ様です!」


 王宮の門番を務める騎士が、ヴィムの顔を見ると勢いよく敬礼する。

毎度の事だが、顔パスで王宮を出入りする事ができてしまっている。


「ヴィム様、今日はどのようなご用件でしょうか?」

「陛下と少し話がしたいんだが、大丈夫かな?」

「かしこまりました。ヴィム様なら大丈夫でございます」


 王宮執事が粛々と一礼する。


「では、こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」


 王宮執事によってヴィムは応接間に通される。


「しばらくお待ちください」

 

 再び粛々と一礼し、執事はその場を離れた。

しばらく待っていると、応接間の扉が開く。


「お待たせしたな」

「いえ、こちらこそ急に押しかけてすみません」

「いや、構わんよ。そろそろ訪ねてくる頃だと思っていたからな」


 そう言って陛下はニヤッとした笑みを浮かべる。


「というと?」

「お前さんが最近、色々と探っているのは分かっていたからな」

「さすが、耳が早いですね」

「いくら屋敷の庭でも黒竜を召喚したのは失敗だったな」

「そんなことも知っているんですか?」


 確かに、黒竜は目立つ。

空を飛んでいる時は、光魔法で姿を見えなくしていたが、迂闊だった。

屋敷の庭なら大丈夫だろうと、姿を見えなくする魔法はかけていなかった。


「それで、例の国際指名手配されている人身売買組織について調べているんだな?」

「よくご存じで。その通りです」

「ちょうど良かったかもしれないな」


 陛下は重々しく口を開いた。


「ちょうど良かったと言うと?」

「これは、ヴィムだから言うがな。うちの情報調査室が新たに情報を掴んだんだよ」


 机の上に陛下が何枚か資料を並べて行く。


「グリフィント皇国との国境の街に例の人身売買のアジトがあるようなんだ」

「これは、確かな情報ですか?」

「正直、まだ半信半疑といった所だな。だが、信憑性は十分にあると思うぞ」


 資料にはグリフィントとレオリアの廃村に人身売買組織の痕跡が残っていると書かれている。

確かに、ここなら隠れ家にするには持って来いの場所であろう。


「この調査をヴィムに頼もうかと思っていたからな。どうせお前のことだ。こっちから頼まなくても動くつもりだったんだろう?」


 陛下も、ギルマスと同じく、全てが見えているような目を向けてくる。


「ええ、まあ」

「詳しくは聞かないが、お前さんと何か因縁があるんだろ?」

「分かってしまいますか……」

「そうだな。今日のヴィムはいつもと目が違う」

「目ですか」


 初めて言われた。

陛下はヴィムの目をしっかりと見て言う。


「お前さんは、いつも誰かのために本気になる男だ。今回の件もハナさん辺りのために動き始めたんだろうよ。でも、それだけじゃない。違うか?」

「さすがですね。でも、今は何も言えません。時が来たら話します」

「それでいい。さすが異端の賢者と呼ばれた男の弟子だな」

「そんなことも知ってるんですね」

「まあ、ヴィムのことは色々調べさせてもらっているからな」


 Sランク冒険者に認定する時には調査が入るので、その時にでも調べたのだろう。


「この組織のボスは、生きて捕らえた方がいいですか?」


 ドスの効いた声でヴィムは尋ねる。


「そんな平和的に解決できる相手では無いだろうな。そこは任せる」

「分かりました」


 この時、レオリア国王は恐怖の正体がわかった。

ヴィムはこの組織を壊滅させるつもりなのだと。

しかも、その手段はおそらく問わないだろう。

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